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連載:転職で失敗する人、ダメな人
第2回
最先端ソフトウェアエンジニアへの転身に失敗

内田靖
2001/9/12

人材コンサルタント会社に勤めている筆者が、実際に出合った事例や過去に勤めていた会社での経験を交えて、転職で失敗するエンジニアはどんな人かを毎回紹介していく。これから転職を考えているエンジニアに、転職に失敗しないために気を付けるべきことや注意すべきことを、“転職で失敗したケース”から学んでほしい。

   先端を追いインターネット系ソフトウェアエンジニアに

 今回は、ファームウェア/パッケージ系の技術エンジニアからインターネット系ソフトウェア開発のマネジメント兼エンジニアへの転職に失敗したA氏のケースを紹介しよう。

 最初にA氏の経歴を紹介する。A氏は、40歳になる有名なエンジニアだった。彼は国立大学卒業後、日本の大手コンピュータメーカーに就職し、COBOLやメーカーの独自言語を中心とした金融オンラインシステム開発に4〜5年従事した。その後、アセンブラを利用したラップトップPCの基本ソフトウェアの開発を2年ほど経験した。

 しかし、A氏はこのころから日本のメーカーが自分の発想をなかなか聞き入れてくれないことや、会社の開発環境に満足できず、自由な社風と成果主義をウリにしている有名な外資系パッケージソフト会社に転職した。A氏はそこでPC用ビジネスパッケージソフトの開発に9年間携わった。が、9年間にITのビジネスの中心は、次第にアプリケーションパッケージビジネスからインターネット系ビジネスへと変化していた。このとき、A氏はJavaなどを利用するインターネット関連会社に転職しなければ、自分自身のスキルが陳腐化すると判断し、私がいた人材紹介会社に相談に訪れた。

   求めるスキルと持っているスキルとのギャップ

 私がA氏と面接した結果、これまでのスキルや年収を考慮すると、すでに成功しているインターネット系の会社への転職は、条件面から難しいと判断した。そのため、スキル面である程度許容範囲を広く設定していた創業間もないベンチャー企業から転職先を探した。その結果、A氏はあるインターネットベンチャー企業B社に自分のキャリアやスキルをうまくアピールでき、転職に成功した。

 しかしB社は、自社の求める人材像とA氏の持つキャリアとスキルが合致して採用したわけではない。B社は、そもそも次のような“必要な知識と経験”と“歓迎する(あれば尚可の)知識と経験”を有する人材を募集していた。

必要な知識と経験
・C、C++、XML、Java、UNIX、Windows NT環境での開発経験
・大規模システムの開発および5年以上の集中したプログラム経験
・単独やチーム体制での開発経験

歓迎する知識と経験
・大規模トランザクションに耐え得るシステム設計の経験
・XML、Javaを利用したデータベースのシステム設計、開発経験

 A氏は、インターネットベンチャー企業に転職する当たり、自分のスキルと企業との間に、スキルギャップがあることを認識していた。A氏のこれまでのスキルは、COBOLやアセンブラ、C、C++などの言語が中心であった。それに対して、求められるスキルは、UNIXやJava、XMLなどの技術であった。そのためA氏は、個人的にWebページを作成しながらWebの開発環境やJava、XMLなどを学び、企業とのインタビューでもこのことを積極的に訴えた。B社はこうした努力を認め、A氏に内定を出した。

 つまり、A氏はある程度努力をすればスキルの修得ができると安易に考え、さらにメジャー(大手や有名)な企業で働いていた経験から大概のことはクリアできるものと心に油断があったようだ。さらに採用した側であるB社も、これまでのプログラミングやプロジェクト経験から考え、少しの時間で開発環境や技術にも慣れるだろうと安易に考えていたようである。

 B社は、A氏にトレーニングをする時間の余裕がなかった。それは、某大手企業との共同開発が予定より大幅に遅れていたという事情があったためだ。そのため、B社はA氏にそのプロジェクトを推進させながら、スキルの修得をしてもらおうと判断した。A氏は勉強しながら実際のプロジェクトを押し進める必要があったが、スケジュールどおりにプロジェクトが進まず、ストレスがたまる一方だった。また、技術だけではなく、クライアントとの折衝窓口を担当し、部下への指示などを出す必要もあった。こうしたいくつものストレスから、次第に現状を打破しようという強い意志と努力を放棄してしまい、会社に業務量を減らしてほしいと要求してしまった。その後、会社との関係もぎくしゃくしてしまい、2カ月ほどでA氏は退職した。

   スキルは早く確実に覚えることが重要

 退職後、再度私はA氏と面談した。A氏はいままでの経験や知識があれば、新しい技術なども容易に理解できるだろうと思い込んでいたこと、自分では努力しているつもりだったが、いままでのプライドが邪魔をして努力しなかったことが、転職に失敗した原因だと、冷静に自己分析した。

 自分は過去に“一流の会社”でプロジェクトをやっていたため、新天地でも問題ないだろうという過信は禁物である。特に現在は過去に比べてテクノロジサイクルが短く、それに応じてビジネスサイクルも短い。そのため、自分にないスキルを学ぶ場合、早く確実に、そして深く極めることが大事になる。また、ある程度の年齢であれば、スキルだけを極めればいいというものでもない。スキルよりも大切なことは、置かれている現状を的確に判断して行動することである。

連載:転職で失敗する人、ダメな人

 

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