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第5回 若手エンジニアが激白 上司が情けなくなった瞬間

Tech総研
2004/9/29

「おいおい、何だよ」と上司の言動に意気消沈した経験は誰でもあるだろう。今回の激白にあるエピソードでは、どの上司の「トホホ度」も劣悪だ。「こんな上司にはなりたくない」と反面教師にするもよし、「自分はまだマシだ」と癒しや励みにするもよし、「自分の上司はもっとひどいが耐えている」と自分を褒めたたえるもよし(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)。

 上司の言動に思わず“情けない”と感じた瞬間はないだろうか。20代後半のエンジニア100人に、自分の上司の言動に対して思わず“情けない”と感じたときのエピソードについて聞いてみた。その気になる内容は……。

  その1
厳選! 実際にあった「上司の情けない瞬間」

 ここで、アンケート結果を基に上司の情けない瞬間を5つのパターンに分類した。5つのパターンにおける、上司の決定的な情けない瞬間を実話に基づいて記す。

ケース1 責任放棄する上司に情けない(29歳・システム開発)

エピソード

 顧客のシステムでのトラブル発生時の話。ちょうど仕事も片づいた午後6時半を過ぎたときのこと。そろそろ上がろうとして机の上を整理し始めたところ、1本の電話が鳴ったのです。出てみるとお得意さまのA社からで、システム上でのトラブルに至急対応してほしいとの要望でした。さほど難しいトラブルではなかったので私だけで事足りたのですが、業務報告の意味もあり、課長に連絡を入れました。電話に出た課長はなぜかご機嫌です。よく聞くと周囲は騒がしく、居酒屋で出来上がっているのです。状況を説明する私に対して課長は信じられないひと言を……。

上司のひと言

そんなことは任せるよ。こっちは酒の席なんだから気を利かせろよ。

その後

 課長は以後、部下から無責任な上司というレッテルを貼られてしまい、信用がなくなってしまいました。そのうえ、信用を失ってしまった現在もそのことに気が付いていないようです。

ほかにもこんな「情けない」発言が……
「会社のシステムだから仕方ない」(25歳・システム開発)
「この件はほかの人に任せてるから詳細はよく分からないんだよ」(26歳・運用)


ケース2 仕事がまるでできない上司に情けない(27歳・ネットワーク設計)

エピソード

 エンジニアのスキルを判断する材料にネットワーク構成の理解が1つのポイントになってくると思うのですが、私の上司は自分が間違えて指導しているにもかかわらず、その部分を間違えるとそのことに対して烈火のごとく怒るのです。そもそも、自分が間違えて指導したことなのに理不尽な理由づけで怒鳴るので、思わず「あなたが間違えて教えたせいじゃないか」と激しく抗議しました。

上司のひと言

 なんで俺が責められなくちゃいけないんだ? そんなにいじめるなよ。

その後……

 結局上司は部下から間違いを指摘をされて、泣き言を吐き、さらには泣きだしてしまう始末でした。

ほかにもこんな「情けない」発言が……
「だって具合悪いんだもん」(28歳・制御設計)
「やらなきゃいけないんだけどねー。へへへっ」(28歳・運用・保守)


ケース3 身勝手な振る舞いをする上司に情けない(29歳・社内情報システム)

エピソード

 社内で人事異動があり、私がそこの部署のシステム構築を引き継いだときの話です。当然、クライアントとの契約書や仕様書があるので、上司にその確認を願い出ました。実際問題として、その確認を怠ったがために契約内容と違ったシステムを作る可能性もありますし、最悪は契約破棄にもなりかねないからです。私としては最低限のことを確認しようとしたにもかかわらず、彼はこんなひと言を……。

上司のひと言

 契約書や仕様書をいちいち確認していたら、そのとおりに作らなきゃならないだろ!!

その後……

 上司の半ば逆切れ状態の発言を聞いて、何もいえなくなってしまいました。

ほかにもこんな「情けない」発言が……
「お前がもっとしつこく俺に頼めば遅れることはなかった」(28歳・半導体設計)
「私はお前よりも長く生きてるんだから、お前の考えより私の考えが正しい」(26歳・研究開発)


ケース4 部下に対して冷酷非情な上司に情けない(26歳・システム開発)

エピソード

 エンジニアという仕事をしていると、納期厳守が大前提になると思うのですが、大変であればあるだけチームが一丸になる必要があると思うのです。それでも納期前、時間が押し迫ってきたら終電まで残業をしたり、時には会社に泊まりこんでの徹夜作業だってあることはエンジニアの方なら誰でも経験なさっているのではないでしょうか。そんな折、わが上司殿は残業や徹夜を続けている私たちに向かってこんなことをいってしまうのです。

上司のひと言

 また残業するの? 俺は先に帰るよ。

その後……

 この上司は叱咤(しった)はするけど激励はしないタイプなので、結果的に私を含め、部下のモチベーションは下がる一方に。意見をする気を失ってしまった私はその後、この上司と距離を置くようにしました。

ほかにもこんな「情けない」発言が……
「なんで残業しないんだ?」(27歳・回路システム設計)
「スキルがないくせに文句をいうな」(28歳・制御設計)


ケース5 顧客対応であたふたする上司に情けない(28歳・運用保守)

エピソード

 どんなシステムでも人間がプログラムしたものですから完ぺきなどということはなかなかあり得ないでしょう。だからこそ、エラーやクレームに対していかに迅速に正確な修正と対応をするかが顧客に対しての誠意であり、エンジニアの本来備えていなくてはならないことだと思うのです。が、私の上司はクレーム処理を適当に済ませようとすることがあるのです。先日もメールシステム関連でトラブルが発生しました。電話で対応していた上司は、あることないことを話し、適当にその場を取り繕おうとしていました。ところが顧客はそんな対応には納得せず、論理的に上司を責め始めました。

上司のひと言

 (無言……。)顧客に詰め寄られてあえなく撃沈。

その後……

 この後、私が電話で対応する羽目に。上司の場にそぐわない対応に対して顧客サイドは怒り心頭だったので、先方に納得していただくのにかなり苦労しました。あまりにも情けないのでその後は、その上司をまったく相手にしなくなりました。

ほかにもこんな「情けない」発言が……
抗議したことに反論もできず、ただ聞くだけで結論も出なかった(29歳・生産技術)。
問い詰めたら、トイレに行くなどといって離席したまま戻らなかった(28歳・システム開発)。


  その2
上司の情けない言動が部下に及ぼす悪影響とは

 今回のアンケート結果から次のようなことが分かってきた。情けない瞬間に遭遇した際、実に41%の人が抗議をするなどの何らかのアクションを起こしている(図1参照)。また、無視をするなどの無言の抵抗をしている人も35%おり、75%の人は強い反感を覚えているという結果が導き出されている。

図1 上司が情けなくなった瞬間に対する部下の対応

 これに対しての上司の反応は、きちんと部下を納得させる行動に出た人は全体のわずか4%にとどまり、ほとんどが理不尽な言い訳をするような結果となっている(図2参照)。

図2 部下の対応を受けての上司の対応

 「その後、人間関係がどうなったか」という質問では、事後は上司と部下の関係が80%という大きな割合で悪い方へと移行している。またモチベーションという点においては実に60%弱の人が低下してしまうという結果を導き出している。逆に奮起してモチベーションを上げた人はわずか5%にとどまった。お互いにきちんと話し合ったケースでは逆に関係は良好化しており、コミュニケーションの大切さがうかがえる。

 どのような業種でも人間関係の良しあしによってモチベーションが影響を受けるのは必至のようだ。今回の結果を見て大切なことは、問題点が発生したことそれ自体ではなく、その後、いかにきめ細かなケアをするかに尽きるのではないだろうか。

  コラム
「理想の上司」ってどんな人?

 これまで上司を情けなく感じた瞬間をアンケート結果を基にさまざまな例を紹介、考察をしてきたが、ここで技術人材育成フォーラムにて人材育成にご尽力されている宮武正哉氏に理想の上司とはどういうものなのかお話を伺った。

 まだ係長のころの出来事です。上司が1週間ほど出張することになり、私に印鑑を渡してこういったのです。
「私が留守の間、君に決済を任せるからこの印鑑を渡しておこう。必要と判断したら君が押しなさい。結果については私が責任を持つから」

 私は戸惑いました。そんな決済権限のある印鑑を渡されて一体どうしたらいいのだろうかと。いざ、印鑑を手にするとなかなか押せないものですね。普段、どうせ駄目なら上で拒否されるだろうとダメモトで帳票類を作成していたので、何げなく押されているその印鑑の重みというのを痛烈に感じました。結局、決済を迷うことはありませんでしたが、私はこの上司が全権委任してくれた心情に何とか応えようと逆に奮起したものです。後に管理職になってみて、彼は単に私に仕事を与えたのではなく、権限委譲することによって素晴らしい教育をしてくれたのだなと感じました。

 上司たる者は、方針と目標を明示した後は、部下1人1人に「やる気」「やりがい」を感じさせながら、正しい評価と育成ができる人でなければなりません。と同時に若いエンジニア側が、仕事や評価を与えてもらうのではなく、自らのスキル、成果、願望を積極的にアピールすることが必要になってくるといえます。これらのことからも、理想の上司を生み出すには、上司の姿勢と同時に、若手エンジニアの姿勢も重要な要素になるのです。

宮武正哉氏

1959年にリコーへ入社。1997年に退職するまでに複写機などの新製品企画、技術企画などを担当。社内にて技術人材開発統合システムを構築。1994年には社団法人企業研究会の「技術人材育成フォーラム」創設にかかわり、代表幹事、以後参与として新しい技術人材開発の在り方について研究。2004年6月に参与を退任。主な著書に『21世紀の技術人材開発マニュアル』(企業研究会)がある。


☆上司と部下はいつもうまくいくとは限らない
  それぞれのエピソードについて具体的な論評や対策を講じるのは不毛だろう。そこで本記事は「企業や組織で機能する上司と部下の在り方」を考えるきっかけにするといいかもしれない。

 各エピソードは実際に交わされた会話だろうが、上司がそういう言動に走るようなやむを得ない事情があったのかもしれない。もし落ち度が明らかに上司にあるとしても、完ぺきな上司はいないと覚悟しておかなくてはならないだろう。特に年齢に応じて自動的に昇進する職場ならなおさらである。

 自分が上司の立場ならどう対処したか。自分が部下として期待する行動はどこまで実現可能か。上司にはどの程度のスキルが必要か、どうしたらそのスキルを保てるのか。部下にはどんな配慮をすれば良好な関係が保てるか。そんなことに思いを馳せてもいいだろう。

 ただし、情けない上司に寛容な部下になることを勧めているわけではない。上司の言動で部下の志気が低下したのであれば、当然上司は責められるべきだ。だが責めるなら、「どういう実害が発生したか」を的確に分析できないと不平不満に終わってしまう。

 上司の言動による実害を冷静に分析できるようになれば、「ではどうしたらいいか」と一歩進んだ建設的な対処にもつながるかもしれない。あまりに被害が深刻なら上司の上司に相談するのも対策の1つだ。告げ口をするかどうかにかかわらず、あきらめて敬遠したり、不毛なけんかをするよりは冷静な分析ができると何かで役に立つだろう。

(加山恵美)

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