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第21回 悪魔に心を売っても納期を守る! 裏技術

Tech総研
2005/12/21

納期まで余裕たっぷり……そんなことはめったにない。納期を守るため、できる限りの努力はしても、無理が生じることもある。そんなとき、エンジニアが使う裏技術を紹介しよう。背景にある問題にも気付かされる。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

 

前提
無理なものは無理。守れない納期も当然ある!

 きっかけは知り合いのエンジニアから聞いた、何げないひと言でした。「納期? いざとなったら要件を変えちゃっても何とかするよ」。それがきっかけで300人のエンジニアに、「納期に間に合わないと分かったときに使う裏技術」を尋ねたわけです。

図1 最初から納期達成が絶望的な仕事は何割くらい? 図2 納期に対するスタンスを正直に教えてください

 アンケート調査では、納期に間に合わせるためのワザ以外にも、前提となる納期の厳しさや現状の納期への考え方なども聞いています。

 「仕事が始まった時点で納期達成が絶望的」(図1)ってかなりむちゃな話ですが、仕事の半分以上がそうだというエンジニアが4割もいます。普通の仕事だってスケジュールは徐々にズレていき、結局は納期と戦う羽目になるでしょ。それなのに、例えば「最初から納期は絶望的」な仕事が8割という人が、10人に1人いるわけです。

 それを思うと、「何が何でも納期は守る」と答えた人のエンジニア魂が光りますね(図2)。しかもこの18%(53人)の「納期が絶望的な仕事」の割合は、全体調査の結果とほぼ完全に一致しています。納期に余裕のある特別な人というわけではないのです。

 それはさておき、ここでいいたいのは、「エンジニアが納期を守るのにはそもそも無理がある」→「だから多くの人が裏技術を使っている」という現実です。しかもその技術の中には、人として許されないようなものも数多くあるのです。

 

方法別
皆が知ってて、やってて、黙っている「裏技術の4つの王道」

 帳尻合わせの技術には、いくつかのパターンがあるようです。テストの手抜きだったり、データのコピーだったり、機能を分割した納品だったり……。回答の多かった4つに分類して、100点点で点数を付けました。

「テストの間引き」は日常茶飯事のようだ……

20 裏技術はこれだ 【制御系SE 35歳】
  取りあえず正常系の動作確認だけ済ませた状態でリリース。顧客もマージンを取っているのでいいでしょ。
  そしてこうなった  
  異常系の評価でエラーリポートがくるのは分かっているので、それまでに異常系の作り込みを終えておく。顧客は素早い対応に満足、こっちは時間が稼げて双方ハッピー。

20 裏技術はこれだ 【回路・システム設計 39歳】
  納期が厳しい場合は、常に正常系のテストしか行わない。
  そしてこうなった  
  客先で不具合率が10%の異常発生。原因は静電気。試験を行っていなかった責任で、以後無償修理を3年以上継続しています。

40 裏技術はこれだ 【汎用機系SE 34歳】
  テストやチェック工程はおざなりに実施して次工程へ進み、バグが出るたびに対応。上司も黙認の常とう手段。
  そしてこうなった  
  システム導入後に不具合続出。データのハンド修正で日常業務を回しつつ、夜中や休日に改修作業を実施。当然赤字でボーナス査定もマイナスだ!

20 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 29歳】
  運用系の試験で日数のかかるもの、例えば30日以上回さなければならないものを20日でOKにしてしまう。
  そしてこうなった  
  ウチの社のあしき文化。幸いにも外部には気付かれていないが、個人的にはいつ火を噴くかと……。

10 裏技術はこれだ 【品質・生産管理 29歳】
  無線機器の評価で、過去の測定データをそのままコピペする。
  そしてこうなった  
  上司が無線技術に疎いので、いままでに発覚したことはない。

40 裏技術はこれだ 【回路・システム設計 36歳】
  回路乗数の検討を省く。乗数変更であれば後から対応可能だから。
  そしてこうなった  
  結局、検討不足のため乗数変更だけでなく回路変更も必要となり、修正が徹夜作業となった。

「過去のデータの使い回し」はしちゃダメ!

30 裏技術はこれだ 【汎用機系SE 34歳】
  本来派生しなくてもよかったクラスを、上位クラスの動作がよく分からなかったためソースコードをコピペして勝手に派生させて作った。
  そしてこうなった  
  見事に納品先のソフトウェア管理者に見つかったが、何とか目をつぶってもらい、次の改修で必ず直すことにした。

30 裏技術はこれだ 【汎用機系SE 26歳】
  絶対に間に合わない状況だったため、過去に他社に納品したプログラムをほぼコピー。
  そしてこうなった  
  単体・結合テストを簡単に済ませていたため、プログラム修正が続いて工数が大きく膨らんだ。

20 裏技術はこれだ 【機械・機構設計 30歳】
  主要部分の強度計算はするものの、そのほかの部分は似たような前の実績のものをひたすらコピペ。製作段階では職人さんに飯食わして深夜残業。
  そしてこうなった  
  タンクから漏れが発生! 職人さんからはにらまれて関係修復に1カ月かかった。

20 裏技術はこれだ 【半導体設計 37歳】
  既存の数点の製品とデータを流用して、ユーザーにわざわざ選択肢を用意した形にする。
  そしてこうなった  
  既存の製品を評価してもらって基礎データが取れ、開発の参考になった。ユーザーと検討する機会も増えて、関係もよくなった。

「段階リリース」ってそれ、納期遅れでしょ

30 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 29歳】
  店舗内サーバ開発で、お客には見えない機能を後付けできるようにしておき、基本機能だけで納期に間に合わせた。「機能改善項目がいくつか残っていますが、問題ありません」といい切った。
  そしてこうなった  
  システム維持・保守のフェイズに入ると担当部署からクレームの嵐。遠隔メンテナンス機能などが不完全だったので、全国を走り回るはめになった。

40 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 29歳】
  どんなに使い勝手が悪くても、仕様書に載っていないことは絶対に口に出さない。
  そしてこうなった  
  その後のリニューアルで少しずつ改良していった。

40 裏技術はこれだ 【制御系SE 38歳】
  機能的に省けるもの、簡略化できるものを探して、最低限の仕様にしてしまう。
  そしてこうなった  
  納品時には問題なく、2年以上たってから機能追加の依頼。有償で対応させていただいています。

50 裏技術はこれだ 【生産技術 31歳】
  設備の仕様が決まっていないうちに先行発注。なるべく影響が出ない部分から製作に入り、無理やり納期に間に合わせる。
  そしてこうなった  
  問題ない場合もあるが、大きな仕様変更で先行製作が無駄になり、製作費が予算オーバーすることもある。

40 裏技術はこれだ 【半導体設計 32歳】
  半導体図面を完ぺきに作図して提出するのではなく、下の層から少しずつ提出する。メタル配線のつなぎ替えで回路変更できるように設計しておく。
  そしてこうなった  
  回路ミスが多く、用意していたメタル配線でも足りなくなってしまった。

エンジニアが得意な「力ワザと人海戦術」

40 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 30歳】
  開発スピードを上げるため、チーム全員でソースのべた書き。後のメンテが大変になるのは分かっていたが……。
  そしてこうなった  
  変更時に全部やり直しになった。

30 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 37歳】
  ソースの標準化やモジュール化を一切無視して開発し、テストだけはきちんとやって納品。
  そしてこうなった  
  発注元が保守担当の予定だったが、保守できないとの連絡。自分で再度格闘することになり微妙な状況です。

30 裏技術はこれだ 【制御系SE 36歳】
  vxWorksでコンパイル時にprintf文を入れるだけで動作が変わったことがあり、無駄なprintf文を入れて無理やり動作させた。
  そしてこうなった  
  ほかの修正が入った場合に正常に動作するよう、printf文を抜いたり入れたりで悪戦苦闘中。

20 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 32歳】
  自動で行うべき処理を手動操作で運用するように変更。トラブルが起こりやすいのは承知していたが、人力でカバーするしかなかった。
  そしてこうなった  
  バグや運用ミスが続き、いまだに自動化できていない。顧客にはいいかげんな理由をいって先延ばしにしている。


60 裏技術はこれだ 【機械・機構設計 35歳】
  定年退職した無職の元上司に仕事を発注する。
  そしてこうなった  
  いまでも時々仕事を出すが、徐々にギャラをつり上げてきている。


 

感情別
犯罪スレスレ「悪魔のテク」&意外と使える「いいかも技術」

 方法別ではなく感情別に、裏の技術を分類してみました。「こんなことしていいんかい!」という犯罪スレスレ(すでに犯罪?)のものから、「あれ、使えるんじゃない?」といったアイデアまで、実に千差万別です。かなりセコいものもありました。

こいつぁ〜ヒドイ! 絶対にまねしないでください

0 裏技術はこれだ 【機械・機構設計 35歳】
  出図した後に検証する。問題が発覚した部分については、組み立てが行われる前にこっそり部品交換する。
  そしてこうなった  
  いまのところ問題なくうまくいってます。

10 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 35歳】
  相手(顧客)のあら探しをして徹頭徹尾そこを糾弾する。決してこちらの非は認めない。
  そしてこうなった  
  金銭的な面でもめにもめたりすることはあるが、結局のところうまく収まる。

0 裏技術はこれだ 【FAE 31歳】
  誤差の範囲で合っている製品だけを抜き出して、全部が合格していることにする。少しの誤差ならOKを出す。
  そしてこうなった  
  別段、問題になってはいない。

0 裏技術はこれだ 【ミドルウェア開発 32歳】
  見た目の動きさえ合っていればいいだろうと、正当な計算ではない処理で形成した。
  そしてこうなった  
  「正確な計算結果と違うのでは?」という指摘があったが、「ゆらぎの要素が入っているから」というもっともらしい返答で乗り切った。

0 裏技術はこれだ 【社内SE 36歳】
  明らかにやらなくてもいいようなテストでは、数値をでっち上げる。
  そしてこうなった  
  そういうところに限って、本番でバグが出るんですよね。本当のことはいえないから、また理由をでっち上げます。

こいつぁ〜セコい! でも、意外と使える手だったり

60 裏技術はこれだ 【コンサルタント 27歳】
  成果物の根拠となるデータを分析する時間がなかったため、ほとんど読めないほど小さいフォントで印刷して提出した。
  そしてこうなった  
  どうやって読んだのか、膨大な付箋つきで突っ返され、その回答に追われた。

70 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 32歳】
  納品のときに出来上がっていない機能を、「メディアに入れ忘れました」といって社に戻った。納期を1日延ばすことができた。
  そしてこうなった  
  小さいプログラムで開発要員も私だけ。誰にもバレず、お客さんにも不審がられず、問題なし。大成功といえるでしょう。

40 裏技術はこれだ 【プリセールス 34歳】
  納品期限ぎりぎりに、すべての納品物を一度に渡す。
  そしてこうなった  
  顧客がいっぱいいっぱいになって受け入れチェックが甘くなり、少しのミスなら気付かない。

40 裏技術はこれだ 【半導体設計 27歳】
  納期を延ばしてもらうために、社内トラブルをアピールする。
  そしてこうなった  
  かえって同情された。

これは使えるかも。いや、ひょっとしたらですが……

80 裏技術はこれだ 【コンサルタント 26歳】
  職場の女性へ根回しする。うわさ話やさりげない日常会話を通して、納期が危ないことが上に伝わるようにする。
  そしてこうなった  
  納期修正のための打ち合わせに呼ばれるようになる。

40 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 32歳】
  正常系はある意味できて当然なので、異常系のみのテストを行う。
  そしてこうなった  
  フォーマットなどのケアレスミスが見つかって、たまに気まずい雰囲気になる。

60 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 25歳】
  開発中に簡単なテストで稼働確認を行い、正式なテストでは手を抜く。
  そしてこうなった  
  ポイントは押さえているので問題はない。

50 裏技術はこれだ 【Web・オープン系SE 29歳】
  データ項目設計時に、ある項目について詳細までは要否を確認せず、類似システムの項目を流用する。これにより、データ項目を最大公約数で設計することになる。
  そしてこうなった  
  不要な項目も多く存在するが、仕様変更の際に必要な項目がすでに入っているため、作業効率を向上させることができた。

60 裏技術はこれだ 【ネットワーク 28歳】
  概要設計書や運用設計書を第0版とし、多少の記述漏れなどは見逃してもらう。通常設計後に構築となるが、一部は設計と構築が一緒に走るイメージ。
  そしてこうなった  
  問題はないが、肉体的にも精神的にも追い詰められる。


 

まとめ
悪いのは発注者と受注者。だけど、やっぱり後悔しています

 帳尻合わせの技術(?)の数々、いかがでしたか。「ここまでやるか」とあきれてる? それとも「まだまだ序の口よ」と薄ら笑いを浮かべてる? 少なくとも、あなたを含めたエンジニアが、どれほど納期に苦しんでいるかは実感していると思います。

図3 納期を守れない仕事の問題はどこにある? 図4 イケナイ裏ワザを使う「うしろめたさ」は感じる?

 その原因とは何か。半分近くの人が「そんな仕事を受けるなよ」と受注者に、3割の人が「そんな仕事を振るなよ」と発注者に問題ありと見ています(図3)。つまりは人のせい。だけど、裏ワザ使用には約3分の2の人がうしろめたさを感じています(図4)。救いがあると思いませんか。

 どうにも落としどころが難しいのですが、アンケートに「裏技術はなし」「徹夜・残業で間に合わせる」と答えた人が28人いたこともあり、少しは明るい終わり方にしたいと思います。スティーブ・ジョブズが6月に、スタンフォード大学の卒業生に語った一節を引用します。

 「人生には時として、レンガで頭をぶん殴られるようなひどいことも起こるものです。だけど、信念を放り投げちゃいけない。私がくじけずにやってこられたのはただ1つ、自分のやっている仕事が好きだという、その気持ちがあったからです」

 好きな仕事なら、やっぱり手抜きはいけませんよ。


☆無理な仕事なら早めに対処しよう

 衝撃的なタイトルと裏技術の数々に目を奪われるが、この記事はエンジニアが抱える深刻な問題を提起している。

 今回紹介した裏技術はかなりきわどい。しかし一概に「悪」として責めがたいものもある。例えばテストにしても、正常系以外、または本筋から外れるものならばきりがないところもある。問題は、当初の契約ではどこまでが作業範囲として想定されていたかだ。想定外の追加作業が発生したら、気付いたときまたは納品時に相談して別途対応すればいい場合もある。伝えるべきことを伝えないと後に問題になりかねない。勇気を持って誠実に実情を説明できるようにしよう。

 正直いって、こういう危ない橋はあまり渡りたくないものである。だがこれらの裏技術の使用は、追い詰められた故に出てきてしまう現象だ。本文アンケート調査によると、最初から納期が守れなさそうな仕事も多い。スタート地点から納期達成は難しいということだ。それなら、こうした無理のある計画こそ問題視すべきではないか。

(加山恵美)


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