ITスキルがマーケティング業界で求められる理由とは?
“脱エンジニア”で飛躍できる仕事!
マーケティング業界が ITエンジニアに“熱視線” |
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ERP、SCM、CRM、SFA……ITエンジニアにはなじみの深い言葉だろう。情報システムは、業務を効率化(=コスト削減)するための道具として、企業活動に用いられてきた。しかし、1990年代以降の情報テクノロジの急速な進展により、ITはコスト削減のみならず、売上・収益増大に寄与する重要な経営資源へと進化している。まさにIT投資が企業のすう勢を決める時代といっても過言ではない。
いまやITは経営戦略上の重要な武器であり、経営者をはじめマネジメント層もITの知識は必要不可欠だ。“IT先進国”のアメリカでは、ITエンジニアがCEOやCIOとして経営陣に登用されるなど活躍の場が広がっている。これは何も経営層に限った話ではない。さまざまな業界、業種、企業の現場でもITスキルは必須になりつつある。マーケティング分野でも、ITスキルは持っていて当たり前のことになっている。
例えば、「One-to-Oneマーケティング」を考えてみよう。テレビや新聞広告に代表される従来のマスマーケティングに代わり、インターネットやデータマイニングを駆使する個へのマーケティングという手法は、現在多くの企業が取り組んでいる。
こうした手法を有効活用するには、マーケティング知識のみならず、Webシステム、データベース、セキュリティなど広範なIT知識と経験が必要になる。ITを活用することにより、何ができるのか、どんなシステムやツールを組み合わせれば実現可能か、その場合どれほどの費用対効果が得られるのか。これらを評価し、計画できるのは、まさにITの最前線で経験を積んだITエンジニアにほかならない。
こうしてみると、ITエンジニアの新たなるキャリアパスの1つとしてマーケティング業界が有望なのが分かるだろう。ITエンジニアとして得られた知識や経験をマーケティングという新たな世界で生かすことができるのだ。
では、そこで活躍するには、どんなスキルやキャリア、マインドが求められるのだろうか? インターネット前夜のパソコン通信時代からPCとネットワークを駆使して、マーケティングサービスを展開してきたドゥ・ハウスの稲垣佳伸社長に話を聞いた。
「事実」に基づいて「仮説」を 作れるITエンジニアが必要 |
「ITスキルはいまや一般的なスキルになってきました。例えばマーケティングプランナーだってHTMLを使って簡単にプレゼン用の資料を作ってしまう時代です。もうすぐコミュニケーションサーバの管理だって営業マンが簡単に手掛ける時代になりますよ。せっかくITスキルを備えているのに、それに固執するばかりではキャリアの幅を広げる可能性を狭めてしまうのではないでしょうか」と、ドゥ・ハウスの稲垣社長はいきなりこう語る。
株式会社ドゥ・ハウス 代表取締役社長 稲垣佳伸氏 ■1952年神奈川県生まれ。1980年に株式会社ドゥ・ハウスの設立に参画、1990年代表取締役に就任。『実学入門 なせ売れないのか〜営業力は「仮説力」で決まる』(日本経済新聞社)など著書、論文多数。「人とコミュニケーションすることが好きなITエンジニアの応募」を熱望している |
ネットを介したマーケティングはクライアントの要求で日々大きく変化するビジネスである。現在はまだ、マーケティングプランナーとWebエンジニアとが分業するケースが多いが、それではクライアントへの対応が遅くなることを稲垣氏は痛感している。クライアントの要求をプランナー自身が直接Webサイトに反映できた方が仕事は早いに決まっているからだ。
同社では年間2000本以上の新商品開発プロジェクトを手掛けるなど、事業展開の拡大に伴い、ITに精通した人材を募集しているが、稲垣氏の意味するところは、ITスキルだけでビジネスは成立しないというメッセージである。逆にいえばITスキルは基本的な素養として持っていて欲しいという強い要望でもある。
これからのマーケティング業界に求められる人材は、IT知識に造けいが深く、さらにビジネスマインドを持ち、ITを駆使して新たなビジネスをプロデュースできる人だ。まさにITスキルをバックボーンにITエンジニアとしてのキャリアを積んできた人材が当てはまる。
稲垣氏はさらに求める資質を次のように強調する。
「コミュニケーションが基本の仕事ですから、まず、人が好きだというマインドが大切です。ビジネススキルの面ではファクトファインディング(事実収集力)が必要です。この能力が高い人は、集めた『事実』に基づいて『仮説』を立てる力を備えています。ですから、自分から蕩々(とうとう)と話すタイプではなく、多くの人から意見を聞き、それをしっかりと受け止められる人が欲しいですね」
ファクトファインディング力とは「事実収集力」のこと。事実を収集して仮説を立てたり、仮説を検証するために事実を収集することである。ITエンジニアは「仮説⇒検証」の思考プロセスを重んじる。そうした経験がマーケティングコミュニケーションの仕事をするうえで生かされることが多いという。
さらに、ファクトファインディング力のベースは人から話を聞くヒアリング力である。コミュニケーションの基本はまさに「聞く」ことであり、これを重視する稲垣氏は、「マシンが好きで人が苦手な従来型のエンジニアはマーケティング業界には不向きだが、ビジネスマインドを持つエンジニアには活躍の場がたくさんある業界だ」と断言する。
☆マーケティング業界に興味を持ったエンジニアの方へ |
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生産者主導の情報の流れを “生活者主導”に変えるダイゴ味 |
ここでドゥ・ハウスの事業内容について簡単に説明しよう。
1980年に設立された同社は、「DOさん」と呼ばれる主婦のネットワークによるクチコミ型プロモーションサービスと、「定性データ」を重視したマーケティングリサーチを展開してきた。その後、パソコン通信やインターネットの登場により事業を拡大、現在では電子メールユーザーをネットワーク化した「iMiネット」や「ひとびと・net」「めるめる・net」ほか各種Webサイトやメールマガジンのサービスを展開中だ(「 iMiネット」は富士通系の株式会社ライフメディアの事業。ドゥ・ハウスはその初期事業開発に深くコミットした)。
こうしたさまざまな事業を展開するにあたり、稲垣社長がこだわるのは「インタラクション」というキーワード。「メディアで発信、Webで受信。メディアで発信、メールでインタラクション」というスタイルだ。その発想の陰には、従来のマスメディアを中心とした情報の一方的な流れに対する反発がある。
「マスメディア一本槍のマーケティングへの疑問と、アンケートに代表される定量データだけでは市場のニーズやウォンツの変化に対応できないという確信がありました。また、クライアントである企業を主語にすると、従来は『発信型』だったものを『受信型』に変えようというのが発想の基本です。その思いを実現するためにも、技術力をベースとして新たな価値をプロデュースできる人材を求めているのです」
モノとモノが巡り会う場がマーケットであるならば、情報と情報の巡り会う場がネットワークと稲垣氏は語る。デジタルネットワーク社会においては、モノを消費していた生活者が「情報の生産者」となり、モノを生産していた企業は「情報の受信者」に変わる。そうした“情報の逆流”を促進することもまたドゥ・ハウスの役割であるという。
マーケティングは業務処理でなく クリエイティブな“創造処理”の仕事 |
現在、マスメディアを通して企業から生活者に対して発信される広告費は、年間5.8兆円だという。それに対して、生活者から企業に流れる情報を扱うマーケティングリサーチ市場はまだわずか2000億円。58対2というアンバランスな状態だ(図1)。
広告市場5.8兆円に対してリサーチ市場は2000億円 〜ここから「情報いちば」には一体いくらぐらい流れてくるのか〜 |
図1 モノとモノが巡り会う場が「商品いちば=マーケット」であるならば、情報と情報の巡り会う場が「情報いちば=ネットワーク」。モノを消費していた生活者が「情報の生産者」となり、モノを生産していた企業は「情報の受信者」に変わる |
稲垣氏は、「企業側は情報を発信しすぎ。現在の広告市場5.8兆円の約10%ぐらいは、企業と生活者間の『新しいコミュニケーション市場』に流れてくるはずです。そこではダイレクト・リレーション、インタラクティブ・コミュニケーション、エージェント・コミュニケーションなどに代表される新しいやりとりが始まるはずです」と予測する。
“脱エンジニア”志望者にマーケティング・エンジニアやコミュニケーション・エンジニアとして活躍する場が用意されている |
さらに、ITエンジニアが次世代のマーケティングプランナーになるうえで必要な発想法についてこう語る。
「ITの本質はコミュニケーションツールであり、私たちのシステムは銀行のシステムのような演算処理=業務処理ではなく、クリエイティブな“創造処理”です。私はITをInformation Technologyではなく“Interaction Technology”として定義付けたい。そうした発想の転換ができる方に来てほしいですね」
このように語る稲垣氏のドゥ・ハウスには、従来の仕事に飽き足らないITエンジニアに、マーケティング・エンジニア、あるいはコミュニケーション・エンジニアとしての活躍の場が用意されている。ITエンジニアから一歩踏み出し、マーケティングの世界でITスキルを生かしたい、マーケティングプランナーとしてキャリアを追求したいと願う人材を待ち望んでいる。
技術者からマーケティング プランナーへキャリアチェンジ |
ITエンジニアからマーケティングプランナーへ――。彼らはこの仕事のどこに面白さを感じて転職に踏み切ったのか。エンジニア時代の経験をもとにマーケティングプランナーとしてのキャリアを開花させつつある2人の若手転職者を紹介しよう。今年4月入社の井上光章氏(28歳)と5月入社の伊藤瑞樹氏(24歳)に話を聞いた。
―― 前の会社ではどんな仕事をしていましたか。
営業技術本部 定性リサーチ部 井上光章氏 ■2つのSIerにて新規事業の提案・営業、SE職を経て今年4月入社。 開発現場での経験をもとに、マーケティングの世界でプロジェクトマネジメントの仕事に関心を抱いている |
井上氏 ドゥ・ハウスに転職する前に、2社のSIerで働きました。1社目では新規事業を提案・営業しつつ、受注すればシステムを構築するといった仕事で、SEといっても結果的には営業の仕事が多かったです。顧客と話をしているとITに関する知識不足を感じ、開発現場でもっと修行したくて2社目に転職しました。そこではバリバリのSEとしてOracleのデータベースやJavaを学び、独学でXMLも習得しました。
伊藤氏 メーカー系のSIerで、2年間SEをしていました。生産管理や営業管理、会計システムなどの構築で、COBOLやVB(Visual Basic)を使ってプログラミングしていました。私はもともと理系ではなくて、大学でマーケティングを専攻していました。SEになったのは、大学時代のバイト先でCRMにかかわり、システム開発に興味を持ったのがきっかけです。技術的なことは入社してから覚えました。
―― 現在の仕事内容について聞かせてください。
井上氏 定性リサーチ部としての仕事はグループインタビューをまとめたりすることですが、SE時代のプロマネ経験は生かされていると思います。また、ITでスケジュール管理をして効率化を進めようとする「業務改善プロジェクト」が社内にあり、そのメンバーになっています。そこではWebサイトでプロジェクトの進ちょく管理ができるシステムを開発しています。今後はクライアントのWebサイトのシステム構築などを手がける機会がありそうです。
伊藤氏 数値データを収集して分析するのが現在の仕事です。前職はプログラミングがメインの仕事だったので、それ自体いまの仕事とはそれほど関係ありませんが、Webアプリケーションを使う機会が増えて、日々新しい発見はありますね。
マーケティング経験がなくても 努力次第で飛躍できる |
―― ドゥ・ハウスへの転職動機は。
井上氏 2社目で体調を崩したとき、転職を考え始めました。もともとSEをずっと続ける気はなくて、マーケティングや広告系の仕事は面白そうだなと思っていました。またそのころ、ビジネススクールなどに通い経営の勉強を始めました。何社か面接を受けましたが、「社員全員が事業家たれ!」という稲垣社長の言葉に、自分でも何かできそうだという可能性を刺激されました。
営業技術本部 クイック・リサーチ部 伊藤瑞樹氏 ■大手メーカー系のSIerで2年間、プログラマを経験。大学時代から興味を持っていたマーケティング業界で、ITスキルを生かした仕事をやってみたいと思い、今年5月転職 |
伊藤氏 これまで行ってきたシステム開発は業務系なので、例えば、会計システムでは会計業務の枠を超えることができませんが、マーケティングの仕事はいろいろな発想の転換ができる仕事です。あまり枠にとらわれずに自由な発想でできる仕事がしたかったので、転職を考えました。また、前は大きな会社でしたが、自分が成長して責任ある仕事を担当できるようになるまでに時間がかかりそうな気がしました。
友人がドゥ・ハウスの取引先に勤めており、彼から評判を聞いていました。面接で稲垣社長に会い、「エネルギッシュでよく話す人だな」と思いました(笑)が、そのマーケティングビジネスに賭ける思いに強く引かれました。たとえ、マーケティングプランナーの経験がなくても、自分の努力次第でいくらでも成長できる環境はあるといわれたことが、印象に残っています。
―― 現在の仕事のやりがいと将来のキャリアビジョンについて聞かせてください。
井上氏 SEのときは1つのプロジェクトにかかりきりでしたが、こちらでは常時4〜5本のプロジェクトを担当し、同時に動かします。その点はかなり違うし、大変です。自分からプロジェクトの提案ができるように早くなりたいのと、将来的にはもっとビジネスを回せる立場に立ちたいですね。
伊藤氏 エンジニアの仕事と内容は変わりましたが、プロセス自体には大差ないと思います。市場調査の基礎は大学時代に勉強したつもりですが、モノが売れる仕組みを自分なりに構築したいと思っています。技術的な知識を生かして、これからもマーケティングの世界で仕事をしていくつもりです。
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ITスキルをバックボーンに持つ人材を核に、新たなマーケティングビジネスの展開を目指すドゥ・ハウス。ITに造けいが深く、さらにビジネスマインドを備えているITエンジニアならば、やりがいの大きな仕事に出合えることだろう。エンジニアの仕事に飽き足らず、マーケティング業界でキャリアの可能性を追求したい人には注目の企業だ。
募集要項 |
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株式会社ドゥ・ハウス
企画:アットマーク・アイティ人財局
制作:アットマーク・アイティ編集局
掲載内容有効期限:2003年11日10日
企業情報 |
株式会社ドゥ・ハウス ■代表者 代表取締役社長 稲垣 佳伸 ■所在地 東京都港区新橋6-20-2 新橋SIビル TEL:03-5472-7901(代表) FAX:03-5472-7916(代表) ■設立 1980年7月7日 ■資本金 39,900万円 ■主たる外部株主 株式会社インプレス トランス・コスモス株式会社 東京中小企業投資育成株式会社 株式会社博報堂 三菱商事株式会社 ■社員数 70名 (2003年10月現在) ■事業内容: ●東京・大阪を中心に、マーケティングサービス事業を展開 ●生活者フィールドと流通フィールドのと2つのマーケティングフィールド に対して、クチコミプロモーションと定性情報リサーチの2つのアプローチでのマーケティングサービスを実施 ●各種、クチコミ型の販売促進システムの企画・実施と新商品開発のための コンセプト調査・設計サービス ●パソコンやデジタル&ネットワークを活用したマーケティングシステムの開発・実施 ●ダイレクトマーケティング事業の開発・研究・実施や新時代を支える「多目的ネットワーキング」が主たる事業領域。以上の展開には2つのネットワークが基盤となっている 1つはDOさんと呼ぶ 「主婦のネットワーク」を活用。1500人のDOさんの自宅にパソコンをネットワーク端末として設置 また、新基盤としてeメールユーザーをネットワーキングしたiMiネット(富士通株式会社との共同プロジェクトとして96年10月から立ち上げ、現在は株式会社ライフメディアが運営)でのマーケティングサービスを販売・実施(2003/10/3現在会員667,036人) ●新規事業:「ひとびと・net」「めるめる・net」「きかせて・net」 「はいめーる・net」 「めろんぱん」 |
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