エキスパートに聞く ぼくのスキルを支えた本
第7回
今回のエキスパート:高庄 浩一(アイジーエス)

遠竹智寿子
2002/1/25

 「最前線で必要なスキルとキャリアを知る!」でインタビューしたITエンジニアに、自分のスキルとキャリアを語るうえで欠かせない本を挙げてもらった。その本について熱く語る姿から、ITエンジニアの仕事への情熱が垣間見えるはず。

 今回お話を伺ったのは、株式会社アイジーエスの取締役を務める高庄浩一氏。

 高庄氏が薦めてくれたのは、書籍4冊と雑誌3冊。エンジニアの世界に足を踏み入れた当時、「言葉のまったく分からない外国に放り出された」と感じ、それを理解すべく読みあさった“マニュアル”の1つと、取締役という現在の立場から、多忙な時間を削ってでも読むというマーケティング関連の書籍。それに世の中の動向を探るために読むという雑誌。実際に、どんな書籍と雑誌を紹介してくれたのだろうか。

  UNIXの基本の知識はここから学んだ

プロフェショナルUNIX(Ascii software science Operating system 1)

村井純、井上尚司、砂原秀樹著
アスキー
1986年1月
ISBN-4-87148-184-0
2500円(税別)

 Ascii software science Operating systemシリーズの第1作目が本書である。出版されたのは1986年ながら、現在でもUNIXの定番書籍の1冊という、超ロングセラーだ。UNIXシステムが分かりやすくまとめられている。

 オペレーティングシステム(OS)の基礎知識からシステム設定やネットワーク環境に至るまで、多くのテーマがカバーされており、具体的なコマンドや利用方法などを取り上げている。このシリーズには、『プロフェッショナルBSD』(現在は改訂版)や『プロフェッショナル シェルプログラミング』などが発売された。

高庄氏:
 「UNIXで開発し始めた段階で1番よく読み重宝した本です。10年以上前の本ですが、UNIX本の中でもとても分かりやすかった覚えがあります。当時はそれほど書籍の種類も数もなく苦労しました。実は、懐かしいなという気持ちで持ってきた本です(笑)。UNIXもメジャーになり、現在はUNIX関連の本もたくさん出版されているので、ほかにいい本もたくさんあると思いますが、UNIX自体の基本が分かりやすく読める点で、いまでも十分読みごたえがあると思います

  System Vのマニュアルがぼくのバイブルだった

UNIX System Vシステム・アドミニストレーション・リファレンス・マニュアル 第二版

AT&T Bell Laboratories著、AT&Tユニックスパシフィック訳
共立出版
1986年12月
ISBN-4-320-09707-6
4000円(税別)

 

 UNIX System Vを開発したAT&T Bell Laboratoriesが発行したUNIX System Vのマニュアルシリーズの1冊。当時、「赤本」シリーズと呼ばれていた。個人が購入をためらうほどの価格であった本シリーズだが(1万円以上の本もあった)、UNIXを利用する多くのエンジニアが購入し、むさぼるように読んだという。

高庄氏:
 「ぼくがエンジニアになった当時、System Vが出たばかりでしたが、ぼくの周囲では、これは理解する必要があるという空気がありましてね。それでこの本を読みました。この本は、システムの仕掛けやオペレーションを考えるうえでの必須アイテムで、仕事上のバイブルみたいなものでした。いまみたいにオンラインドキュメントや書籍はそれほどなかったですから、マニュアルを読むしかなかったんですよね。いまは、とてもよくできた書籍がたくさん出版されていますけど

  独立起業家、一流営業マンになる自分革命

エスキモーに氷を売れ!

田山敏雄著
タヤマ図書
1991年12月
ISBN-4-8174-0268-7
1068円(税別)

 

ユダヤ商法

マーヴィン・トケイヤー著、加瀬英明訳
日本経営合理化協会出版局
2000年9月
ISBN-4-89101-014-2
9800円(税別)

 『エスキモーに氷を売れ!』の著者である田山 敏雄氏は、企業の経営者や幹部をはじめ、社員を対象にした教育研修などに取り組むI&Mタヤマ学校の校長である。「企業が真っ先に行わなければならないことは人づくりである」と、問題を投げ掛けたのが、田山氏の処女作となる『エスキモーに氷を売れ!』だ。

 この本は、彼の実体験を基にして書かれている。ビジネスを成功させるためには、努力や根性も大切だが、意識を前向きにすることが重要と述べ、個々のモチベーションやイマジネーションを高めるための手法が書かれている。第12回文芸大賞のノンフィクション賞受賞(現在は絶版により通常販売ルートでは入手不可能)。

 『ユダヤ商法』は、ユダヤ5000年の長く特異な歴史の中から生みだされたその商法とは何か? 逆境の中から商売を起こすユダヤ人が持つ根源的な力、それが「ユダヤ商法」の本質であるという。それを解き明かしたのが本書であると、著者のマーヴィン・トケイヤー氏は語る。現在の企業経営で重要となっているのは、「商売がグローバル化する中でのアイデンティティ」や、「異質な中で協調しながらも、独自性を貫くこと」と見ている。日本に10年ほど滞在した経験から、「日本人はこうした状況への対応が苦手」と分析し、新しい時代を模索する日本の企業経営に携わる人たちへの手掛かりとして読んでほしいという。

高庄氏:
 「どちらもマーケティングに関する知恵というか手法というか……。内容は当然それぞれ異なっているのですが、根本はどう自分を売るかといった答えを見いだせる点で共通する本かな。開発者の立場で顧客にソリューションを提供する際にも、自分自身を売ることが必要だと思っているのです。その場合、どう顧客に付加価値を提供するのか? といったことが非常に重要ではないでしょうか。自分の持っているパフォーマンスをどう最大限に引き出していくのかといったテーマに加え、自分自身のモチベーションの持ち方や、コミュニケーショの取り方といったものが学べますね

  経営者やSEの立場まで、広く情報を仕入れている3冊の雑誌

日経コンピュータ

日経BP社
隔週月曜発行
980円(税込み)

 

日経オープンシステム

日経BP社
毎月15日発行
1200円(税込み)

 

日経情報ストラテジー

日経BP社
毎月24日発行
1200円(税込み)

 

 『日経コンピュータ』は、業務でコンピュータやネットワークのシステム構築に携わる開発者、マネージャ、エンドユーザー向けの総合情報誌。汎用機やワークステーション、パソコン、そしてソフトウェアなどの市場動向や情報を提供している。現在コンピュータ業界が直面する問題点やトレンドをいち早く取り上げており、システムの構築・運用に関するユーザー事例や海外情報、最近では開発手法なども掲載されている。

 『日経オープンシステム』は、システム・エンジニア向け実践情報誌。本誌では、部門システムから基幹、企業間連携に至るさまざまな規模・用途の情報システム構築および運用に必要な情報を提供している。事例などを多く紹介し、さらに評価や検証結果も併せて行っている。読者が実際に遭遇したトラブルとその解決策を紹介するQ&Aなどが好評である。

 そして『日経情報ストラテジー』は、企業での意思決定を行う経営陣に対して、IT経営の実践的な情報発信を行っている。独自の現場取材を行い、経営側のビジョンに立った最新事例や業務改革のノウハウを多数紹介している。

高庄氏:
 「われわれが日々接する顧客は、情報システムのキーワードをよくご存じですし、いろいろな問題を投げ掛けてきます。そういった方々とコミュニケーションをしていくうえでも、新しい情報を常に仕入れておく必要があります。また、自分の視野を広げる意味でも多くの事例や戦略に目を通すよう心掛けています。この3冊でSE、そして経営者側の立場それぞれの情報、そしてコンピュータシステムの総合的な情報を網羅できると考えています

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