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第3回 「資格手当」で給料はいくらアップする!?

Tech総研

2004/7/16

エンジニアに関心の高いIT系資格。会社によっては、「資格手当」や「報奨金」制度などを整備しているところもある。その制度をうまく活用すれば、年収ベースで数十万円のアップが可能になるのだ。そこで、「資格手当」や「報奨金」の相場を調査してみた。資格取得により、あなたの会社ではいくら給料がアップするだろうか?(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)。

  「資格手当」や「報奨金制度」で
年収アップを目指す!

 損保ジャパン・ディー・アイ・ワイ生命保険株式会社が、このほど明らかにした「夏のボーナスの実態と暮らし向き調査」によると、今夏のボーナスが昨夏に比べ「増えた」と答えた人は38.4%と、「減った」(27.6%)と答えた人を若干上回ったという。

 とはいえ、バブル崩壊、平成大不況を経験した日本企業は財務リストラの手を緩めておらず、ボーナスアップといっても、その額は“スズメの涙”程度という人も少なくないようだ。

 サラリーマンにとって、まとまったお金が手に入る数少ない機会であるボーナス。その上昇がそれほど見込めない中、ほかに収入源を求める動きは今後も加速していくことだろう。その1つとして「副業」があるが、副業の場合、それなりの金額を稼ごうと思えば、かなりの時間を割かなければならないのも事実だ。従って、副業をうまく回していける人は、ある程度時間的自由の利く人に限られてくる。

 これに対し、正規の労働以外に一切時間をとられることなく、毎月自動的にまとまったお金が入ってくるのが、「資格手当」だ。IT系の企業では、ベンダ資格を取得したエンジニアに対して、月額5000〜1万円程度の資格手当を支給しているところが少なくない。

 こうした資格手当は、資格ごとに支給されるケースが多く、例えばマイクロソフト、シスコ、オラクル、サンと、違う種類のベンダ資格を4つ持っているとして、1つの資格につき月1万円が支給されれば、「月4万円」も給料が増えることになる。年間にすれば48万円、ボーナスにも引けをとらない金額になってくる。

 もっとも、企業が資格手当を支給してまで資格取得を奨励するのは、エンジニアがその資格を取ることで、企業にメリットがあるからにほかならない。従って、例えばベンダ資格であれば、上位ランクの資格取得が資格手当の支給要件となるのが一般的だ。

 資格手当とは別に“臨時収入”を得る手段が、「報奨金制度」の活用だ。報奨金制度というと、常にノルマに追われる営業系の職種でなじみ深いが、例えばエンジニアでも、新たな業務スキームを開発したことに対して、数万円〜10万円程度の報奨金を支給している企業もある。また、企業の指定する資格を取得した場合、毎月資格手当を支給することまではしないものの、一時金として数万円の報奨金が支払われるケースも多いようだ。

 もちろん、資格手当や報奨金を得るにはそれなりの努力が求められる。要するに、資格手当を得るために頑張って勉強した過程で自然とスキルアップが図られているのであり、これが将来の転職の武器になる可能性は十分にある。会社に資格手当や報奨金制度があるエンジニアは、それらを活用しない手はないだろう。

  資格手当、報奨金制度の
ある会社は41%

 帰宅後や休日に資格の勉強をする技術者は少なくない。社内での評価アップ、転職に有利、さらには資格手当のような形で金銭的なインセンティブを得られるから、というのも目的の1つだろう。そこで、Tech総研ではソフトウェア系技術者997人を対象に「資格手当」に関するアンケート調査を行った。

 資格手当と一口にいっても、大きく分けると、毎月一定の金額が基本給以外に支払われる純粋の意味での「資格手当」と、資格取得の際に金一封のように一時的に支払われる「合格報奨金」の2つがある。今回の調査の結果、「資格手当」「合格報奨金」が何らかの形で支給されている人は全体の41%ということだった(図1参照)。

図1 資格取得時の“金一封”的な「合格報奨金」の方が資格手当よりも浸透している

 賃金問題に詳しい労務行政研究所が2001年に行った企業調査によれば、資格手当を制度化している企業は、約4分の1の企業にすぎない。ただ、月額の資格手当がなくても、合格祝い金、奨励金などの名目で合格時に一時金を支給する企業は少なくない。これらを広く資格取得費用の援助としてとらえれば、約半数の企業がそうした制度を設けていることになる。今回のアンケート調査でもおおよそこの傾向を裏付ける結果となった。

  高レベル国家資格で
平均月額2万円強

 さらに、Tech総研編集部では、資格手当が出ていると回答したソフトウェア系技術職100人にさらに追加アンケートを実施。当然ながら資格のレベル、難易度、重要度によって、資格手当の額は変わってくる(図2参照)。高額なのは「システムアナリスト」「システム監査」「プロジェクトマネージャ」などのコンピュータ・エンジニア向けの国家資格。ただこれも会社によってばらつきがあり、「システムアナリスト」の場合、月額5万円ももらっている人がいるかと思えば、3000円という人もいる。

図2 支給額を見ると、資格によってかなりばらつきのあることが分かる。総じて、ベンダ資格よりも国家資格の方が高いようだ

 最頻値は5000円で、平均すると2万1000円といったところだ。平均値でみると上記の高レベルの国家資格が2万円台の大台に乗っているのに対し、いわゆるベンダ資格はそれに満たないという傾向がある。

 合格報奨金についても同様の傾向がみられる。なかにはシステムアナリストを取ったら80万円の報奨金が出た、という人もいるが、これは例外というべきだろう。システムアナリストの場合の平均合格報奨金は12万円程度。もちろんそれでもかなりの高額であることは間違いない。しかし、教材を買い集め、寝る間も惜しんで勉強した努力に見合う金額であるかどうかは、まさに人によるだろう。

  現状に不満を持つ
エンジニアが約半分も

 エンジニアたちは、こうした資格手当の支給状況をどう思っているのだろうか。全体傾向としては「やや不満」から「かなり不満」層が多い(図3参照)。不満の中で目立つのは、「以前は資格手当で支給されていたが、いまは一時金だけとなり、しかも減額された」というもの。本給以外の月額手当にあたる部分を次第に削減していこうという、近年の企業の賃金政策がうかがわれる。

図3 半分近くの人が不満。その背景には制度の廃止や減額などがある

 「資格手当がゼロで、合格報奨金が安すぎる。そのうえ資格受験が半強制で受験費用も実費」(27歳・パッケージソフト開発)という悲惨な実態も明らかになった。もちろん現状に満足しているエンジニアもいなくはない。ただ「手当が出るだけでよいと思う」という“ないよりはマシ”的な意見が多いのが気になるところだ。

 いずれにしても、賃金制度変革の全体の流れとしては、資格手当は住宅手当などとともに、今後見直しや廃止の傾向が強まるといえるだろう。そもそも、資格は実務に生かし、仕事の効率や業績に反映して初めて意味を持つもの。つまり本来ならば、資格の有無にかかわらず、エンジニアが高い能力や業績を示せば、それに伴う評価は得られるはずである。

 むろん現在の人事評価制度がうまく機能していないことも事実。「手当が少ないのなら、仕事全体で評価してもらおう」という意気込みが、これからはさらに必要になってくるというところだろうか。

☆エンジニアを大事にする会社かどうかの証拠になる
 ここまで資格手当や報奨金制度について見てきたが、「ウチの会社にはそんな気の利いたものはない」と嘆く人も少なくないことだろう。特に中小ベンチャーがひしめくIT業界では、こうした制度があること自体、かなり恵まれているといっていい。

 しかし、こうした制度があるかないかは、ただ単に「会社が大きいか小さいか」だけの問題ではない。実際、規模の小さい会社や新興ベンチャーでもこれらの制度を用意しているところは、結構見当たるものだ。確かに、制度を整備できるかどうかは会社の財政状態によるところも大きいが、それ以上に会社の経営姿勢を反映していることが多い。

 
会社が資格制度や報奨金制度によってエンジニアの努力を促しているということは、経営者がエンジニアのモチベーション維持に気を配っている証拠でもある。別の表現をすれば、エンジニア1人1人のスキルの重要性を理解しているといえる。要するに、「エンジニアを大事にしている」ことの証であることが多いのだ。

 
従って、今後転職を考えている人は、転職をしようとしている会社に資格制度や報奨金制度があるかどうかを是非チェックしてみよう。また、もし知人にその会社の現役のエンジニアがいれば、金額もチェックしてみたい。

 
というのは、より多くの金額を支給している資格こそ、その会社が価値を認めている資格であり、裏を返せば、その資格を取得すれば、その会社に転職できる可能性が高いからだ。また、転職に成功すれば、入社と同時に資格手当が支給されるので、実際の年収が、転職時に提示されていた金額よりも数十万多くなることもあり得る。

 ただし、資格手当や報奨金だけを目当てに資格取得に走るのは考えもの。いくら資格を取っても、その分野のバックグランドがまったくなければ大して評価されない可能性もある。また、IT系資格の将来性にも十分に注意したい。苦労して資格を取ったものの、既に資格の価値が失せていて、企業も資格手当の支給を止めていたなどということになれば、それこそ、資格取得の苦労も単なる無駄骨になる。

 これから取得を目指そうという資格を選ぶ際には、自分のキャリアとの関連性、そして資格自体の将来性をよく見極めておく必要があるだろう。
                                (ライター 中村京介)

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