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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.8<2002年8月版
2002年上半期の転職市場のキーワードは“勝ち組”

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2002/8/30

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

採用活動が活発なのは“勝ち組”企業

 先月のレポートでは、企業の採用活動が活発化するも、米国の経済動向などの不安材料があるとしていたが、その後の転職市場はどうやら引き続き堅調のようだ。「いままでは『いい人材がいれば』といっていた企業が『具体的に○人採用したい』と、具体的な数値を挙げるようになってきました」(某人材紹介会社)

 ただし、さすがに8月は小休止の状態らしい。「8月は求職者側の転職活動が不活発になるので、人事担当としても、上半期の採用活動の総括をして、下半期の作戦を練ったり、来年度の新卒採用を計画したりと、いわば仕込みの期間になります」と、某人材紹介会社に教えられた。年度の折り返しまでまだ1カ月あるが、このレポートでも2002年度上半期の求人トレンドの総括をしてみたい。

 2002年3月版のレポートでは「転職市場、ついに回復基調へ!」と題し、昨年度下半期から下落傾向にあったITエンジニアの求人トレンドが、ようやく上向きになってきたことを報告したが、2002年度になっても順調な回復をみせ、7月には募集職種にも広がりが見えてきた。しかし、IT業界すべてが中途採用に意欲的になっているわけではない。この不況期を乗り切り、次世代に向けた先行投資のできる企業、いわゆる“勝ち組”企業が、積極的に必要な人材の確保に動いているのだ。

 その”勝ち組”企業が求める人材は、プロジェクトマネージャやコンサルタントなど、ハイスペックな即戦力が中心だ。「技術スキルを持っているだけではいまは簡単に採用されません。特定の業界の業務知識と経験、さらにヒューマンスキルの部分で勝敗がつきます」(2002年4月版)というように、技術スキルは持っていて当たり前で、それ以外の要素で採用不採用が決まっている。特にコンサルタントの採用では、業務知識とヒューマンスキルさえあれば、技術スキルは採用後に教育する、という企業さえあるという。

若年層には余剰感。続くプロジェクトマネージャ不足

 2年ほど前のITバブルのころは、エンジニアであれば経験年数が少なくてもいい、さらにはエンジニアでなくても、エンジニアになりたい未経験者でも可という企業が少なからずあった。しかし、現在は「経験年数の短いエンジニアの求人は厳しい状況です。特に開発系の若年層には余剰感があります」(2002年2月版)という。求人トレンドが上向いてきた7月でさえ、「中堅で勝ち組のシステムインテグレータ(SI)の採用意欲が特に盛んです。しかもそれほど高い要求レベルでもない求人もあります。そのような求人はあっという間に決まってしまう状況です。とはいえ第2新卒クラスの求人はなく、28〜32歳くらいの経験年数5年以上が中心です」(2002年7月版)とのことだ。

 余剰感さえある若年層に対し、不足状態が続いているのがプロジェクトマネージャクラス。「求人企業からすると悲鳴に近いですね。プロジェクトマネージャさえいれば受注できる案件が何件もあるそうです」(2002年3月版)というように、プロジェクトマネージャの有無が売り上げを大きく左右する現状がうかがえる。

 その間比較的好調だったネットワークエンジニアだが、8月のヒアリングでは「いま求人が多いのは、運用管理レベルではなく、要件定義・設計・構築ができるネットワークエンジニアです。さらに需要が高いのは、セキュリティスキル。セキュリティポリシーの策定、不正侵入防止、脆弱性の改善などができるセキュリティ・マネージャならいくら払ってもいい、という企業もあります」(某人材紹介会社)という話を聞いた。ネットワークエンジニアについても徐々に求められるレベルが上昇しているらしい。

 採用活動を活発化しているのが“勝ち組”企業ならば、求められる人材はプロジェクトマネージャやコンサルタント、分析設計担当と、こちらもいわば“勝ち組”エンジニア。これがいまのITエンジニア転職市場の中心をなしているようだ。今後、この動向が変化するとすれば、IT需要が大きく変化するときだろうが、果たしてそのIT好景気が再来するのかどうか……。

まずはいまの会社でスキルアップを

 “勝ち組”エンジニアになるためには、どうしたらよいのだろうか? 人材紹介会社リーベルの代表取締役 石川隆夫氏はエンジニア出身者として、次のようにアドバイスしてくれた。「エンジニアとして上を目指すのであれば、技術スキルはもちろんのこと、業務知識とコミュニケーションスキル(交渉力)を身に付けるよう意識してください。もし担当業務でそれらのスキルを身に付けることができないのであれば、社内で異動を試みてはいかがでしょう」

 「異動が認められない場合でもあきらめずに、行きたい部署に関連した分野をコツコツと勉強することです。見ている人は見てくれているものです。いずれ希望がかなうことがあります。実は、私自身もそうでした。勉強を持続させるためのモチベーションは、“やりたい仕事の担当にきっとなれる”と希望を持つことです」(石川氏)

 石川氏は、社内での異動が困難だったり、勤務している会社では業務知識とコミュニケーションスキルを身に付ける機会がなかったりしたときに初めて、転職を考えるようにし、安易な転職をいさめている。筆者の担当している@ITジョブエージェントを使って転職をしたエンジニアも、転職以外の選択肢があったのではないかと、過去の転職について振り返っている(「転職を繰り返し、ようやく見えたキャリアの光明」)。

派遣は底割れ感

 春先からの低迷状態を脱せず、低水準で推移しているITエンジニア派遣業界だが、8月は一段と悪化したようだ。某人材派遣会社は、「毎年8月は落ち込むというわけではありません。これまでUNIXの運用管理ネットワークエンジニアは安定して需要がありましたが、いまはそれもありません。ネットワーク系では、要件定義や設計など上流工程のできるエンジニアへの需要がある程度です」という。

 今年度当初、ITエンジニア派遣業界では、証券業界、生保・損保、地銀・信用金庫関連の大型案件が増えると期待されていた。これら業界の案件が動き出せば大量に人員が必要となり、ITエンジニア派遣業界も活性化するからだという。しかし、これら関連の案件の動きは小幅で、某人材派遣会社では「下半期は本格化を、と期待していますがどうなるか分かりません」と悲観的だ。

 人材派遣業界歴の長い某人材派遣会社の営業担当は、10年前のバブル崩壊時よりいまの方が悪いという。「当時は、全体が落ち込んだといっても、立ち上がり始めた携帯電話業界など、いくつか調子のいい業界があり、そこからの受注で何とか持ちこたえられました。しかし、現在はいい業界は1つもない。たまにある案件は高い金融知識など業務知識が必須と要求レベルが高く、なかなかマッチングしないものばかりです」

 海外エンジニアの派遣、育成型派遣、紹介業への進出、派遣業から受注業への転進など試行錯誤が繰り返されるITエンジニア派遣業界だが、当面は厳しい状態が続きそうだ。

■取材協力企業(50音順)
アクシスウェブジャパン
テクノブレーン
パソナテック
リーディング・エッジ社
リーベル
 筆者の担当している@ITジョブエージェントは、登録することによって、無料で人材紹介会社のキャリア相談やキャリア査定を受けることができる、ITエンジニアのためのキャリア支援サービスです。転職を予定していない方でも、キャリアプランの参考にご活用ください。

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