「自分の技術で生きていく」。ITエンジニアの独立志向は高い。@IT自分戦略研究所が2003年4月に実施した読者調査結果でも、回答者の約4分の1が将来の独立を検討していることが分かった。だが独立して生計を立てるには不安も尽きない。2年前に大手SIベンダーを退職し、現在フリーで活躍し30歳で月収70万円を稼ぐエンジニアの実態と困難克服法を訊いた。 |
ITエンジニアが会社を離れるとき |
2003年に実施した@IT自分戦略研究所の読者調査によると、「今後実施したいこと」として「キャリアビジョンの明確化」「ビジョンに基づくキャリアプラン作成」がそれぞれ半数を超えた。そうはいっても@IT自分戦略研究所自体がITエンジニアのキャリアを考えるサイトなので、回答が自分のキャリアに関心が高くなるのも当然だろう(図1)。また、同じ設問では約4分の1が「独立/起業のための計画立案」に回答したことも興味深い。アンケートは複数回答なので、先の「キャリア」関係で答えた回答者の約半数弱が「独立/起業のための計画立案」も同時に答えたと考えられる。なぜなら、キャリアのビジョンやプランに興味のない人が独立の計画を立てるとは考えにくいからだ。そうなると、将来のキャリアを本格的に考えているITエンジニアの約半分は独立も視野に入れていることになる。
図1 2003年に実施した@IT自分戦略研究所の読者調査の結果 |
ITエンジニアが独立を望むのは、どんな理由からだろうか。現在、フリーエンジニアとして活躍している広瀬氏に退職を決意するまでの経緯を訊いた。もとから学習意欲おう盛だった広瀬氏は、入社以来会社の講習やネットを通じて積極的にスキルを吸収してきた。同時にやりたい仕事の傾向も見えてきた。「本当は違うことがやりたかった」そうだが、社員では思い通りに仕事が選べないことも多いことに気付き始めた。
それはなぜだろう。社員だと、雑務が多いこと、思うように仕事が選べないこと、指示される仕事で理不尽な思いをすることもあったためだ。そして金銭面の問題も深刻だった。プロジェクトに掛かる金額を知るようになると、自分の貢献度に対して給料が見合ってないのではないかと疑問に思うことがあった。会社員なら仕方がないことだと思うが、割り切れなさが残った。当時のことを広瀬氏は「会社は会社の利益を追求するのだから当たり前といえば当たり前です。でも、将来の自分を考えると……」と振り返りながらも、複雑な心境をのぞかせた。
さらに広瀬氏は「終身雇用はなくなりつつある」ことを意識し、早いうちから会社を離れる時がくるだろうことを意識していた。そんな中で会社員という立場は広瀬氏にとって魅力的に感じられなくなっていた。そして技術面では「もう1人で解決できる」とITエンジニアとして成熟し自信がついてきた。そうしていつしか退職を決意したという。
派遣に比べて金銭面で有利な組合 |
経緯や理由はさまざまだが、広瀬氏のように会社に所属しないITエンジニアを選ぶ人は少なくない。特にここ数年の間で会社に所属することにこだわらないエンジニアが増えてきた。IT業界ではプロジェクト単位の期間が短いこと、得たスキルや実績は会社を変えてももそのまま生かせられることもあり、プロジェクトごとに会社を渡り歩くフリーエンジニアはもう珍しいものではない。人材派遣に登録したり、完全に独立する、といった差はあるだろうが、フリーエンジニアは増加している。
では、広瀬氏はどのようなフリーエンジニアになったのか。実は広瀬氏は派遣でも、完全な独立タイプでもない。派遣とは似て異なるが、首都圏コンピュータ技術者協同組合(以下、組合)の組合員である。この組合はITエンジニアに仕事を紹介したり経理を代行する形でフリーエンジニアを支援している。詳細は後述するが、ここでも組合員は増加傾向にあるという。特にここ2年で組合員は1.5倍に増加している(図2)。
図2 組合員の数と取引先の数の推移 |
なぜ広瀬氏は組合員になったのか、退職後から話を続けよう。退職して今後どう仕事を見つけるかを考えていたところ、インターネットで組合の存在に気付いた。「会社員は当分遠慮したいと思いました。派遣も考えましたが選びませんでした。もともと独り立ちしたかったからです。組合を選んだのは営業面や経理面をサポートしてくれるからでした」と広瀬氏は説明する。
どんな仕事でも独立すれば本業と同時に、会計処理や仕事の開拓も行わなくてはならない。だがITエンジニアにとって「独立はしたいが、経理や営業は苦手」という人は少なくない。それに雑務の多さで会社員に嫌気がさしたのに、自分ですべての雑務をやるなんてもってのほかという人もいるだろう。もし十分に人脈があるなら営業はさして不要だが、誰もがそうとは限らない。そこで、派遣会社に登録して経理や営業を代行してもらうのも選択肢の1つだ。組合もこの点では同じだ。だが、決定的に違うのはその内容の透明性、組合員の手取りの多さである。さらに組合がエンジニアの将来の独立を支援している姿勢も興味深い。
派遣と組合との比較をしてみよう。一般に派遣では、仕事の金銭的な契約内容は登録者には開示されない。多くは契約金額の2〜3割は派遣会社の取り分となる。だが、組合員なら契約内容はすべて開示される。さらに組合では、契約金の93〜97%を報酬として受け取れるが、これは派遣と比較してかなり多い(割合は実績に応じて)。また、組合員は個人事業主なので、確定申告で経費を申請して税金を控除できる。このように、金銭面では組合は派遣に比べてかなり有利だ。広瀬氏は「報酬ではまだ完ぺきには満足していませんが、会社員時代と比べたら現状は満足しています。自分で制御できているせいもあると思います」と語る。
仕事面では会社員でも派遣でも組合員でも、どれもほぼ同じと見ていいだろう。違うのは雇用形態だけで、仕事はどこかの会社に常駐してプロジェクトをこなすのが大半だ。仕事の割り当ては、組合では自分のスキルや要望に向いた案件を紹介してもらい、契約する。任務終了または契約期間終了となれば、また次の仕事を紹介してもらう。その繰り返しだ。実際は同じ案件でも四半期ごとに契約の見直しが行われることが多いという。
組合が独立に必要なことを手ほどき |
さて広瀬氏、この先をどう展望しているだろうか。「あと5年ほどはIT業界で働くつもりです。つまり35歳をめどに起業できればと考えています。しかし、この業界は変化が激しいのでどうなるか分かりません。それに、今は目の前の仕事で精いっぱいで」と苦笑いする。これがまさしく率直な感想だろう。
首都圏コンピュータ技術者協同組合 事業統括部 企画広報課 マネジャーの内田幸一氏 |
IT業界で働いていると、毎日の仕事に追われ、将来を考える暇もなければ予測も難しい。はっきりいって不安だ。だがそれは会社員にもあてはまることだ。さらに広瀬氏はこうも言う。「時期を見て、いつかは将来をじっくり考えようとも思います。今は会社員ではないので、契約さえ無事に終わればまとまった休みを取ることもできます」とフリーなら充電期間も柔軟に取りやすいという。
まだ漠然としていながらも広瀬氏は近い将来に起業することを念頭に置いている。ところで、組合はなぜエンジニアの独立を支援するのだろうか。首都圏コンピュータ技術者協同組合 事業統括部 企画広報課 マネジャーの内田幸一氏は「創始者であり前理事長の横尾良明がフリーの技術者と話をする中で、彼らのさまざまな苦労があることを知り、本来の業務に専念できる環境があれば、そのような苦労から解放されるという考えからこの組合は誕生しました。また、それを実現できる組織形態が、協同組合というものでした」という。日本でも生活協同組合(生協)や農業協同組合(農協)など多様な組合は存在するが、IT業界にその発想を持ち込んだのは画期的だ。
組合ならではのメリット |
組合のメリットは内田氏が語るように、個人のデメリットを克服できることにある。個人には会社と違って福利厚生がない。入社したてのころはありがたみを実感できないが、定期的な健康診断や各種イベントも仕事を続けるうえでは貴重である。また完全に独立していると立場が弱く、営業や経理で不利になることもある。個人には直接仕事を依頼しないという方針を持つ企業もあるからだ。さらにめったにないことではあるが、組合なら法律相談にものってもらえる。実際に起きた話では、組合員が契約した企業が倒産して売掛金が回収できるか危ぶまれたことがあった。つまりきちんと働いたのに、倒産で報酬をもらえなくなりそうだったのだ。だが、組合の顧問弁護士の働きにより無事に報酬を得ることができたという。個人で契約していたら泣き寝入りしていた可能性は高い。
首都圏コンピュータ技術者協同組合 事業統括部 企画広報課 平野美由紀氏 |
将来は独立を考えているなら、組合をうまく活用してノウハウを蓄積するのも手だろう。最初は分からないことも多く、1人でこなすのは難しい。だが一定期間だけでも組合員となればノウハウを習得できる。その後であらためて独立するのもいい。組合では交流会も行っているので、フリーエンジニア同士で情報交換したり仲間を見つけるのもいいだろう。業界の評判や契約の奥深い話を情報交換できるかもしれない。
最後に、組合員になるにはどうしたらいいか。それはまず組合のWebサイトで詳細を知り、説明会に足を運ぶことだ。説明会を担当している首都圏コンピュータ技術者協同組合 事業統括部 企画広報課 平野美由紀氏によれば「説明会は少人数制で随時質問に答えることができます。また毎日開催しているので、都合の良い時に来てください。多くの人が弊社のWebサイトを見て概要は理解できるようですが、それだけだと現実味が伴わないようです。実際に足を運んで話を聞いてポンと背中を押されたような気になり、覚悟が決まったという人もいるようです」と話す。
まずは首都圏コンピュータ技術者協同組合、ないしは組合という形態に興味を持ってもらいたいとのことなので、説明会で話を聞き、いずれフリーに、というときに真剣に考慮してもいいのではないだろうか。説明会に参加される場合は、交通費として1000円が支給される。なお、加入を前提で説明会に参加される方の場合は、個別面談を受ける必要がある。説明会および個別面談に参加する場合は予約が必要なので、その場合は、首都圏コンピュータ技術者協同組合の説明会のページを参照してほしい。説明会から組合員になるまでの流れに関しては、「首都圏コンピュータ技術者協同組合の説明会の流れ」で簡単に説明した。
最後に、自分がフリーエンジニアに向いているかどうか判断に迷う場合は、下記の「フリーエンジニアに向いているかを10問で確認チェック!」を行って、自分がフリーエンジニアに向いているかを確認してから判断してもいいだろう。
フリーエンジニアに向いているかを10問で確認チェック! |
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1 | 10年先の人生の目標を立てている |
2 | 自分のキャリアアップに繋がる仕事を選びたい |
3 | 日本の終身雇用制度はもう信用ができない |
4 | エンジニアらしくないと言われることがある |
5 | 気持ちの切り替えが早い |
6 | スキルアップを常に意識している |
7 | 自己管理がしっかりできる |
8 | スキルに見合った高収入に繋げるための苦労はいとわない |
9 | 機会があれば起業したい |
10 | 将来の夢を考えるのが好きだ |
YESが10〜7の人:フリーエンジニアや独立起業に向いています。いますぐ説明会へ! |
YESが6〜4の人:しばらくは現状のままがいいでしょう。いつかは独立するのも悪くないかもしれません。 |
YESが3〜0の人:フリーエンジニアには向いていません。現状のまま会社勤めがいいでしょう。 |
首都圏コンピュータ技術者協同組合の説明会の流れ |
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・説明会だけの参加も可能です。 ・説明会の所要時間は個別面談を含め約2時間です。 ・個別面談を受ける方は、説明会当日写真付きの履歴書(書式自由)をご用意ください。 ■アンケート 首都圏コンピュータ技術者共同組合を知ったきっかけと状況申告アンケートを実施します。交通費の清算も行います。 ■組合の説明 組合概要をスクリーンでご覧いただきながら、組合の仕組みとサービスについてスタッフが説明します。 ■スキルチェック(面接) Webからご入力いただいた経歴にもとづきスタッフからご質問いたします。ここで伺った内容をもとにあなたの営業が始まります。不安や疑問に思っていることもどんどんお尋ねください。
■適性検査 所要時間は20分間です。 ■終了 お仕事のスタート時期や、経験等の理由で、いますぐ首都圏コンピュータ技術者共同組合に加入できなくても、再度面接させていただきます。 興味があればより詳しい説明会のページへ |
首都圏コンピュータ技術者協同組合
企画:アイティメディア 営業局
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2005年12月31日
組合の概要 |
■名称 ■認可 ■所在地 ■設立 ■出資総額 ■組合員数 ■役員 ■地区 1都2府19県 ■組合員資格 ■出資について |
組合の説明会について |
首都圏コンピュータ技術者協同組合に興味を持たれたら、説明会へお越しください。すぐに組合に加入するかどうかは問いません。興味がある方でしたら歓迎いたします。 |