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2008年版:これが成功するITエンジニア像だ!

ここ数年、空前の売り手市場が続くIT業界。転職コンサルタントは口をそろえて、「転職でキャリアアップを図るのならば、今がチャンス」という。この追い風に乗って、2008年さらなる飛躍を遂げるには、どのような技術/スキルが求められるのか。2007年の技術動向や転職状況を総括し、2008年に羽ばたくITエンジニア像を追う。

ITエンジニアのキャリアアップに空前の追い風

 ここ数年間、ITエンジニアのキャリア/ステップアップには追い風の状況が続いている。というのも、IT業界は2006年から引き続き、「空前の人材不足」に頭を悩ませているからだ。

 社団法人情報サービス産業協会編集の『情報サービス産業白書2007』によると、産業全体の売上高は、2005年4〜6月期以降、6四半期連続で増加傾向が続いており、かつ2006年4月時点の1社当たりの新卒採用は、前年比10.3%増、中途採用については20.2%と大きく増加している。その一方で、情報工学系の専攻者が減少傾向にあることなどから、ここ1〜2年新卒採用に苦戦するケースも見られ、その分即戦力となる中途採用への期待も高まっているそうだ。

 マイコミエージェント ITチーム キャリアコンサルタントの長谷川美希氏は「まず、全般的に景気が上向いて、企業の設備投資が活発になっていること。特に、再編が一段落した金融業界、通信業界などは、次なるシステム戦略を考える時期に来ており、引き続き巨額のIT投資を行うと考えられます。そのため、2008年は、今年よりもさらに求人数が増えるでしょう。転職でステップアップを目指すのであれば、まさにいまがチャンスです」と語る。

2008年、次なる技術トレンドは?

テックバイザージェイピー
代表取締役 栗原潔氏

 では、具体的にはどのような技術力や人物像が求められているのか。まずは、IT業界そのもので起こっている動きや、技術トレンドを見ていこう。

 ITコンサルタントかつソフトウェア関連の弁理士など、幅広い分野で活躍し、技術トレンドに詳しいテックバイザージェイピー 代表取締役の栗原潔氏は、「2008年に“来る”分野としては、3つ考えられます」という。その3つとは、以下のものだ。

(1)Enterprise 2.0

 「今年は『SNSやブログを、企業にどう取り入れていくか』という風潮が本格化しました。この動きが2008年に加速されるのではないでしょうか」(栗原氏)と見ている。個人利用で広まった技術やツールが、企業内で活用されるケースが増えつつある。そのため、2008年は「ブログやSNS、RSS、ソーシャル・ブックマークなどのWeb 2.0系のツールを使ったエンタープライズ・ソリューション」を提供できる能力が求められるようになるだろうという。

 現在のところ、Enterprise 2.0については、ベンダよりもむしろユーザー企業の方が熱い。こうしたユーザーニーズに、IT業界がどのように対応していくかが注目される。

(2)「グリーンIT」によるサーバ統合・仮想化ソリューション

 グリーンITは、調査会社米ガートナーが「2008年の注目技術トレンド第1位」に挙げている(関連記事)。国内でも経済産業省が音頭を取って、12月7日に「第1回グリーンITイニシアティブ会議」が開催されたり、2008年度予算で「グリーンIT革新プロジェクト」を立ち上げるなど、活発化する様相を見せている。

 この流れの中で注目されているのが、サーバ統合・仮想化だ。現に、大規模データセンターでは、増え続けるサーバマシンの台数に比例して、消費電力やマシンが発する熱量、空調による電力消費が大きくなり、新たな課題となっている。

 こうした状況を回避し、マシンの稼働率を向上させることで、電力効率を高め、グリーンITに貢献するための仮想化技術が注目される。企業のデータセンターは、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)の一環として環境対策に取り組むことが望まれており、この状況は今後さらに拍車がかかると予想される。

 もちろん、仮想化技術に詳しいITエンジニアがいるからといって、すぐサーバの集約・統合が行えるわけではない。全体最適の観点に立ってインフラを再設計するスキルや、プロジェクト面での調整能力も必要になる。

(3)SaaSの普及が加速

 SaaS(Software as a Service)は現在、ASP(Application Service Provider)と呼ばれていたころにあった「カスタマイズしにくい」というデメリットを取り去り、ほかのSaaSサービスや既存システムとの連携など、さまざまな付加価値を提供している。また、SaaS企業の先進企業であるセールスフォースドットコムは、同社のサービスと企業内の既存システムを統合するユニークなサービスを開始するなど、インターネットを通じたサービスに基づくビジネスが活発化している。

 そして既存のアプリケーションベンダなどもSaaSサービスを開始するなど、SaaSは、ユーザー/ベンダ双方から注目されている。「実際、ユーザー企業自身も、自社のアプリケーション資産をネットワークサービスとして提供してもいいんです。SaaSを使う、そして自らがSaaSになるという傾向は今後も伸びるでしょうし、そのような領域を支援するITエンジニアが増えると考えられます」(栗原氏)

 では、SaaSの加速がITエンジニアに求めるスキルとは何か。栗原氏は「アプリケーションをサービスとして外部に提供する場合、問題となるのはサービス・レベル管理です。一般の開発者に求められるスキルを『ものづくり』とすれば、SaaSにかかわるITエンジニアにはもう1つ『ものうごかし』(=システムを作り、トラブルなく動かし続ける品質を保証すること)という能力も求められると思います。開発面だけでなく、運用面を踏まえた総合的な技術力が必要になるのではないでしょうか」(栗原氏)。

 また、「データ品質」という分野にも栗原氏は注目する。いくら機能的に素晴らしいシステムでも、蓄積されるデータの品質が悪ければ、システム本来の役目は果たせない。「何のために、どんなデータを利用するか」「そのためには、どのようなデータ構造を持つべきか」「そのデータの品質をどのように保証するか」という観点は、ITエンジニアであれば必ず備えておくべきだ。

 栗原氏は「残念なことに国内では、データ品質について専門書も少なく、分野として確立されていない現状です。しかし、データ品質は、システムそのものの品質や効果に深くかかわるため、決して見過ごすことはできない分野。今後、ITエンジニアのコアスキルとして、重要性を増すと思われます」と語る。

2008年の狙い目業界は

 次に、転職市場に目を転じてみよう。まずいえることは、栗原氏の語る技術トレンドにあったように、いかに売り手市場とはいっても、「この技術だけを知っていればいい」というほど単純ではないということだ。

 Web 2.0系の技術、インフラ系の技術、新しいサービスの動向を押さえ、かつ開発/設計スキルや運用スキル、そしてビジネススキルなどを持つ「総合的に優れた人材」が求められる傾向は、ますます強くなりそうだ。

マイコミエージェント ITチーム
キャリアコンサルタント
長谷川美希氏

 前出の長谷川氏によると、「開発技術でいえば、Javaや.NETなどオープン系の開発者は、依然として高いニーズがあります」という。「そのほか、転職市場の技術トレンドとしては、2007年後半から、Microsoft SQL ServerやSharePoint Serverといったマイクロソフト技術を有する人材の求人が増えています。新製品のリリースなども続くため、2008年はさらに求人が増えるのではないでしょうか」と長谷川氏。

 また基幹システムの開発案件が増え、パッケージ開発経験者の求人も増加している。最近は、ユーザー企業側も、スクラッチ開発よりパッケージ活用を求める傾向にあり、システムインテグレータ(SIer)は「パッケージをベースにした業務コンサルタントやITアーキテクト」を、そしてパッケージベンダ側は「増え続ける案件を支援する技術コンサルタント」を求める状況にあるという。

 一方、通信業界も、冒頭で説明したように、新システムによるサービス開発が活発化しており、求人数も増加している。VoIPなど、通信技術とアプリケーション技術を融合したソリューションが増えているため、アプリケーションエンジニア/ネットワークエンジニアともに不足している状況だ。

 「ネットワークエンジニアであれば、技術力が第一なので、中小規模のベンダからでも、プライマリ(元請け)企業に転職しやすい傾向があります。その際、大規模ネットワーク構築に造詣が深いことを示すため、シスコの認定資格などを取得していると、選択肢も広がります。通信業界は、アプリケーションエンジニア/ネットワークエンジニアともに、狙い目です」(長谷川氏)

募集職種で最も多いのは「ITアーキテクト」

 続けて長谷川氏は、2007年の転職市場で求人職種として増加傾向が顕著だったのは、「ITアーキテクト」だと語る。さらに「2007年の転職業界の技術キーワードに、SOA(Service Oriented Architecture)が挙げられます。オープン系ミドルウェアの技術知識や経験のほか、全体設計ができるITエンジニアを求める企業はとても多い。ですが、実際に応募する方とのスキルギャップが存在し、なかなかまとまらなかったケースが多いのも特徴です」と長谷川氏は語る(図1)。

図1 2008年の技術動向と、各職種で持つべき技術スキル

 『情報サービス産業白書2007』でも、「ITアーキテクトを必要とする企業は約7割にも上るのに対し、不足感は最も高い」としている。ITアーキテクトを目指すITエンジニアは多く、実際に求人も多いのに、なかなかまとまらないのはなぜだろうか。長谷川氏は、「転職希望者の『やりたいこと』と、企業側が求める『できること』との間にギャップがあるためです」と説明する。

 スキルギャップとして挙げられるのは、まず「コンサルティング能力/経験の有無」、次に「技術スキルの高さ」だという。このITアーキテクト不足は、「2008年にはさらに強まる」と長谷川氏は見ている。一方で、ITエンジニアは、より上流工程の仕事を望む傾向にある。ITアーキテクトは、より上流を目指すITエンジニアのキャリアパスとして狙い目であり、いまがキャリア/ステップアップ転職最大のチャンスにあることは間違いない。では、このスキルギャップを埋めるにはどうすればいいか。

スキルギャップを埋め、ステップアップを果たせ

 長谷川氏は、「第二新卒より年齢や経験年数を経ると、企業は顧客折衝能力の高さを期待します。ですので、とにかく現在の職場で、自ら顧客に積極的に提案する役割を志願するなどして、顧客折衝の実績を作ることが重要です」とアドバイスする。規模の大小を問わず、まずはできることから始め、経験や実績をアピールするという方法だ。

 またITアーキテクトとして求められる技術力については、「ITアーキテクトの強みは、やはり技術力。主要ミドルウェアやオープン系の技術知識を持っていることはもちろん、『ミドルウェアによってシステムの脆弱性やアーキテクチャがどう変わるか』といったことを説明できる能力が必要だと思います。そして大切なのは、そのアーキテクトを、検証・実証できること。検証・実証するスキルが、鍵を握っていると思います」(長谷川氏)とコメント。

 さらに突っ込んで、ITアーキテクト全体最適を見越した設計力は、どうすれば身に付くのだろうか。この点に関して、栗原氏は次のように答える。

 「全体最適というニーズが顕著になってきてから、まだ日はたっていません。つまり、この分野で豊富な経験や即戦力を求めることが、そもそもミスマッチなのだと思います。そのITエンジニアの技術力やビジネススキルを見て、潜在能力を評価し、採用するのが現実解。そして、ITエンジニア自身が、自分の持っている技術知識を駆使し、実際にアーキテクチャ設計をやっていく。そんな積極性が必要だと思います」(栗原氏)とのことで、まずは現場に飛び込むことが重要とのこと。求められる技術経験やスキルギャップに悩む前に、まずは足元を固め、アピールポイントを作ってから“売り込む”姿勢が、明暗を分ける。

大規模で通用する技術力はこうして身に付けよう

 さらに栗原氏は、中小規模の企業に勤務するITエンジニアに対し、キャリア/ステップアップの方策として、次のようなアドバイスを行う。

 「たとえ小さなプロジェクトで、一部分しか担当していないとしても、総合的な技術スキルやビジネススキル、マネジメント能力を鍛えることはできます。例えば、自分の担当分野が、全体の中でどういう位置付けにあるかを常に意識し、大局的に見ることができれば、必然的にシステム全体の構造やアーキテクチャに詳しくなるはず。また、いろいろな技術やトレンドに興味を持ち、面白いと思ったものを、どんどん使ってみることも必要。昨今のインターネットは、技術を学んだり、技術で遊んだりする環境として、大いに利用できます。前述のとおり、まずネットの世界、消費者の世界で普及したテクノロジが企業で活用されるケースも増えています。この環境を積極活用し、スキルを高める方法もあるのではないでしょうか」と栗原氏。

 そのポイントは、「興味を持って、楽しむこと」にあるという。新しい技術やサービスは楽しい。それを使ってみて、知る知識やスキルがある。それが、自分の実力として蓄積される。

 いずれにせよ、来年はITエンジニアにとって、キャリアの飛躍を図る最大のチャンス。求められる技術者像を理解し、勉強や転職に素早く動くことが、勝負を決めるといえそうだ。


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掲載内容有効期限:2008年1月31日




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第2回:2008年版:これが成功するITエンジニア像だ!〜マイナビ転職編〜
第3回:ITを武器にコンサルタントになる!
第4回:次世代DBエンジニアに必要なスキルはこれだ!
第5回:組込みエンジニアへの華麗なる転身を図る!
第6回:価値ある上流エンジニアを目指せ!
第7回:時代に取り残されないERPエンジニアになるには?
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