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価値ある上流エンジニアを目指せ!

激動するIT業界では、「自分の価値を上げるためには何をすべきか」が1人1人に問われている。これからのITエンジニアに求められるものとは何か。そのヒントの1つが「上流エンジニア」にある。

上流エンジニアの仕事は変わらないのか

 人件費の安い海外のITエンジニアによる「オフショア開発」が注目されたころ、「国内のITエンジニアが生き残るには、より上流の仕事をこなす必要がある」といわれていた。しかし実際には、システム全体の整合性を考えたインフラの設計や構築、あるいは品質確保など、技術を究めたいITエンジニアが活躍する分野はまだまだある。

 それに対して上流のITエンジニアはどうか。技術志向のITエンジニアが、ITアーキテクトやITスペシャリストとして職務を確立していったことに比べ、「これからの上流エンジニア像」については、明確な姿が描かれているとはいえない。

 そもそも、上流エンジニアとは何か、どのような仕事をしているのかも明確にはなっておらず「プロジェクトマネージャみたいなもの」「要件をヒアリングする担当者」というイメージだけが先行している。今回はそんな上流エンジニアにスポットを当ててみよう。

プラスアルファを提案できるかが鍵

 野村総合研究所(以下NRI)金融システム開発二部 副主任システムエンジニアの林田純児氏は、第二新卒で同社に入社したアプリケーションエンジニアだ。NRI入社後は、流通業界を担当する部署に所属し、大手コンビニエンスストアの会計システム開発に4年間従事。その後、金融系に興味が出て異動願を出し、現在の部署に移って2年がたつという。

野村総合研究所 金融システム開発二部 副主任システムエンジニア 林田純児氏

 アプリケーションエンジニアとは、ユーザー企業が必要とするシステムの機能要件を洗い出し、設計フェイズに落としていく担当者。NRIの場合、市販のパッケージはほとんど使わず、「ユーザーの要件に合ったものを、一から作っていく」というスタンスを取る。そのため、パッケージベンダのITエンジニアとは異なり、「システムの機能を選択し、パラメータ設定を行う」ような仕事はしない。(1)現在の業務モデルを描き、(2)課題(要件)を抽出し、(3)その課題(要件)を解決するアプリケーション機能を設計するという、“上流系”の技術力を駆使する担当者なのだ。

 そんな上流エンジニアに求められる知識とは何か。林田氏は「まずは、担当する分野の業務知識。業務知識がないと、ユーザーと会話ができません。そのうえで上流エンジニアには、プラスアルファの提案力や企画力が求められます」と話す。

 業界の慣習や会社の業務については、当然ユーザー企業の方がよく知っているし、システムの課題も分かっている。そこをあえてシステムインテグレータの上流エンジニアに委託するのは、技術知識と業務課題への理解によるプラスアルファのソリューションを提案してもらいたいからにほかならない。

 “プラスアルファ”を提案できることが上流エンジニアの真価であり、これこそ元請けの「上流系IT企業」の価値が問われる部分でもある。いわれたとおりのシステムを構築するだけなら、人件費の安い海外のITエンジニアで十分だ。それ以上の価値を生み出すのが上流の役割であり、次世代の上流エンジニアに求められる要件なのだ。

上流エンジニアには、それにふさわしい場が必要

 とはいえ、いかに優れた企画力・提案力を持つ上流エンジニアでも、実際に活躍できるプロジェクトがなかったら、そのスキルも埋もれたままだ。

 「NRIの場合、金融をはじめさまざまな産業分野、公共分野と非常に分野の幅が広く、またプロジェクトの規模も小規模から大規模までと多様なので、活躍できる局面が多いという特徴があります。

 大規模なものとしては、確定拠出年金(日本版401k)の導入で、業界各社と打ち合わせを進め、技術面からそのインフラ構築に携わってきました。NRIとしても、このように社会インフラや新しいビジネスの枠組みづくりを技術面からサポートするということを意識しています。いままでになかった新しい仕組みやビジネス、業務の方法を技術面から提案していくというのが、これからの“上流系”に求められることなのではないでしょうか」(林田氏)。

 ユーザーからヒアリングし、その結果をモデル化し、設計する――。これからの上流エンジニアには、さらに「企画・提案する」というスキルが必要となる。加えて、チャンスを生かせる場に身を置けるかどうかも鍵となる。

 ヒアリングや要件分析能力だけでも、確かに現在は大きなスキルであるといえるだろう。ただ、10年後、20年後もそのスキルが役立つという確証はない。上流エンジニアを目指すのならば、その“プラスアルファ”を育てることが必要なのではないだろうか。

求められる3つのスキルと1つの資質とは

 林田氏は、NRIのアプリケーションエンジニアとして、「企画・提案力」「業務知識」「技術を見きわめる目」の3つのスキルと、資質として「柔軟性」が必要だという。

 企画・提案力は、個人のもともとの能力によるところも大きいが、「大本にあるのは、『ある課題に対して、自分はどう考えるか』という思考力だと思います。プロジェクトの現場でも、部門内でも“じゃあ、君はどう考えるのか”と問われますし、実際に自分の考えがないと、先に進めないという局面も多いです」と林田氏はいう。

 業務知識を育てるには、書籍や新聞、Webサイトでの情報収集のほか、「分からないことは聞く」という姿勢が重要だ。個人だけの情報収集だと、興味の有無などによる理解の限界があるが、同じ部署やプロジェクトチームのメンバーに聞くことで、それを乗り越えられる。

 技術知識については、「開発するシステムの対象は異なっても、本質は同じなので応用は利くはず。個人的には、新しい技術に飛びつかず、実績のある技術をうまく使って、品質と機能のバランスを取る提案が重要だと思っています」と林田氏は語る。最新技術については、プロジェクトメンバーである開発会社と情報を共有することで、仕入れることも多いそうだ。

 最後の柔軟性とは何か。「産業分野も、プロジェクトの大小もさまざまにあるということは、それだけ多種多様な要件を的確につかむ必要があるということです。例えば以前担当していた流通産業分野の場合、当時開発に携わったのがビジネスにスピードが求められるコンビニエンスストアのシステムだったということもあり、部内の雰囲気がかなり活発でした。対して現在担当している確定拠出年金のシステムにおいては、何より品質が命のため、開発手法にもウォーターフォールを用い、じっくりと時間を取ってプロジェクトに取り組んでいます。ユーザー企業の属している業界や、担当するシステムによって変わる要件に対し、どれを優先すべきかを的確に判断し、柔軟に対応していくことが重要です」(林田氏)

 「自分が次世代を担うかどうか、正直なところ、未知数です。ただ、上流系は、単に作業スキルを磨けばいいというのではなく、やはり何がしかの“提案”が重視される傾向にあります。それとともに、プロジェクトを率いていくマネジメント能力も必要になるでしょう。私自身も現在、部下がいて、チームを率いている人間ですが、この能力をもっと高め、価値ある上流エンジニアになりたいですね」と林田氏は最後に語った。


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