外資系コンサルタントのつぶやき 第1回
転職して戸惑うことは“企業文化”の違い
三宅信光
2001/6/27
ITエンジニアの転職先として人気のIT系コンサルタント。中でも外資系コンサルタントは、イメージや待遇などがいいためか人気がある。ブローシャ(会社案内)や転職雑誌を読むと、ついついきらびやかな世界をイメージしてしまう。しかし、本当の姿はどうなのか。外資系ITコンサルタント会社に転職したある現役コンサルタントに、これまでの経験や、転職してきたエンジニアについての本音を語る。
気づけば同期で自分だけが“生き残り” |
最初に簡単な自己紹介をさせてください。わたしは、ある外資系ITコンサルタント会社に転職して数年のコンサルタントです。業界では一応だれもが知っている会社です。現在30代後半、転職した当時すでに30歳を越えていました。そのため、入社時にはこの業界では決して若くない、というよりも、もう“お年寄り”の仲間入りをしていました。入社してすぐに携わったプロジェクトの中で、わたしより年上の人間は2人しかいませんでしたから。それも1人は社外の人、もう1人はそのプロジェクトの責任者。実働部隊では最高年齢だったわけです。入社時のポジションはプログラマーレベルでしたが、昨年一応管理職の仲間入りをしたところです。
入社時点でプログラマーということは、前職からバリバリとソースを書いていたのだろうと想像されるのでしょうが、実は前職はSEでもなんでもありません。まったく別の業界・業種から飛び込んできたのです。入社の動機もいい加減で、「プログラムを作ってみたい」という程度のものでした。ちなみに現在の会社の名前は、インターネットのホームページを見て、その場で応募するまで知らなかったのですから、本当によく入社できたものです。
同期で入社した中途採用の人間は、一緒に入社式に出席した者が十数人、年間では40人以上いましたが、その多くの人の前職はシステム関連でした。それを知ったとき、正直わたしは自分が生き残れるとは思いませんでした。なんせわたしの前職、ほとんどお役所のようなところで、そこで金融関連の仕事をしていただけ。よくぞ飛び込んだという感じです。
前職がシステム関連でなかったため、入社したときから劣等感に悩まされましたし、プロジェクトに配属されてからも毎日、「あと何日残っていられるかな?」と思いながら仕事をしていました。当時、わたしが朝出勤する姿を見た同僚に、「鬼のような顔をしていた」といわれたくらいです。さすがに半年たったころからはそこまで考えないようになりましたが、毎日の業務のほとんどは“初体験”で、ドキドキしながらの仕事、仕事、仕事。
しかし、これは笑える話なのですが、「プログラムを作りたい」ことが転職の動機だったのに、結局1度もプログラミングをせずにここまできてしまっています。いまでもやりたいのだけど、歳も歳だし、もうやらせてもらえないだろうなあと思います。
いまはどちらかといえば入社する人を評価する側になりましたし、中途採用者が多いビッグ・プロジェクト部隊にいるので、いろいろなタイプの中途採用者を見ています。うまく波に乗れた人、乗れなかった人……。
同時期に40人以上が入社した中で、まだ会社に残っているのはわたしを含めて3分の1程度。さらにわたしのポジションまでたどり着いている人は2、3人ぐらいでしょうか。最初から管理職のポジションで入社した人もいましたが、例外なくすでに在籍していません。いえることは、なぜか高いポジションで採用された人が、生き残る確率(生存率)は低いようです。
システム開発の知識、経験でいえば、わたしは圧倒的に不利だったはずです。知識、経験とも、ほぼ“0(ゼロ)”でしたから。ところが不思議と生き残っています。自分で書くのもどうかという気がしますが、わたしへの評価は、ほかのSE経験者の同期よりも高いことが多かったようです。わたし以外にもシステム関連以外の職から転職したケースはありますが、SE経験者などとの評価の差は、それほどなさそうでした。ただし、そうした人間が上のポジションで採用されるケースはありませんでしたが。もちろん、SE経験のある同期にも、わたしと同時期に管理職までたどり着いた人が何人かいましたが、たどり着いてすぐに辞めてしまいました。入社して半年ほどで辞めてしまうケースもよくあります。
入社したらすぐに問われる資質 |
あるプロジェクト開発が佳境に入ったころ(つまり地獄のような忙しさの中)、いまが“旬”で最も脂の乗り切っているSEの方(Aさん)が転職してきたことがありました。Aさんはまだ若く、20代の後半ぐらいだったと思います。体力もあれば十分なSE経験もあり、本人は自信を持って転職してきたようでした。
わたしがいたプロジェクトで小さなサブシステムを追加する案件があり、Aさんはその担当者としてわれわれのチームにやって来たのです。サブシステムの内容はかなり限られたもので、Aさんの経験を聞く限り、任せて問題がないとはたで見ていた私も思っていました。
しかし結論からいうと、その人は3カ月ほどで会社を辞めてしまいました。結局Aさんに任せたそのサブシステムは、別の人に担当してもらって完成させました。
当時は、わたしもプロジェクト全体を見渡す立場にはいなかったし、自分の抱えていた案件に追われていたため、なぜAさんが退職することになったのかわかりませんでした。しかし、後で振り返って考えたり、Aさんと同じチームにいた人の話から判断すると、Aさんは会社の中でどのように振る舞えばいいのかがわからず、おろおろしているうちに時間がたってしまい、その間に担当していた案件に結果を求められたため、一種のノイローゼになってしまったようです。
わたしもそうでしたが、Aさんも入社して1週間程度で現場に出されました。社内制度、あるいは人の考え方、さまざまなギャップをまったく埋められないまま、すぐに仕事を始めることになるわけです。入社する際に「わからないことがあったら何でも聞きなさい」といわれますが、前の会社だけしか経験がないと、まず何がわからないかさえわからない状態になります。だからこそ聞くことさえできない。これは想像以上のストレスです。わたしの場合は前職がITやSEとは無縁な職場だったため、ギャップが大きいことは当然だと思い、かえって何も考えずにみんなに合わせるようにしていましたが、ほかの転職者に聞いてみると、こうした会社の制度(風習?)には、みな大きなギャップを感じるようです。
会社の制度なんてどこでも同じようなものだと思うかもしれませんが、入社してみるとかなり違います。後は周りとのコミュニケーションの取り方次第。非常にポジティブな姿勢を求められ、ミーティングで一言も話さなかったりしたら、後でそれこそ“ぼろくそ”にいわれます。またいいところでもあるのですが、上司に対して思ったことをストレートにぶつけたりしますし、同僚同士でもそういう姿勢を求められます。
しかし一般の日本企業から来る(入社する)と、「こんなこといっていいのか」という調子でやり合うので、最初はたいがい面食らうわけです。早くそれに合わせることができればいいのですが、コミュニケーションスタイルなんてそう簡単には変わらないものです。そのため、これが意外と大きなハードルになります。これを乗り越えることができるかが、外資系コンサルタント会社の最初の関門なのですが、先ほどのAさんは、これを乗り越えることができなかったのでしょう。
転職先やキャリアアップ先として、わたしがいるような“外資系コンサルタント”会社が人気だと聞きました。でもわたしが見る限り、そんなにいい転職先とは思えない部分があるんです。入ってくる人の意識と、会社の意図、状況がマッチしてないようなことが多いためでしょうか。これから何回かにわたってわたしが感じている他の会社と外資系ITコンサルタントとのギャップ、SEに求められる資質とコンサルタントに求められる資質(SEの資質も必要なのですが)の違いなどについて、体験を絡めながらお話をしてみたいと考えています。
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