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最新データで見る「エンジニアのキャリア事情」

第15回 高年収エンジニアが明かす面接テクニック

Tech総研
2005/6/24

自分をうまくアピールするのは難しい。なのに就職面接では、初対面同士が短時間話すだけで採用か不採用かが決められてしまう。良い面を印象付けるにはどうしたらいいか。百戦錬磨の達人がアドバイスする(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)。

 

PART1
転職経験者はエンジニアの約半数

 エンジニアにはどの程度の転職経験があるのか。転職経験はほかの職種と比べて多いのか、少ないのか。2004年に行われたリクルートワークス研究所の「ワーキングパーソン調査」を基に探ってみた。

転職経験に乏しいエンジニア像

 この調査は多くの職種を対象としているが、主にエンジニアを対象とした「専門職・技術職」の調査結果を抽出したのが下の2つのグラフだ。エンジニアの転職経験者は49%とほぼ半数だが(図1)、ほかの職種を含めた全体の調査では58%と6割近い人が転職をしている。

 また、直近2年以内に転職した人に転職回数を尋ねたところ、「専門職・技術職」では1回が最も多くて42%、次いで2回の25%、3回の17%と続く(図2)。しかし調査全体で見ると経験1回は34%と少ない代わりに、2回は30%、3回は19%で、転職回数の多さがうかがえる。

図1 エンジニアの転職(退職)経験 図2 直近2年以内に転職したエンジニアの転職回数

 ここから、エンジニアの転職経験はほかの職種と比べて少ないことが読み取れる。エンジニアは比較的転職や面接に慣れていないといえるのではないか。そこで、「場数を踏んだ経験者」のアドバイスが重要となってくる。

 

PART2
多転職+高収入エンジニアが直伝する面接マル秘テクニック

 転職を繰り返す人には2つのパターンがある。転職のたびにキャリアを積んでステップアップする人と、転職癖がついて1つの会社に落ち着けなくなる人だ。今回取材をしたのはもちろん前者のエンジニア。極めて前向きなお2人だった。

転職
5回
職務経歴書に「弱点」を載せて自己の成長をアピール
ネットワークエンジニア:国内系大手ITベンダ 部長(39歳)

「いままでで最大の失敗事例」を職務経歴書に書け

大手建設会社(6年)
年収400万円

入社2年目からCADの導入管理、3年目から社内情報システム担当を兼務で行う。
大手情報機器メーカー(4年)
年収600万円

勤務先の業績不振などから転職。主に社内の大規模ネットワーク構築や、外注への委託管理業務を行う。
外資系大手製薬会社(1年)
年収800万円

技術スキルの向上を目指して転職。本社とのネットワーク構築、国内のLAN/WANの設計・運用、データベース構築などを行う。
外資系通信キャリア(3年)
年収900万円

本社主導の開発体制への疑問から転職。ネットワークアプリケーションの要件定義、コンサルティング業務などを行う。
大手監査法人(1年)
年収950万円

部署への投資減額などに不安を持ち転職。情報システムのセキュリティコンサルティング業務を行う。
大手ITベンダ(入社1年目)
年収1250万円

知人から誘われて転職。外資系通信キャリアで果たせなかったネットワーク関連の新規サービスを行う予定。
※勤続年数、年収、そのほかの数字は概算。年収は退職時直近の金額

 この取材であらためて数えてみたのですが、私はいままで50社近くの面接を受けています。その中で感じたのは、自分の伝えたいことは面接官に質問させるのが一番だということです。方法としては、職務経歴書にわざとウイークポイントを書いておきます。興味を引きますから、必ず質問されます。

 特に効果的だと思ったのは、大きな仕事の失敗を書くことです。面接官は失敗を責めず、そこから学んだ内容を知りたがります。答えが「同じ失敗はしていません」や「チェックを厳しくしました」では不十分。これでは採用になりません。

 失敗の内容を詳しく話すと、面接官は「大変ですね」と同情します。その後で、結果として新しい仕事につながったこと、別の専門知識が身に付いたこと、ほかの部署との交流が始まったことなどを具体的に伝えるのです。もちろん話は事前にまとめておくわけですが、失敗の大きさからの反動もあって、かなり「効く」と思います。

 こんな事情から、私の職務経歴書の8割は失敗の紹介。しかし、失敗続きの使えないヤツとは思われていないはずです。業務内容を読めば同じ過ちを繰り返していないことは分かりますし、私は自信を持って自己の成長を説明できるからです。

専門外の特技を
仕事に結び付けてアピールせよ

 技術以外の専門性をアピールすることも有効だと思います。ただし、業務とのリンクは自分で探さなければなりません。例えば私は大学時代に建築に興味を持ち、夜間大学に通って二級建築士資格を取得しました。これはゼネコンの顧客のネットワーク構築に役立ちます。また、旅行が好きで、旅行業務取扱主任者の資格を取りました。こちらは旅行会社のシステム設計に重宝します。

 禁じ手なのでしょうが、本命企業の前に他社の面接で練習を積む方法もあります。私は5回転職をしていますが、転職のたびにキャリアが増えているので、前回と同じ説明にはなりません。どうしても最初の面接では「突っ込まれると怖い」と感じますし、面接官は緊張せずに理路整然と話せる人に好感を持ちます。予行演習で受けた企業を気に入ることもあるので、視野を広げる意味でも他社応募はよいと思います。

 転職回数が多いためか、ほかの人から転職の相談を受けることがよくあります。そのたびに私は「辞めたいなら辞めるな」といいます。目的をかなえるための転職なら応援できますが、不満だけが理由で辞めるのでは成功しないと思うからです。

 転職にはかなりのエネルギーが必要です。準備に半年、新しい職場で人間関係をつくるのに1年かかります。転職が好きなようにも見られますが(笑)、少なくとも私の場合は結果論なのです。

職務経歴書を使った面接攻略テクニック
・職務経歴書は質問の誘い水に ・失敗から得た自己成長を説明
・特技と業務をリンクさせてPR ・本命以外の面接で経験を積む

転職
4回
米国系の外資に転職したいのなら「ここは米国の一部」と思うこと
金融系エンジニア:外資系大手証券会社 ゼネラルマネージャ(40歳)

高収入が欲しければリブートせよ、まずは形から入れ

大手都市銀行
年収1000万円

入社2年目に情報システム部門に配属。主に外国人投資家向けのサポートシステム開発と運用、株売買などの代理人業務を行う。
大手通信機器メーカー
年収800万円

システム開発が面白くなり、本格的な社内SEを目指して転職。
中堅証券会社
年収1000万円

海外向け証券システム開発の経験を買われ、銀行時代の知人の誘いで転職。以前の業務に戻った。
外資系大手証券会社
年収1500万円

日本支社のバックオフィス、ミドルオフィスの増強のために誘われて転職。外資での腕試し、年収増も魅力だった。
外資系大手証券会社
年収1800万円

条件の良い企業を求めて転職。システムの運用・監視のほか、営業職と事務職をつなぐ業務のマネジメントも行う。
※年収、そのほかの数字は概算。年収は退職時直近の金額

 私が経験した米国系の外資系企業についての話をします。もう国内の企業に戻る気はないですし、欧州系やアジア系とは、同じ外資でも社風や体質が異なるからです。

 前社では30人以上の面接を受け、現在の会社でも面接は5回ありました。どちらも人事部門、技術部門、役員と会いましたが、主な質問はどれも同じです。

「外資とはいえ滅私奉公的な要素は多分にあるし、残業も多い。ただ、高年収が見返りなのだから、常にベストを尽くせますよね。これまでの流儀を捨て、わが社のルールに合わせてリブート(再起動)してくれますね」

 常に笑みを浮かべて背筋を伸ばし、てきぱきと仕事をし、“Cheer up myself”と自分にいい聞かせる姿勢。はっきりいえば、「米国流に染まる」という意識改革が絶対に必要で、できないと入社後に後悔します。これだけは最初に伝えたいと思いました。

 面接に関しては、格好は文系ビジネスマンが基本です。エンジニアによく見られる無精ひげ、ぼさぼさ頭、猫背などは問題外。安っぽいシャツやスーツも駄目。外資では収入に見合った生活習慣を身に付けていないと印象が悪いのです。プレスした質の良い綿のシャツと、10万円以上のスーツで面接に臨みたいものです。

 私は経済学部でしたが、理系学部出身のエンジニアも、外資系企業に入ると皆パリッとした服装になります。まずはスタートラインで評価を下げないこと。服は残るものですから、決して高い投資とは思いませんよ。

10の仕事を12と主張し、
そのための自己月報を付けよ

 日本人は自分を過小評価します。面接で10の実績を7程度に話す人がとても多い。インド人エンジニアなどは1を10に膨らませて伝えていますよ。倍は無理でも、10なら12の実績としてアピールしても問題ありません。

 そのためには、自分の仕事の月間記録を付けることが有効です。この1カ月で何をして、どこが問題点で、どう解決して、何を達成したかを書面に残すのです。面接官が技術に明るい人とは限りませんから、素人にかみ砕いて説明できるように書くことも大切です。

 私が6年間書き続けているこの月報は、リスク回避の手段でもあります。外資系企業では、入社時の契約書で「弊社の都合で解雇する場合もある」にサインさせられることが多いのです。そんな場合にもすぐに転職の準備ができますから。

 面接時の対応は、培ってきた技術力は誰にも負けないと主張すること、決して物おじしないこと、相手の目を見てハキハキと答えることが大事です。当たり前のようですが、面接の場ではなかなか難しいものです。

 私は毎朝8時には出社して、文字どおり“Cheer up myself”をしているので、やっぱり疲れますよ(笑)。でも、人間関係がサバサバしている外資系が好きで、いまの会社には当分いるつもりです。皆さん、全力でぶつかれば道は開けます。

外資系企業の面接攻略テクニック
・外資系の特徴に納得して応募 ・服装には金をかける
・物おじせずにスキルを主張 ・月報を付けて業務内容を整理

転職12回のファンドマネージャが語る転職の心得

 2005年の1月に12回目の転職を成功させたファンドマネージャがいる。楽天証券経済研究所の客員研究員である山崎元氏だ。氏は「1回の就職で満足できる企業に入れるなら転職者はいない」と語る。

自分は「商品」、企業は「取引先」と思うこと

楽天証券経済研究所
客員研究員
山崎元氏

1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事に就職。以後、野村投資信託、住友生命保険、住友信託銀行、シュローダー投信、NBインベストメントテクノロジー、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、第一勧業朝日投信顧問、明治生命保険、UFJ総合研究所(社名はすべて当時)を経て、2005年1月より現職。専門は資産運用。

 自分という商品を売り込むのが面接の目的ですから、「これまで何をしてきたか」ではなく、その実績から「今後は何ができるか」という商品の能力を伝えます。会社用語や技術の専門用語を使うのはタブー。コミュニケーション能力の劣る人だと思われます。逆に、専門外の人に専門的なことを分かりやすく伝えられると、「頭の良い人」という評価になります。

 また、転職理由は必ずポジティブであること。会社を「取引先」だと思ってください。いまの取引先の悪口をいうと、次の取引先(転職先)に影響しますから、敵対的な話は控えましょう。総じていえることですが、相手のメリットとデメリットを考えて準備することです。

仕事の内容を理解しないと転職失敗のリスクが増加

 一方、ジョブの定義は企業が持っています。そのため面接では、応募者が仕事に合うか、応募者が会社に合うか、経済的な条件が双方で合うかの3つを判断します。応募者からすれば、採用後の業務内容とポジションを知ることが重要になります。なぜなら、期待外の仕事をさせられるのが一番困ることだからです。

 入社後に期待外の仕事をするはめになると、キャリアに穴が開きますし、損害も大きい。誰からの指示で何の仕事をするのか、どんなローテーションなのかなどを、できれば現場の責任者に会って質問してください。ただ、取りあえず採用して配属部署は入社後に決めるという求人もあります。その場合は、転職後に後悔するリスクが高くなるわけです。

貴重な時間の中でスキルの投資先を探すのが転職

 私は、転職を考える人を応援しています。最初の就職で望みの企業と出合える確率は低いと思いますし、企業や本人の事情も次第に変わってくるものです。「転職は逃げだ」や「1つの会社で最低3年は我慢しろ」という精神論は転職未経験者のセリフで、私には賛成できかねます。

 ただし、時間は貴重です。ビジネスマンとしてのピークの年齢は徐々に前倒しになっていますから、28歳くらいまでに仕事の目標を決めた方がよいでしょう。やみくもに転職を繰り返すのも駄目です。自分のスキルにいかに有利な投資ができるかが、転職をするポイントだと思います。


☆成長する見込み、前向きであること

 今回紹介されたテクニックに共通するのは、「前向き」ということだ。少し前に流行した表現でいえば、「ヒューマンスキル」や「ポジティブ・シンキング」とも関係するかもしれない。

 ただし、安易な楽観主義や能天気とはまた違う。失敗を教訓という宝に変えられるような視点や精神的なタフさを、面接官に見せられるかどうかが鍵となる。失敗してもそれを繰り返さないようにし、逆にそれをバネに成長してしまうような強さがあると、企業としては頼もしく感じることだろう。

 こうした強さには人生経験がにじみ出るものだが、練習すればより効果的にアピールすることもできるだろう。

 練習のための面接もいいが、普段から自分のことを客観的に話すようにしたり、機転を利かせられるように気を使ったりするだけでも、積み重ねればかなりの効果があるのではないだろうか。

(加山恵美)


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