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最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」

第6回 スカウト転職でエンジニアがもてる理由

Tech総研
2004/10/22

エンジニアへのスカウトメールの利用が急増している。ハードウェア系エンジニアにはリクナビのスカウトメールが毎日のように届くという。その背景とスカウトメールの活用法を探る(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

  PART1
データから探るエンジニアの「モテモテ度」

 スカウトされる職種の人気度を調べるには、需要と供給のバランスを見るのがいちばん早い。需要とは企業からのスカウトメールの送信数、供給とはスカウト登録者の数だ。これらを職種別に比較した(すべてリクナビNEXTスカウトコーナー内での比較)。

スカウトメール送信数の6割以上が技術職

 他職種と比べた技術職の人気の度合いを、「数」と「密度」から探ってみた。「数」は図1に表した。2004年7月に企業から送信されたスカウトメールの送信総数を、対象職種別に見たものだ。「技術系」と記された4職種の合計は61%で、全職種中で圧倒的に多くのスカウトメールが送られていると分かる。

図1 スカウトメール送信数の職種別割合。調査は2004年7月に行ったもの

 突出しているのは、全体の4割を占める「電気、電子、機械」だ。次いで「営業、事務、企画系」(27%)が多いが、これは3職種を合わせた数字だ。これを1職種ずつに分割すれば、15%ある「技術系(ソフトウェア、ネットワーク)」が2位になる可能性は高い。

ハードウェア系エンジニアには平均1人1通以上が届く

 図2は「密度」のデータだ。職種別のスカウトメールの送信数を、それぞれの登録者人数で割ったもの。つまり、約1カ月の間に、登録者1人当たりに送られたスカウトメールの平均送信数となる。

図2 リクナビNEXT「スカウトコーナー」登録者に対するスカウトメールの平均送信割合。調査期間は2004年7月7日〜8月3日。集計対象は、上記期間に企業から検索回数が「1回以上」あり、かつ「現職種:登録あり」のユーザー

 平均とはいえ、企業は一定の条件を満たしていれば、複数の登録者にメールを送信する場合がある。また、多数のスカウトメールを受け取る登録者がいる一方で、まったく受け取れない人もいる。それを勘案して見てほしいが、平均数でも技術職の人気が分かるだろう。「電気、電子、機械」に至っては、1人当たり1通以上のメールが届いている(残念ながら技術職といっても技術系ではないが)。ちなみに、最も多くのスカウトメールを受け取った人は、「電気、電子、機械」の登録者で33通だった。

 このように、スカウトコーナーを利用してエンジニアを募集する企業が多く、かつ登録者数と比較した実質的な求人ニーズが高いことも明らかになった。それではなぜ、いま「スカウト」なのだろうか。

  PART2
エンジニア採用に苦しむ企業が選んだスカウトサービス

 スカウトコーナーを使ったエンジニア採用ニーズの高まりは、実はこの数カ月の間に急激に伸びてきたもの。

 その背景となる企業の採用動向について、リクナビNEXT編集長の岡崎仁美氏に話を伺った。

リクナビNEXTでは圧倒的なエンジニア売り手市場

 全体的に見て、リクナビNEXTの総求人件数のうち約4割が技術職です。企業のエンジニア採用意欲はかなり強いといえます。これはデジタル家電の世界的な好調さや中国需要の盛り上がりなどによって、日本の景気が回復基調にあり、特に大手メーカーの利益が軒並み上昇したことが大きな原因だと思います。

 しかし、強いエンジニア需要に反して、企業のニーズを満たすほどの応募は獲得できていません。技術職はもともとその総数が少ないですし、営業職などに比べて求人に対するアクション率も低い。一方で近年の好景気からエンジニアニーズが高まっている。つまり、応募者にとっては売り手市場が加速していて、企業にすれば希望するエンジニアの質と量の確保がより困難になっている状態です。

専門性の高い技術職から個別にアプローチ

 そこで企業は個々のエンジニアに向けたPR手法を模索し始めました。その1つがスカウトサービスを使った人材採用手法です。あらかじめその人の専門分野や希望業務が分かっていれば、絞り込んだアプローチができるからです。

 この点で技術職は、職種やスキルが細分化されているので、非常にポイントを絞りやすいんですね。専門スキルに経験年数やプロジェクト規模を掛け算していくと、その人のできること、任せられる仕事が浮かんでくるのです。

 これは他職種にない特徴です。例えば営業職ですが、不動産の法人営業と化粧品の個人営業では、専門知識や営業ノウハウがかなり異なります。しかし、「売ってくれるなら対象や分野は問わない」という企業もあれば、「自社の営業スタイルに合わせてほしいから競合他社の経験はむしろ遠慮したい」と考える企業もあるのです。このため、営業職では同じ職種の大量採用がありますし、経験不足を熱意でカバーする未経験採用も顕著です。

 技術職は逆です。Javaや回路設計などの技術は業界、というより世界標準のスキルです。その知識や経験なしに仕事は始められません。また、最近では募集職種が細分化して募集職種が増えた分、1職種当たりの採用人数が少なくなり、ますますピンポイントの採用傾向が強まっています。このため企業は時間的にも効率的にも、専門スキルが事前に把握できる、限られた人にアプローチをしたいのです。

スカウト登録は今後本格化する

 これらの理由から、スカウトサービスを中途採用に利用する企業が増加しています。また、以前は大手企業を中心として主に大手企業が盛んにスカウトを用いていましたが、この半年ほどは、新たな採用手法としてスカウトを初めて使う企業が増えており、今後はスカウトによる人材戦略が大手から中堅、中小、ベンチャー企業に至るまで一般化していくと思います(図3)。

図3 職種別スカウトメールの送信数の時系列変化

 また、近年では経営のスピード化により、長期的な採用計画(主に新卒採用)と、短期的な採用計画(中途でのピンポイント採用)が並走するケースが珍しくありません。技術職は業務内容が明確ですから、その仕事を任せられる人材を瞬時に限定して把握し、すぐにアプローチができるスカウトは、企業にとって大きなメリットになるでしょう()。

企業がスカウト登録でエンジニアを欲しがる理由
個人からの応募を待つ手法のみでは満たせないほどの求人ニーズがある
レジュメ(履歴書)から専門スキルが把握でき、適切な人材を絞り込める
実務経験年数や担当プロジェクトから任せる仕事を明確に決められる
技術スキルは世界標準なので、人材選抜の判断にミスが生じにくい
募集職種の細分化により限定された人たちへ効率的なアプローチができる

リクルート
リクナビNEXT編集長
岡崎仁美氏

 私は、応募者にとっての転職事情も変わってくると思います。転職意向が高まったら転職活動をするのではなく、常に自分の情報を発信しながらチャンスをつくる時代になるのではないでしょうか。企業からのオファーが届いても、納得できなければ断ってよいのです。大切なことは、自分の市場価値を上げていくのと同時に、その価値を外に向けてアピールすることです。



  PART3
エンジニア限定! スカウト登録の上手な使い方

 エンジニアがスカウトを利用する場合に注意するポイント、効果的な手段とは何だろうか。

レジュメはわがままに書くほど得をする

 岡崎編集長をはじめ、これまでリクナビNEXTスカウトコーナーに携わってきた方々から伺った話をまとめた。

 スカウト登録で登録者と企業をつなぐのがレジュメ。しかし、レジュメに自己PRをはっきり書かないエンジニアが多いという。企業はレジュメを読んでスカウトメールの送信を決めるわけだが、職務経歴書だけでは、経験した業務の価値が見えてこない場合もある。そこで役立つのが自己PRだ。その人「イチオシ」の技術や経験が分かれば、かなり具体的に仕事内容が把握できる。

 同じことが希望欄にもいえる。漠然とした書き方では、企業は何を重視してよいのか分からない。例えば、「先端技術に触れながら、大きなプロジェクトに参加して、マネジメントの裁量権が広い仕事がしたい」では、優先したいのが「先端技術の習得」なのか「プロジェクトの規模」なのか「マネジメントの範囲」なのか不明だ。自分のやりたいことを細かく書けば書くほど、企業は個人にアプローチしやすく、結局は登録者が得をする。

 このように、書き込み不足のレジュメは企業の実質的なデータベースになりにくく、登録者にとっては登録の意味がなくなってしまう。わがままでよいので、これができる、あれがしたいと、レジュメを自分の思いで埋めた方がよい。

キーワードを盛り込み、資格は慎重に記入

 自己PRも含めて、自分の「売り」を上手に主張している人が少ないようだ。その場合に有効な方法が、検索されるようなキーワードをレジュメに盛り込むこと。エンジニアの需要が急伸しているとはいっても、スカウトコーナーの全登録者は40万人を超えている。注目される先端技術や、話題の業務手法などの単語を入れることで、レジュメが企業の目に留まりやすくなる。

 また、取得資格はすべて書けばよいというものではない。希少性の高い資格、実務に役立つ資格なら積極的なアピール材料になるが、実務経験から取得していて珍しくない資格や、仕事に関係ない技術以外の資格は要注意。「その資格のレベルがスキルの上限」と見られてしまう可能性もあるからだ。

レジュメの情報は「きっかけ」で更新する

 仕事に追われて忘れがちになるのがレジュメの更新。そこで、部署の異動、職級の変化、新規プロジェクトのスタートなど、業務上の変化をきっかけに更新したらどうだろうか。というより、その機会に更新すべきなのだ

 理由は2つある。1つは自分の市場価値が上がっているから。もう1つはこれらの変化をきっかけに、希望する業務内容やキャリアプランが変わることがあるから。自分の価値と希望が高まったら、その姿はぜひ企業に知らせたい。現実に、新しい情報に変えたらスカウトメールが届いたという例も多い。更新しないことは、登録者の大きなデメリットなのだ。

 このようにレジュメの書き方に少し手を加えるだけで、効果的なスカウト登録ができるようになる。エンジニアとしての価値を確認する意味でも、少し時間をつくって「レジュメのマイベスト」を作ってみてはどうだろうか。エンジニア売り手市場である今は、自分を試す最大のチャンスだ。

エンジニアのためのスカウト利用アドバイス
1 自己PRと希望欄では、遠慮せずに具体的な気持ちを主張する
2 企業に検索されるような話題のキーワードを記入する
3 業務にひもづかない資格、レベルの高くない資格は書かない
4 業務上の変化があれば、再考して必ずレジュメを更新する

☆転職サイトの有効活用にはレジュメを磨こう

 エンジニアのモテモテ傾向は、デジタル家電への需要の高まりが要因と考えられる。スカウトメールの送信対象は「技術系(電気、電子、機械)」と「技術系(ソフトウェア、ネットワーク)」とあるが、狙いは組み込み系だろう。最近では携帯電話に限らずあらゆる家電が、目的別に最適化されたパソコンのようになりつつある。だが組み込み系エンジニアは経験者が少なく、いれば引っぱりだこになる。しかしそれでも足りず、少しでも関連性のある経験者に転職してもらいたいようだ。

 もちろん、組み込み系だけに人気が集中しているわけではない。「技術系」ならどれもスカウトメールの送信量は増加傾向にあるので、総じてエンジニアの需要は上昇傾向にあるようだ。転職先として選ぶ範囲が広ければ、より有利な条件に巡り会える可能性は高まる。エンジニアには喜ばしい限りである。ただどんなにモテモテでも1人につき1社しか選べないことは忘れてはならない。できるだけ自分の現状に最もふさわしい条件を選びたい。

 記事本文でアドバイスがあるように、転職サイトをより活用するにはレジュメのマメな更新が重要だ。たまに見直して、取得した資格を追加したり、PR文をより魅力ある表現に変えるといいだろう。特に相手はキーワード検索で網をかけるだろうから、耳慣れない特殊な表現よりは流行のキーワードや分かり易い表現を盛り込む方が目につきやすくなるだろう。こうした工夫がスカウトメールの数を増やすことにつながる。

(加山恵美)

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