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ITエンジニアからコンサルタントへ
コンサルティング業界事情とプロジェクトマネジメント力


企業経営の中で、情報システムの重要性が高まっている現在、単なるシステム開発にとどまらず、経営課題の解決を支援できるコンサルティング会社は活況を呈しているという。そこで2004年は大幅な人員増を計画しているコンサルティング会社が多く、キャリアアップを望むITエンジニアにはチャンスの年といえる。
コンサルタントになるための秘けつや業界事情を、パソナキャレントの稲田敦司氏に伺った。キーワードは、ずはり「プロジェクトマネジメント力」だ。

  コンサルティング業界が求めているのは、
「プロジェクトマネジメント力」

 @IT自分戦略研究所の第1回 読者調査によると、ITエンジニアの今後目指したい職務の筆頭に挙げられたのは「ITコンサルタント/アナリスト」で、第2位は「プロジェクトマネージャ」となっている(図1)。ITエンジニアの3人に1人が、より上流工程に携わることを望んでいるのだ。一方、コンサルティング会社もITエンジニアの採用に積極的だという。

図1 ITエンジニアの今後目指したい職務(@IT自分戦略研究所 第1回読者調査 2003年3月。回答数=452人)

 ひとくちにコンサルティング会社といっても、得意分野や業種によって、さまざまに分類できる。いざコンサルティング会社への転職を目指しても「自分に合ったコンサルティング会社をどう見分けたらよいのか」「そもそもコンサルティング会社の現場では、実際どのような仕事をするのか」など、多くのITエンジニアが疑問や不安を感じるだろう。

 パソナキャレントのキャリアコンサルタント 稲田敦司氏によれば、コンサルティング会社は、「総合系コンサルティング会社」と「専門領域系コンサルティング会社」に大別できるという。「コンサルティング会社には得意とする専門分野=コンピテンシーがあります。そのコンピテンシーは4つに分類することができます。『経営戦略』『組織人事』『業務プロセス』、そして『IT』の4分野です。これらすべてを網羅しているのが『総合系コンサルティング会社』で、1分野ないし2分野に特化しているのが『専門領域系コンサルティング会社』と呼ばれています」。具体的には、IBM ビジネスコンサルティング サービス、アクセンチュア、アビームコンサルティング、べリングポイントが総合系コンサルティング会社の代表格といえる(図2)。

図2 コンサルティング会社の大分類

 いま、その総合系コンサルティング会社が、若くて優秀なITエンジニアを求めているという。「例えば経営戦略を立案する場合、その戦略を実現するにはITのソリューションが不可欠です。いまやITを抜きにしたコンサルティングはあり得ない状況です。そのため、各コンサルティング会社とも、ITエンジニア、特にプロジェクトマネジメント能力のある人材を求めているのです。具体的には、現職のプロジェクトマネージャはもちろん、20歳代後半のリーダークラスも採用の対象になっています」と稲田氏は背景を解説してくれた。

 では、なぜ「プロジェクトマネジメント能力」にフォーカスが当たっているのだろうか。稲田氏によると、「プロジェクト目標の設定」「ベンダ/外注先の多角化」「スピード経営」の3つが理由だそうだ。

 これまで、コンサルティング会社に依頼されるプロジェクトの目標は「コスト削減」を主目的としていることが多かった。しかし現在コンサルティング会社には、コスト削減だけではなく、「どうすれば、会社の業績アップ、利益アップにつながるのか」といった、プロジェクトの目標自体を決めるフェイズからの参画が求められている。このフェイズにおいても高度なプロジェクトマネジメント能力が必要だ。

 「ベンダ/外注先の多角化」もプロジェクトマネジメント能力を求める一因になっている。中国やインドなどでのオフショア開発が当たり前になっている現在において、ベンダ/外注先のコントロールミスは、プロジェクトの成否に直接影響してくる。ITエンジニア出身のコンサルタントがいれば外注先やベンダとの折衝もスムーズに進み、プロジェクトを任せることができる。

 昨今の「スピード経営」も、プロジェクトの遂行に大きな影響を与えている。経営スピードに合わせて、プロジェクトを完遂することは当たり前。プロジェクトの遅れは、全社経営の遅れとなる時代だ。プロジェクトマネジメント能力のあるITエンジニアを求める傾向は、ますます強まっていくだろう。

  ITエンジニアからのステップアップには
総合系コンサルティング会社を狙え!

 以上のように、2004年はITエンジニアからコンサルタントにキャリアアップするチャンスといえる。では実際にコンサルティング業界への転職を成功させるためのポイントとはどこにあるのだろうか。稲田氏はそのポイントとして次の3つを挙げる。

  (1)コンサルティング業界の現状を知ること
  (2)コンサルティング会社の事業戦略を知ること
  (3)求められている人材の資質を把握すること

 「ひと言でいうなら『敵を知り、己を知る』ということです」。

株式会社パソナキャレント
ITコンサルティンググループ
マネージャ 稲田敦司氏

大学卒業後、外資系SI企業でSEとして入社。その後、人材ビジネスに興味を抱き、大手人材紹介会社へ転職する。SE経験と数千人とのキャリアカウンセリング経験を生かし、ITエキスパートとコンサルタントの転職支援を担当している。

 コンサルティング業界には、総合系、専門領域系があることは前述したとおり。では、ITエンジニアにとっては、どちらのコンサルティング会社を転職先として目指せばよいのだろうか。それに対する稲田氏の回答は「総合系コンサルティング会社です」とのことだ。

 専門領域系の中には、ハイレベルなIT技術を武器に高度なITソリューションを提案できるコンサルティング会社も存在する。ITエンジニアとして活躍してきた経験を考慮すると、そのようなITに特化したコンサルティング会社への転職が、自分に合っている、または、転職でキャリアアップする近道だと思えるかもしれない。

 しかし、稲田氏は総合系コンサルティング会社を推奨する。ITエンジニアにとって、総合系コンサルティング会社に転職するメリットはどこにあるのだろうか。「経営戦略、組織人事、業務プロセス、ITの4つのコンピテンシーをすべて持っているということは、それぞれの分野で超一流のエキスパートが社内に存在するということ。例えば、あるプロジェクトを遂行するための社内ミーティングが、各分野のエキスパートの経験や知識の結集の場となるのです。このような場ほど鍛えられるチャンスはありません。『経営戦略を完遂するためにITで何ができるのか』といった、技術だけではないプロの視点を持つことができる。ITを武器にして、そこから自分の得意分野や可能性を広げていけるのです」。

 また、IT分野での経験を生かし、経営戦略にかかわる仕事をしたい、といった場合にも、総合系コンサルティング会社であれば、ITソリューションを専門とするグループから経営戦略を専門にするグループへと異動することも可能だ。キャリアビジョンややりたいことに合わせて、自分の幅を広げていけるところに総合系コンサルティング会社に転職するメリットがある。

 それでは、ITエンジニアが総合系コンサルティング会社に転職した場合、具体的にはどのような業務を任せられるのだろうか。

 「転職直後は、ITか業務プロセスのグループに配属されることが多いでしょう。会社によってITと業務プロセスとの区分けは微妙に異なりますが、業務プロセスの改善を主目的とするのが業務プロセスのグループ、ITソリューションの実装まで踏み込んでソリューションを提供するのがITグループとなります。ITエンジニアが転職する場合は、ITグループへの配属が多いようですね。ITグループは、経営戦略グループが描いたグランドデザインに基づき、ITソリューションの実装までを手掛けます。具体的にはクライアントと交渉して、要求分析から要件定義、基本設計、詳細設計まで幅広く行います」。

 こう聞くと、現在、システムインテグレータでプロジェクトマネージャやリーダーの立場にいるITエンジニアの中には、「それはいま、自分がやっていることと変わらないのでは」と思うかもしれない。しかしコンサルタントは、特定ベンダの製品や技術を売るためにソリューションを提案するのではない。クライアントのニーズに対して、最高のソリューションを提供することが責務なのだ。「ベンダからはまったく中立な立場で、最適なソリューションを見つけ出す。そのためにベンダの選定をも行う。それがコンサルティング会社とシステムインテグレータの違いなのです」。

  コンサルティング業界の
事業戦略について知ろう

 ここまで、コンサルティング業界の現状、総合系コンサルティング会社に転職するメリット、実際の業務について述べてきた。次に、総合系コンサルティング会社の事業戦略について触れてみよう。

 稲田氏によれば、総合系コンサルティング会社の戦略は「オールインワンとアウトソース」がキーワードのようだ。オールインワンでは、経営戦略の立案から業務プロセスの改善の提案、そしてITソリューションによるそれらの実現すべてを手掛ける方向に動いている。「クライアントの要求に対して、いかようにも対応できるアメーバのような柔軟性を持ち、どの角度からでもコンサルティングができるような体制を整えている」のだ。合わせて、ある部分に関しては、自社よりも高いスキルレベルのシステムインテグレータとアライアンスを組む、アウトソースするといった動きも見られる。オールインワンとアウトソースといった動きがパラレルで進行しているのだ。またそこには、クライアントのニーズに合わせるため、オーダーメイド的な要素も当然入ってくる。

 この事業戦略から、どのような人材が求められているのかも浮き彫りになる。総合系コンサルティング会社が、クライアントの要求に柔軟に対応できる、いわば「アメーバ型」で企業であることを考えれば、求められる人材も当然、「アメーバ型人材」となる。「ベンダや技術に対してフリーで中立であること。凝り固まった頭ではコンサルティングはできません。クライアントのニーズに、柔軟に対応できることが重要です」。コンサルタントは、ときにクライアント企業に3カ月、半年と常駐することがある。「その会社の人と間違われるぐらいに『染まる』ことができればしめたもの」という。アメーバ型人材になるためには、「基礎力」(ITスキル、ナレッジ)と「応用力」(自分のアタマを使い、間違いを軌道修正できる力)をバランスよく兼ね備えることが必要だ。

  コンサルティング業界は
「人間力」のある人材を求める

 基礎力に含まれるITスキルとして求められるものは何だろうか。「プロジェクトマネジメント経験はもちろんのこと、オープン系やWeb系のシステム開発経験が求められています。では、COBOLなど汎用系エンジニアは、コンサルティング会社への転職は無理かというと決してそうではありません。大切なことは、自分が持っている基礎力と応用力で、いかにクライアントの要求を実現するかです。実際に汎用系エンジニアでコンルタントとして成功している人もいます」。

 つまり、「ある開発言語を深く習得している」「データベースやネットワークの知識が深い」といった点が評価されるのではなく、「基礎力、応用力を生かして、クライアントに最適なソリューションを論理的に組み立てられる」ことが、最も重要な評価ポイントだという。

 もちろん、コンサルタントという仕事への向き不向きもあろう。「コンサルタントという仕事のイメージからか、ゼネラリストがいいのかスペシャリストかといった質問を受けることがあります。その答えはどちらでもなく『プロ意識の高い人』なのです。短納期でもきちっと仕事を仕上げられる人。さらに周囲の人間とコラボレーションできる人、クライアントはさまざまな業種にわたるので、何でも見てやろうといった気持ちのある人、つまり、人間力のある人が向いています」(図3)。

図3 コンサルタントに必要な資質は、基礎力と応用力、そして人間力

  コンサルタントの現実を直視し、
厳しい世界で可能性を切り開け

 コンサルタントという響きは多くのITエンジニアにとって、ある種の憧(あこが)れをもたらすかもしれない。ただし、実際の業務は、言葉の持つイメージとは裏腹に厳しい世界である。「コンサルタントは、カッコイイことばかりではないのです。中には“究極のサービス業”と定義するコンサルタントの方もいます。ただ、さまざまな業務を経験するので膨大な知識、人脈、スキルが身に付きます。ITエンジニアの1つの目標としてやりがいのある仕事であることは間違いありません」。

 稲田氏にコンサルティング会社への転職活動におけるアドバイスを聞いてみた。「実際の採用は、その人材の能力だけで決まるものではありません。コンサルティング会社がいま現在求めている人材のポジションなども微妙に影響します。そういった個人では知り得ない情報が転職活動の結果を大きく左右します。より有利に、確実に転職活動をすすめるには、私たちパソナキャレントに相談していただくのが最も効率的です。ぜひ、ご相談ください」。

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株式会社パソナキャレント
企画:アットマーク・アイティ 人財局
制作:アットマーク・アイティ 編集局
掲載有効期限:2004年3月31日

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パソナキャレント(現パソナキャリア)とは
  株式会社パソナキャレントは、日本最大の人材総合サービス企業である株式会社パソナの人材紹介事業部が別法人化し、2003年10月に設立した。同社には、ITエンジニアの転職に特化した「ITコンサルティンググループ」がある。その特徴は、ITエンジニア出身かつ人材紹介事業で長いキャリアを持つコンサルタントが所属していることにある。彼らは、ITエンジニアのキャリアパスや業界動向を熟知しているため、ITエンジニアに最適な「中長期的キャリアプランに対するコンサルティング」を提供している。東京のほか、大阪に支社がある。