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組み込みエンジニアへの華麗なる転身を図る

組み込みソフトウェア産業が好調だ。そしてITエンジニアから組み込みエンジニアへ転身する人が増えている。どうせキャリアチェンジをするのならば、組み込みエンジニアとして、業界全体をけん引するスキルや技術を持って転身したいもの。その方法とは?

増える組み込みエンジニア、開発費の上昇も進む

社団法人組込みシステム技術協会
ETEC運営事務局 近森満氏

 経済産業省が昨年(2007年)6月に発表した「2007年度版組込みソフトウェア産業実態調査報告書」(リンク先の報告書はPDF)に興味深いデータがある。2006年に組み込みソフトウェア技術者(以下、本記事では「組み込みエンジニアとする)は約19万3000人いたが、9万5000人の労働力が不足していた。そして2007年には組み込みエンジニアが約23万5000人と4万3000人増えたにもかかわらず、依然として9万9000人が不足しているのだ。

 技術者の数は増加しているのに労働力不足が深刻になっているのはなぜか。社団法人組込みシステム技術協会 ETEC運営事務局 近森満氏は次のように語る。

 「まず、組み込みソフトウェアの適用範囲が広がり、携帯電話からカーナビゲーション、家電製品に至るまで、さまざまな分野で組み込みソフトウェアの需要が高まっていることが挙げられます。次に、これらの製品は、製品リードタイムが短く、例えば携帯電話などは半年で新しい機種が登場します。こうした製品サイクルに合わせ、新しいソフトウェアを開発しなければならない。市場の広がりと製品サイクルの短期化が、組み込みソフトウェアの需要を後押ししているのでしょう」(近森氏)

 さらに興味深いのが、前出の資料によると、組み込みエンジニアの数だけでなく、開発費も一般の情報サービスと比べ、右肩上がりに伸びている点だ。一般の情報サービス産業に属するITエンジニアが、組み込みエンジニアへと次々に転身を図るのも、こうした状況を見るとうなずける。自分がこれまで仕事で培ってきた技術知識やスキルを生かせそうなのも魅力の1つだ。

 だが、同じソフトウェア開発とはいえ、ITエンジニアから組み込みエンジニアへ転身を図るのは、容易なのだろうか。組み込みエンジニアとして活躍するには、何が必要なのだろうか。

ITエンジニアが組み込みへ行く3つの理由

 近森氏は、ITエンジニアが組み込みエンジニアを目指す理由として、次の3つを挙げる。

(1)目に見えて、多くの人が利用する「製品」や「モノづくり」に携わりたい
(2)組み込みエンジニアの方が、技術に長く携われる
(3)達成感が得られる

 企業システムのように、目に見えないソフトウェアや開発スキルを提供するより、世の中でいろいろな人が使っている「モノ」づくりに関わりたい。1つの製品が完成すると、目に見えるモノとして提供されるだけに、達成感もひとしおだ。そして意外なことに、一般のIT企業にいるより、製造業の中では“技術者”の立場が確立されているため、1つの技術を極めたいのであれば、モノづくり現場で技術者になった方がキャリアを積みやすい。――「製造業は、開発が命ですから、技術や知識を蓄積し、プロフェッショナルを育てる文化が根付いています。そうした点に対する憧れもあるのかもしれません」と近森氏は分析する。

組み込みエンジニアになり初めて分かる3つのギャップ

豆蔵 執行役員 ES事業部長
上級コンサルタント 福富三雄氏

 達成感が得られ、モノづくりの楽しさを味わえ、スキル・キャリアも蓄積しやすい組み込み業界。だが、「ソフトウェアの開発知識は確かに共通して使える部分もありますが、IT業界とまったく異なるスキルや知識が要求されるのも事実です」と警鐘を鳴らすのは、組み込みソフトウェア企業を対象に、開発プロセス/技術のコンサルティングサービスを行う豆蔵 執行役員 ES事業部長で上級コンサルタントの福富三雄氏だ。その大きな違いとは、「QCD(品質・コスト・納期)」「ハードウェア知識の有無」「開発手法そのものの違い」の3つだ。

 「QCDに関する考え方は、大きく変えないといけません。組み込みソフトウェアの適用範囲は幅広く、家庭の主婦や子どもが扱う製品にも組み込まれています。そのため、誰がどんな使い方をしても、エラーを起こしたり、不具合が発生したりすることがないような、高い品質が求められます。少しでも品質が落ちると、それこそ回収問題でニュースになったり、赤字を出して事業自体が立ち行かなくなったりするリスクもある。それに一般消費財の場合、製品を投入するタイミングいかんで売上額も大きく変わるので、納期は厳守です」と語るのは、同じく豆蔵 ES事業部 主幹コンサルタントの井上樹氏だ。

豆蔵 ES事業部 主幹コンサルタント
井上樹氏

 次のハードウェア知識の有無だが、「最近は、少なくとも周辺機器の規格(USBやネットワークを使った接続のためのプロトコル)は標準化が進んでおり、ソフトウェアプラットフォームを標準化する活動もさまざまな業界で行われている」(井上氏)とはいうものの、「組み込みソフトウェアの場合、やはり稼働するハードウェアの要件によって、制約があるのは事実。それに開発プロジェクトでは、ハードウェア技術者とコミュニケーションを取る機会も多いため、ハードウェアのことがまったく分からないのでは、話になりません」(近森氏)という。さらに井上氏は「ハードウェアの知識があった方が、テストで何か不具合があった場合、原因を特定しやすいという利点もあります。IT業界から組み込みエンジニアへ転職した場合、まずぶつかるのがここだと思います。マイコンや回路の知識がないと苦労するでしょう」と指摘する。

 最後の「開発手法やプロセスが異なる」という点についてはどうか。

 「組み込みソフトウェアの場合、開発手法やテストツール、プロジェクトマネジメントの方法論などが、IT業界と比べてまだしっかり確立できていないところがあります。というのは、ITのように、ユーザーと直接折衝をして、要件を洗い出すのではなく、マーケティング部門や営業部門が分析したニーズ、製品開発者の意向などを反映し、要件そのものを開発しないといけないからです。当然、要件分析手法も異なりますし、それによって抽出した要件モデルも、すんなりとソフトウェアの詳細設計に落ちるわけではありません。業務システムの場合、中心となるのはデータベースですが、組み込みの場合まず状態遷移をきちんとモデリングする必要があります。ITエンジニアから見ると、次々と状態遷移のモデルが出てくることにびっくりすると思います」(井上氏)

ITエンジニアの知識・スキルが生きる分野とは?

 こうした数々のハンデはあるが、ITエンジニアだからこそ、組み込みで生かせる分野もある。第1に、セキュリティに関する技術知識やスキルが挙げられる。セキュリティ対策は、ハードウェア的な対策も必要になるが、やはりソフトウェア観点からの対策も同じくらいに重要となるからだ。

 第2に、ネットワークに関する技術知識やスキルも非常に役に立つ。テレビなどの家電製品がネットワーク化されている現在、ネットワーク技術はもちろん、セキュリティ面の対策も講じることで、一層品質の高い製品が出来上がる。

 第3に、近森氏、福富氏ともに強調するのが、ソフトウェアエンジニアリングやプロジェクトマネジメントの経験・スキルだ。「やはり製造業のモノづくり現場は、多少泥臭いところがありますし、ソフトウェアエンジニアリングはまだこれから洗練させていかなければならない状態です」(近森氏)という状況や、「製品そのものの検証はしても、ソフトウェア部分のテストなどでは、テスト環境やツールの登場がまだ遅れているという実態があります」(井上氏)という背景もあり、ITプロジェクトで培ったノウハウが存分に生かせる分野だという。

 こうした強みを持ちつつ、前述したような足りない知識を補うにはどうすればよいのだろうか。

 近森氏は、「入門書なども多数出ていますし、まずは本を読んで得られる知識を得ることから始めるのがいいでしょう。そのうえで、その知識のレベルを確かめることができれば、自信にもつながります。また当協会が実施している組込みソフトウェア技術者試験も知識の確認に役立ちます」とアドバイス。井上氏は、「最近は、USBで接続できる小さな基板も提供されていますので、プログラムを動かして感じをつかむ、という経験は積めると思います。こうした手で覚える部分と、書籍やセミナーなどと併用するといいでしょう」という。

 ITエンジニアが、組み込みエンジニアに転身して、すぐ活躍できるとは限らない。しかし自分の経験を生かし、知識を積めば、組み込みエンジニア界で、標準となる開発手法を提唱したり、業界全体をけん引していったりできる可能性もある。「新しい環境にチャレンジしたい」と望むITエンジニアにとっては、最適な業界なのではないだろうか。

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豆蔵では、組み込み企業を対象にした「ソフトウェアエンジニアリング」を展開。組み込み開発に適応するためのさまざまな技術支援、コンサルティングサービスを行っています。具体的にはオブジェクト指向/UML/形式手法の導入、テスティング改善、プロセス改善が得意分野となります。そうした活動を通して、組み込みソフトウェア開発そのものの品質を上げることで、より優れた製品開発を可能にします。

また、個々のITエンジニアを対象に、組み込みソフトウェアエンジニアリングのセミナーも開催しています。



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