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外資系コンサルタントのつぶやき 第3回
出ないクイは捨てられる

三宅信光
2001/8/24

   けんかのような議論

  この連載の第1回目に、私が勤めている会社に転職した人の多くが感じることの1つとして、社内の人間がとてもストレートなもののいい方をすると紹介しました。今回は、その点をもう少し詳しく紹介したいと思います。

 もともと私のいる会社では、「いわれたらいい返す」ことが当たり前で、上司と部下の関係であろうとこれは変わりません。黙っているということは、いわれたことが正しいと認めたと思われるからです。このあたりの論理は、いかにも外資系企業だからかもしれません。

 社内で議論するときは、かなり激しい発言が飛び交います。まるでけんかをしているのではと思うぐらいです。しかし、けんかのように見える議論であっても、後々引きずることはありません。その場できっぱりと終わります。プロジェクトベースでの仕事が多いためか、感情的なしこりを残すことは少ないようです。また、きちんと筋が通ったことをいうのであれば、発言が上司の評価に影響することもないようです。一般の社員が社長に抗議のメールを送ることもよくあることです(実際、社長あての抗議メールがCCで送付されてきたことが何度もあります)。しかし、その行為によって評価が悪くなったとは聞いたことがありません。ただし、抗議の内容がくだらなければ、“あの程度の者か”と見られることになりますが。つまり、発言や抗議に対する評価はあくまで内容次第です。

   取締役にも直言して論争を

 私が所属していたプロジェクトのサブシステムがカットオーバーしたときのことです。担当取締役クラスの人が、そのサブシステムを担当していたメンバーに“おめでとうメール”を送りました。そのサブシステムは、ご多分に漏れずかなり難航しました。それをメンバー全員の頑張りによってカットオーバーにこぎ付けたのは事実です。取締役のメールには「このシステムはこれまで自分が見た中でも非常に良くできた」というようなメッセージが含まれていました。確かによく頑張ってシステムのカットオーバーにこぎ付けたのですが、当初の計画よりもシステムをだいぶ縮小した結果であり、クライアントには評判の良いものではありませんでした。

 このメールがメンバーに送られてすぐに、あるメンバー(取締役の部下)が、「何をいっているのだ。クライアントは満足していない。こんなシステムを作っておいてあんなメールを出すとはどういうことだ。あなたはリーダーとしての自覚がないのか!」という内容のメールを取締役あてに返信しました。しかもサブシステムのメンバー全員にもCCで送信したため、メンバー全員がそのメールを受け取ったのです。その後強烈なやりとりがしばらく続きました。私はそのサブシステムの担当ではなかったので、後からメールを見せてもらいましたが……。これは私の判断ですが、ほかの会社であれば取締役にメールを送った社員は左遷されていたかもしれないような内容でした。しかし、彼に対しての会社から処分は何もありませんでした。むしろ取締役が議論に負けたため、そのような取締役で大丈夫なのかという印象をプロジェクトメンバーに持たれたようです。

   さらに強硬な生え抜き社員

 新卒からのいわゆる“生え抜き組”の社員は、上司が頼りない、話が分からないと判断した場合、さらに過激な行動に出ることがあります。その上司の上司にあたる役職者に直談判して、「あいつを代えてくれ」と訴えるのです。もちろん、これもそれなりの理由がなければ通りませんが、実際に代えられたケースもあるのです。

 私が入社して2年目のころ、若手の生え抜き社員がスーパーバイザーの指示に納得ができないといって、当時のプロジェクトマネージャにスーパーバイザーの“交代”を直接要請したことがありました。問題となったスーパーバイザーは、非常に優秀な人だったのですが、彼には1つだけ問題があったのです。それは“できるやつだけが分かればよい”というような指示の与え方をしていたことです。とはいえ、こうした指示の与え方は、私の会社では、別に珍しいことではありません。しかし、その“できるやつ”が納得できないと反旗を翻したのです。結局、スーパーバイザーが交代されるまで騒ぎは収まりませんでした。

 連載の第1回目に、私は「なぜか高いポジションで採用された人が、生き残る確率(生存率)は低いようです」と書きましたが、その理由はこんなところにもあるのです。転職組の上司がこのようなことに直面すれば、そう簡単には対応できないはずです。しかし、自分に対する不当な評価を部下から自分の上司に直接いわれた場合に、自分の正当性を強く主張できないようでは、あっさり「ああ、ダメな人だな」といわれ、そのポジションを維持することなどできないのです。

 攻撃的な話し方や交渉方法は、自分をアピールする手段の1つです。普通の会社では“出るクイは打たれる”ようですが、私がいる会社では“出ないクイは捨てられる”のです。だからみんな自分の存在をアピールするためにも、強い話し方をしているのだと思います。しかし、社会人になってからずっとそうした文化で育ってきた人間(生え抜き社員)に負けない話し方ができる人は、ほかの会社にはそれほどいないのかもしれません。

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