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第11回 若手が伸びない理由とは? 上司が語るやる気の法則

Tech総研
2005/3/9

第二新卒採用ブームで若手人材の人気が復活する一方、久しぶりに登場した若手をどう育てるかに悩む先輩社員も急増中だという。最近の若手教育のコツを探る。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)。

  PART1
若手人材ブームの陰で急増する若手育成に悩む上司エンジニア

「若手に悩んだことがある」は73% 企業の「教育力」に衰えは?

 「十分理解していると思って任せたが、ちょっとしたことが抜けて事故につながりそうになった」「同じ失敗を何度も繰り返すので、もしかしたら自分の教え方がまずいのかと悩んだ」……そんな声が聞こえてくる。

図1 若手・新人の指導や扱いに悩んだ経験は?

 Tech総研が2004年12月にエンジニア300人に行ったアンケートによれば、「若手・新人の指導や扱いに悩んだ経験がある」人は全体の73%(図1)。年齢が上がるとその比率も上がり、25〜29歳では60%なのが、40〜44歳では81%となっている。悩みの内容は、「コミュニケーションがうまく取れない」が40%と最も多く、「相手のスキル・能力に合わせた指導ができない」「なかなか相手が成長しない」「自分と同じレベルを期待しすぎた」などが続く(図2)。

  しかし、近年耳にする若手指導の悩みには、これまでとは違う特性も見られる。

図2 若手・新人の扱い方、指導で
    失敗したと思うことは?

 「最近とある大手製造会社で聞いた話では、新人を工場や事業所に配属すると、時にものすごいブーイングがあるのだそうです。新人の配属は会社の専決事項、若手はまずそこで修業するという考えが通りにくくなったと嘆く人事の声を聞きました」

 と語るのは、リクルートワークス研究所の豊田義博主任研究員だ。「以前の大企業にはOJTなど、若手を育てる『教育力』がありましたが、それが崩れつつあるのかもしれません。ここ何年か新卒採用を減らしたり、やめたりしていた企業もあり、すぐ上の先輩と10歳以上年が離れていることもまれではありません。これではなかなか話が通じないでしょう」(豊田氏)

 かつては若手人材に一通りの職場を担当させて会社全体のイメージをつかませたり、「飲みにケーション」を含むコミュニケーションを重視するなどして研修が行われていた。それが近年は知識・スキル偏重型になっていると、豊田氏は指摘する。個々の組織が小さくなり、設計と製作の現場が離れるなどの技術者集団の変化も、若手とのコミュニケーションがうまくいかなくなる原因だという。

 「かつて若手への指導がうまくいっていたとしたら、個々のマネージャ、リーダークラスが優れていたということだけではなかったと思います。組織全体に中間層の厚みがあり、その中で暗黙知を含む知の共有の仕組みができていたからではないか。いまはその中間層が薄くなり、さらに若手人材も現場の一次情報に接する機会が減って、経験やノウハウが伝わりにくくなっているのかもしれません」(豊田氏)

 こうした若手とリーダー層とのギャップは、大きくいえば、日本企業における技術の伝承問題にもかかわってくる。

 「そこに危機感を感じた企業の中には、あらためてエンジニア育成工程表のようなものを作成して技術者のスキルアップの段階を明示し、それに基づいた指導をするところも出てきました。もはや、放っておいても若手が育つという時代ではないかもしれませんね」と豊田氏はいう。

  PART2
どうしてうまくいかない? 若手指導法「ここがNG!」
エヌエルピーパワーズ
代表取締役社長 橋川硬児氏


広告代理店プロデューサーなどを経て、2000年、携帯コンテンツ事業のザッパラス設立に参画。コンテンツ開発統括プロジェクトリーダーとして、自立・自己責任の現場主義と少数精鋭主義を追求。2年余りで売り上げ30億円の事業基盤を作った。2003年10月、エヌエルピーパワーズ設立に参画し、トレーニングプログラムを経営者やリーダー予備軍に提供している。「スタッフは光、リーダーは影」が座右の銘。

 若手の指導に自信を失いがちなリーダーたち。もしかしたら普段の指導法にとんでもない勘違いがあるのかもしれない。実践的な企業研修で知られ、『強いリーダーはチームの無意識を動かす』(ヴォイス刊)などの著書があるエヌエルピーパワーズの橋川硬児氏に、リーダーエンジニアの悩みに回答してもらった。

CASE1
ちょっと厳しく注意したら次の日から出社拒否。
これくらいのことでどうして?
(32歳・Webシステム開発)

 20代半ばの転職者。まじめに仕事をするタイプだったので、試しに少人数のプロジェクトのリーダーを任せたが、どうもチームのコミュニケーションがよくない。一度呼んで話を聞き、「こうしたらいいのに」とアドバイスしたら、次の日から会社に出てこない。その理由が「社内の冷蔵庫に入れておいた僕のジュースを勝手に飲むやつがいたから」。これからはこういう若手の面倒も見なくてはいけないのかと、暗たんたる気持ちになった。

回答
プライベートやメンタル面への気配りも重要

 これは一種の被害妄想でしょうが、似たような経験は私にもありますね。最近の若手のコミュニケーションレベルの低さにはがくぜんとします。上司は、若手を注意したりしかったりということを役目としてやっているのに、若手の中にはしかられると、全人格を否定されたかのように激しく落ち込むタイプがいるんです。そういう人の扱いには十分気を付ける必要があります。

 これからのリーダーは、メンバーからの報告を待ち、その成長を遠くから眺めるというのでは駄目です。技術面だけでなく、プライベートやメンタル面にも積極的に関与していく必要があります。ですから、チームの中の人間関係を熟知しておかないといけません。そのうえで人間のタイプ別にアプローチを変えていく。

 しかって育つ人と、褒めて育つ人、2タイプの人がいる。褒めることが必要な人には少しずつやらせて小さな成功体験を積み上げ、自信を持たせることが大切です。そこは徹底的に付き合うしかない。常に自分を見てくれる上司や先輩がいるというだけでも、彼らは安心して仕事に取り組めるようになるはずです。


CASE2
分かったふりをするプライドの高い若手との
コミュニケーションに疲れた……
(35歳・金融系システムエンジニア)

 最近の若手には「スキルがないくせに、プライドだけは一丁前」という人が多いような気がする。教育担当として第二新卒の若手技術者を指導したが、その場では分かったような態度と受け答えをする。「理解が早いな」と思って仕事をどんどん先に進めたが、そのうち教えたことがほとんど身に付いていないことが露見した。頭で理解していたとしても、実際にできるとは限らない。できなければすぐにSOSを発してくれればいいのに。「聞くは一時の恥……」という言葉もあるぐらいで、若いうちは分からないことは徹底的に聞いて覚えるものだと私はかつて教わったが、最近の子はどうもそうではないようだ。

回答
いまの若手は「分かったふり」がうまい

 そのとおりです。最近の若い人は、分かったふりをするのが上手ですよ。一種の自己防衛かもしれないし、心の底で年上のいうことをばかにしているのかもしれません。「この人は自分のことを理解してくれていないな」と思い込むと、自分から理解を求めることをせず、適当に取り繕うような態度を示すことがあります。だからこそ、表面的な態度にだまされてはいけないのです。本当に分かっているのかどうか、理解のプロセスを1つひとつ丁寧に確認することがまず大切。仕事で直面する問題点を、迅速に過不足なく報告する訓練をさせることも重要な指導ポイントになるでしょう。

 人間というものは、自分に不利な問題については過小または過大に報告する癖がありますが、現場からの報告に虚偽が含まれていると、リーダー自身のミスリード、ひいては組織全体の判断ミスにつながります。「悪いことは先にいう」という習慣、「ミスはとがめるが、あくまでも仕事のためであって、おまえの人格を否定しているのではない」という考え方を共有することが必要です。

 ただ、教える側も「昔はこうだった、オレの若いときはこうだった」と過去の成功体験にしがみつくのはやめた方がいい。そういう物言い自体が若手の不信感を増幅させてしまいます。


CASE3
自分と同じレベルで指導してしまった結果
新人が音を上げてしまった……
(30歳・半導体設計システムエンジニア)

 これは私も反省することしきりなんですが、新人に1つひとつ事細かく教えるのが面倒になって、つい「なんで分からないんだよ。もっと勉強しろよ」といういい方で接してしまいました。最初の数カ月は彼も頑張っていたようですが、とうとう音を上げて「もっと丁寧に教えてくださいよ、僕は素人同然なんですから」と逆ギレ。そういえば、若手の指導について、これまで体系的に考えたり、教育されたりしたことがなかったな、と思いました。相手のスキル・能力や理解度に合わせた指導をするのは、考えてみればとても難しいことなんですね。

回答
仕事を「人ごと」ではなく「自分ごと」にするきっかけづくり

 近年の開発スピードの速さ、教育のための余裕がないなどの事情で、新人技術者教育がいきなり現場に任されてしまっているという現状があります。それでも現場のリーダーは若手を育てないと自分が苦しくなるだけなので、ここは踏ん張りどころ。

 まず新人に「先輩や上司が時間を割いて教えてくれるのは自分のためなんだ」「だからこそ自分はしっかり指導を受けるんだ」という意欲を持たせることが大切。これがないとすべては人ごとになって、教える側も教えられる側も身が入りません。

 若手のモチベーションを引き出すきっかけになるのが、「君はこれからこの会社でどういう仕事をしたいの?」という将来の夢やビジョンについての問い掛け。「○○できるようになりたいです」という本人の答えを引き出すことができれば最初の難関はクリアです。

 次に、その夢の実現のために、いつごろまでに何と何をどういう順番で勉強し、どういうスキルを積み上げていくかを、つまりスキルの広がりと将来イメージを指し示すことが大切です。時間軸と空間軸でのキャリアプランを示し、それを「人ごと」ではなく「自分ごと」としてイメージさせるのです。

 ここで大切なのは、「○○できるようになれば、仕事もこんなふうに広がるから、すごく楽しくなるぞ」と、将来の苦しさよりは楽しさや彼にとってのメリットを強調することでしょう。苦あれば楽あり。未来への明るい展望が、若手のやる気を引き出します。

 
コラム
MeかWeか。リーダーはメンバーのタイプを見抜け!

 エヌエルピーパワーズ(株)でトレーニングディレクターを務める石井裕之氏は、NLP(神経言語プログラミング)などを実践するセラピスト。その経験をベースに社員のモチベーションやコミュニケーションスキル向上のためのノウハウを指導している。石井氏の唱える「Me―We」のタイプ分けとは……。

Meは自分が一番エライ、Weは協調型だが他人依存の面も

石井裕之氏

エヌエルピーパワーズトレーニングディレクター。セラピスト。大卒後、SEとして外資系コンピュータメーカーに勤務。監修本に『なぜ、「頑張っている人」ほど、うまくいかないのか?』(フォレスト出版刊)、橋川氏との共著に『強いリーダーはチームの無意識を動かす』(ヴォイス刊)などがある。現在、『週刊ビックコミックスピリッツ』(小学館刊)にてコラム「ホムンクルスの目」を連載中。

 技術者に限らず、ビジネスパーソンの集団は「Meタイプ」と「Weタイプ」の2つに分けることができます。Meとは「わたし」のこと。「冷静・冷徹」「自分をしっかり持っている」半面、「利己主義的」で「何を考えているか分からない」という印象を与えることもあります。たとえ外見的には謙虚に見えても、心の中では「本当は自分が一番エライ」と思っていて、人間関係においても「リードしたがる」タイプです。普段は無口なのに、自分の専門分野の話になると途端に口数が多くなる傾向があります。技術者に多いタイプです。

 もう一方のWeは「わたしたち」の意で、「付き合いやすい」「誰とでも友達になれる」タイプですが、逆にいえば「他人に影響されやすい」「感情の起伏が激しい」という面もあります。調和を大切にするため、「こいつには何をいっても大丈夫だろう」と思われがちですが、それ故人間関係の悩みが多いし、それが深刻化することもあります。

タイプによってアドバイスの仕方を変える

 部下がどちらのタイプなのかが分かると、指導もしやすくなります。Meタイプの人が相談に来ても、実は自己アピールしたいだけという可能性が高く、下手に細かくアドバイスしなくても話を聞くだけで解決できるケースが多いです。Weタイプの人にはシンプルなアドバイスや励ましが効果を上げます。Weタイプは、内容よりもアドバイスしてもらったことそのもので気持ちが満たされるからです。

 プロジェクトチームを構成するときも、全員を同じタイプにするより、違うタイプを組み合わせる方がうまくいきます。最もMeタイプらしい人物をリーダーに据えるのが理想的ですが、1つのチームに強力なMeタイプを2人置くとチームが分裂する危険性があります。

  PART3
若手をうまく育てるリーダーエンジニアの条件

褒められればうれしい、合理的でないと納得しない若手を理解

 最後に、若手をうまく育てられるリーダーエンジニアの条件を考えてみよう。そのためには育てられる若手の意見も聞いてみなければならない。

 若手が仕事に手応えを感じるのはどんな瞬間だろうか。若手社会人のためのキャリア支援サービスである、リクナビCAFEが行ったアンケートによると、「上司・先輩に褒められたとき」(45%)「業務評価が実際に高かったとき」(14%)、「自身の工夫やアイデアが認められたとき」(40%)、「他の人を頼らずに仕事を完結できたとき」(30%)、「プロジェクトなどが一区切りしたとき」(22%)などとなっている。また、ソフト系技術者とハード系技術者とでも、いくつか特徴的な違いがある(図3)。

図3 仕事に手応えを感じるのはどんなときか?

 反対に仕事がつらいと感じるのは、「仕事の中身に意味が見いだせないとき」(38%)、「理不尽な慣習を踏襲しなければならないとき」(38%)などだ。この傾向は職種を超えて共通である。

 もちろん給与が上がったり、昇進したりしたときもうれしいには違いない。しかし、それ以上に若手エンジニアは上司や先輩、あるいは顧客やユーザーとの関係を重視していることが分かる。顧客もまた会社の外部にいて、若手を指導・育成する存在だとすれば、やはり指導者に褒められ評価される瞬間こそ、自身の成長の手応えを最も感じるときということになる。

 さらにこのアンケートの回答から、若手人材は指導の合理性にも敏感であることが見えてくる。「これは習慣だから、黙って仕事をしろ」というような意味のなさや不合理が、若手からモチベーションを削ぎ、仕事へのやる気をなえさせているということだろう。昔の体育会系的な根性論はもはや通用しない。先輩や上司が、自慢話にすぎない過去の成功体験をひけらかすだけでは、現代の若手エンジニアはついてこないのである。

将来のビジョンやキャリアの方向性を可視化させる

 むろん褒めるだけが能ではないし、手取り足取りアドバイスすれば全員がやる気になるというものでもないことは、これまでの話からも明らかだ。重要なのは、若手の個性を1人ひとり理解し、それぞれの伸びようという意識を引き出し、そのうえで将来にわたるビジョンやキャリアの方向性を可視化してやることではないだろうか。実際の仕事の中では、メリハリをつけた褒め方・しかり方をしながら小さな成功体験を積み上げていき、そのことで自信をつけさせることが大切だ。

 対人コミュニケーションが苦手といわれる若手人材。しかし、リーダー世代も新人時代には同様だったのではないだろうか。コミュニケーション力は経験を積み重ね、上司・先輩の指導を受ける中で培ってきたはずである。いまの若手世代に非があるのではなく、教えられる機会が激減しているところに本質的な課題があるのではないだろうか。こちらが歩み寄れば、彼らも必ず心を開いてくれるはずだ。そのとき、若手エンジニアが思わず聞きたくなるような豊富な技術体験やノウハウを、リーダーの側が用意しておくべきだということはいうまでもない。


☆いつか成熟したら強力な仲間に

 若手ブームということは、逆にいえばこれまで若手採用が冷え込んでいたということだ。オフィスによっては数年ぶりに登場した新顔になるのだろう。若手と先輩の間を埋める存在が少ないとなると、先輩が若手をどう扱うかに悩むのは無理もないことだ。

 かくいう筆者も若手を育てる経験には恵まれておらず、あまり偉そうにコメントできる立場ではない。むしろ若手だった時代には先輩を困らせた方ではないかと、後悔すら感じる。担当した新技術の小規模案件では先輩に経験者がおらず、大変な思いをした。特に社会人になりたてのころは感情をうまく制御できず、トラブルに直面するとサーバのコンソールの前でめそめそ泣くこともあった。もしかしたら分かりやすいタイプだったのかもしれない。

 自分自身へのいい訳かもしれないが、若手だということは技術的にも人間的にも成熟しきっていないということだ。成熟しきっていないのであれば、理解不能なことをいったり不適切な行動をしたりすることもあるだろう。態度が好意的でないこともあるだろう。しかし、その未成熟な部分こそが若手であるということなのだ。

 若手の教育で苦戦すること自体、いまに始まったことではない。具体的な傾向に差はあるが、若手の教育とは普遍的なテーマなのだ。「ひよっこ」時代は頼りなく見えるだろうが、育て方次第ではいつか強力な仲間になるかもしれない。若手には寛容に接したいところだ。

(加山恵美)


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