エンジニアが語るリレーエッセイ
エンジニアに資格は必要か?
第9回 資格は自分に自信を与えるもの

瀧澤マサカズ
2002/6/14

毎回さまざまな分野のエンジニアに、「エンジニアに資格は必要か?」をテーマに、自身の実体験などを織り交ぜて語っていただく。エンジニアの“生”の声を紹介する月刊リレーエッセイ。今回は、元プログラマという経歴を持つCGデザイナーが、自らの体験を振り返り、自身の資格への考えを紹介する。

学校時代の資格の思い出

 皆さんは普段、テレビゲームをすることがありますか? 5、6年前からゲームの映像表現力が飛躍的に向上しているのですが、自分はその映像部分を作成するCGデザイナーです。エンターテインメント業界のため、エンジニアというよりはクリエーターという側面が強いのですが、ただ絵が描けるだけではダメです。コンピュータを扱っている以上、PCやツールの知識、出力先のハードウェアのスペックを把握するなど、エンジニア的な部分なくしてゲームのグラフィックスの仕事はできないのです。

 デザインの仕事をする前は、工場などに納める計算機のプログラマでした。それ以前は“情報処理系”の専門学校に通っていました。当時はバブル経済の真っただ中でした。まだITという言葉はなく、プログラマやSEという言葉は知っていても、仕事の内容はよく分かっておらず、学校にいわれるがままに情報処理系の資格試験の勉強をしたことを覚えています。いまの学校はどのようになっているのか分かりませんが、自分の学生時代は、「とにかく資格を取りなさい。将来必ず役に立つときがきます」という学校方針の下、授業を受けていました。

 いまにして思えば学校側も、「○○試験合格率XX%」みたいな看板を守るために、そうした方針を前面に出していた部分もあったのでしょう。しかし自分にも、資格さえ持っていればとりあえず何とかなるだろうという、漠然とした甘い考えがあったのです。いま思うと社会全体も危機感が薄かった、そんな時代だったように思います。

CGデザイナーの資格は

 プログラマとしての資格の必要性について現在の自分では語れませんが、デザイナー、もっと厳密にいうとゲームのCGデザイナーに資格が必要か、ということを話したいと思います。

 CGやデザインの資格試験は、ここ数年増えているのですが、ゲームのCGデザイナー特有の資格試験は、自分が知る限り存在しないと思います。強いて挙げれば、CG検定や色彩検定がそれに当てはまるかもしれません。しかし、現実にそれらの資格が必要かといえば、まったく必要ありません。資格を持っているから、良い会社に入ったとか、良い仕事をしているといったことは、聞いたことがありませんし、自分もそういった資格は持っていませんが、仕事で困ったり不当に評価されたりしたことはありません。

 では、資格以外のどこが評価の対象になるのでしょうか。それは、いままでどのような作品を作ってきたか、その作品のどのパートに携わったかという、キャリアの部分が重要視されます。もちろん、だれでも最初からキャリアがあるわけではありませんし、最近のゲームは大勢で制作するため、それをすべて1人で経験することはありません。そういった経験をするためには、いかに自分の身を良い環境に置くかが重要であり、それがとても難しい点になります。近ごろはどの業界でもそうかもしれませんが、ゲーム業界は新卒や異業種からの転職者に割と厳しい傾向があります。

資格が結うようなこともある?

 ただし、自分は資格がまったく無意味だとは思っていません。自分が勤務している会社には、何通もの履歴書が送られてきますが、そのほとんどは未経験者からのものです。もちろん、採用するかどうかは経営者や採用担当者が決定します。しかし、自分はデザイナーとしての意見をいうことがあり、履歴書などに目を通す機会があります。実はそのときに履歴書の資格欄に目がいくのです。そして、資格がある方を評価することがあるのです。

 資格欄に何も書かれていない人と資格を持っている人との評価の違いは、「その資格を取得するために時間を費やし努力をした」というポイントだと考えています。資格の種類や難易度にもよると思いますが、資格を取得するために、何らかの労力を費やしたという部分に関しては評価に値することだと思うのです。ただし、資格のある・なしで合否が左右されるようなことはまずないでしょう。資格を持っているのは、100点満点の点数配分でいえば、そのうちのほんの数点でしかありません。その意味では「資格は必要ない」ともいえます。

 プロになり(社会人になり)、日々の業務に追われていると、どうしても必要に迫られないと新しい分野の勉強をしなかったり、基本的な部分をおろそかにしてしまうこともあると思います。そこで業務とは別に、自らが目標を設定して努力(自己啓発的な努力)することは、時には必要ではないかと思うのです。その目標設定の選択肢の1つとして、資格試験というものがあるととらえると、資格はまったく無意味ともいえないと思います。

 だれのためにとか、評価のためにとかではなく、自分のために資格を取得する。そういった心構えが大切なのではないかと思えるのです。

筆者紹介
瀧澤マサカズゲームメーカーに勤務。某有名ガンシューティングゲームや某有名レースゲームのグラフィックスデザインを担当。プログラマとしての経験を生かしつつ、毎日グラフィックスデザインを修業しているという。大の歴史(戦国時代)好きでもある。

「リレーエッセイ エンジニアに資格は必要か?」



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