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第31回 「自分の技術は通用する?」転職の不安解消法

Tech総研
2006/8/23

転職を目前にしたときの不安は、「自分のスキルや業務経験が十分かどうか」というものが圧倒的に多いようだ。そうした不安の解消法を紹介する。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

 

その1
転職に対する不安第1位は、「自分の技術力が通用するのか?」

 転職活動を行う際に最も不安を感じているのは、異業種もしくは異職種への転職を考えている人だろう。同業他社からスキルが認められての同職種転職ではハードルも低く、多くの人の参考にはならない。そこで今回の調査では異業種&異職種転職にスポットを当てた。

図1 異業種(異職種)転職する際に抱いていた不安(複数回答)

 IT業界内で異業種(異職種)への転職を成功させた100人のエンジニアにアンケートを採ったところ、予想どおり多くのエンジニアが不安を抱きながら転職活動を行っていたことが判明。中でも不安要素として高いポイントを示したのが、「自分のスキルが通用するか不安」「実務経験が足りない不安」という回答だった(図1)。では、こうした不安を解消して転職を成功させるためには、どんな手を打つべきか。異業種転職を成功させた2人のエンジニアに聞いてみた。

ケース1
「上流工程に進みたくてコンサルタントを志望」
SE→ITコンサルタントに転職 T・Mさん40歳

 最初に話を聞いたのは、SEからITコンサルタントに転身したT・Mさん。汎用機からオープン系まで多彩な開発経験を持つ。クライアントに専門的な意見を求められることが頻繁になり、情報システムのコンサルタントをしてみたいと考え、外資系コンサルティングファームX社に転職した。

転職前の最大の不安
「経歴やスキルの異なる集団でやっていけるだろうか」

T・Mさん プロフィール:
新卒で大手コンピュータ会社に入社。外資系コンピュータメーカー勤務を経て、1997年に外資系コンサルティングファームに転職。IT戦略を専門とするコンサルタントとして活躍後、現在は大手ソフトウェアベンダにコンサルタントとして勤務。

 いまでこそ、コンサルティングファームが優秀なSEを採用してITコンサルタントへ登用するというキャリアステップが確立しているが、T・Mさんが外資系コンサルティングファームX社に転職した1990年代半ばでは、まだ異例のことだったそうだ。X社としてもT・Mさんの採用はチャレンジだったのだろう。「入社前からシステム開発企業との風土や環境の違いを感じ、異質な自分が溶け込めるか不安でした。実際、入社してみたら周りは全員が会計士でした(笑)。経営改革のコンサルティングなど、これからはITが軸になるといわれていましたが、私はよくいえば先駆者。悲観的に見れば人身御供のような存在です。こうした中で、どう自分を生かしていけばいいか、その回答を見つけるには苦労しましたよ」

T・Mさんの不安解消法(1)
「自分しかできないことを探す」

X社はクライアントからERPパッケージの導入支援を要請されていたにもかかわらず、情報システムに精通しているコンサルタントはごく少人数しかいなかった。そこでT・Mさんはコンサルタントのスキルを習得する前に、自分を生かせる業務としてデモ用のシステムの構築と運用を自ら買って出たと語る。「まずは社内に自分の居場所を確保したのです」。これで周囲に存在価値を認められ、急に楽になったそうだ。
T・Mさんの不安解消法(2)
「出会う人たちとの接点を探す」

異業種に転職すると、社内の上司・同僚だけでなく、顧客とする会話の内容も大幅に変わってくる。業界経験が少ないだけに雑談でも間が持たず、会話に窮することが少なくない。T・Mさんもそのような場面に何度も遭遇した。そのときにどうしたかといえば、相手との何らかの接点を探して会話に花を咲かせたそうだ。例えばクライアントのCIO(情報技術担当役員)には例外なく、汎用機時代の苦労話が共通の経験談として大いにウケたそうである。
T・Mさんの不安解消法(3)
「バーで他業界の知人たちと情報交換」

異業種・異職種転職の際に、専門知識が足りなくて困ることは多い。そこで頼らざるを得ないのが専門書のたぐいである。T・Mさんも数冊の専門書籍を購入し、集中して勉強したそうだ。それだけでは当たり前。T・Mさんはコンサルティングファームやクライアント企業の業界情報を仕入れるために、行きつけのバーで異業種交流を積極的に行ったそうだ。普段は聞けないことが、グラスを傾けることでどんどん吸収できたという。異業種転職に限らず、転職前や転職直後の情報収集が、成功の秘けつといえるだろう。

ケース2
「早く独り立ちしたくてIT業界に転職」
機械設計→ネットワークエンジニアに転職 K・Hさん32歳

 次に話を聞いたのは、機械設計エンジニアからネットワークエンジニアにスキルチェンジしたK・Hさん。自動販売機の設計エンジニアとして入社した会社で、一人前になるまでに10年はかかるといわれ、IT業界に方向転換。現在は大手ネットワーク機器ベンダ勤務。

転職前の最大の不安
「業界経験がまったくなくて通用するのだろうか」

K・Hさん プロフィール:
工学部機械工学科卒。機械メーカー、PCセットアップのアルバイト、派遣で大手システム開発企業勤務と続き、現在は外資系の大手情報機器ベンダ勤務。新製品の発表準備や社内サーバ管理など重要な業務を任されるまでに至る。

 K・HさんがIT業界を志望した理由は、若いうちから第一線で活躍できるからというものだった。でも、それは一定レベルのスキルがあっての話。彼のスキルレベルは学生時代にプログラミングの講義を受けた程度にとどまる。「ネットワークの知識などまったくありません。当然のことながら、自分が通用するかどうか不安でいっぱいでしたよ。ただ、当時は20代前半で、まだまだ若くチャンスがあると考えていました。だったら、どうやってIT業界にもぐり込めばよいか考えました」。最終的な彼の目標はネットワークに強いITコンサルタント。そんな夢を持つ彼が取った戦略は、不安を解消しつつ着実にIT業界の第一線に近づいていけるものだった。

K・Hさんの不安解消法(1)
「まずはアルバイトで業界経験を積む」

K・Hさんは最初からIT大手に入社できるとは思ってもいなかった。実際、「IT業界の人たちって、どんな仕事をしているのかも分からなかった」という彼にとって、未知の世界へのハードルは高かった。そこで彼はアルバイトとしてPCをセットアップする会社に勤務。アルバイトなら採用されやすいし、入社後に大きなプレッシャーもない。まずは業界経験を積むとともに、これから何を勉強していけばいいかを探ることにしたのである。アルバイト開始直後にネットワークに関する猛勉強を開始。CCNAレベルのスキルを独学で身に付けた。
K・Hさんの不安解消法(2)
「派遣のお試し期間を利用」

基礎的なスキルが身に付いたと判断したK・Hさんは、次のステップを踏み出した。ここでも慌てない。技術者派遣の会社に登録し、大手システム開発企業で勤務した。それが可能だったのは、派遣会社が顧客に対してお試し期間を設け、スキルが若干不足しているエンジニアでも契約してもらおうとする制度があったからである。顧客側は3カ月間の試用期間として低コストで人材を確保できるというメリットがある。スキル・経験が足りないK・Hさんはこの制度をうまく利用した。派遣の試用期間ながら、念願のITの最前線である。帰宅後に1日5時間の猛勉強を続け、周囲のスキルレベルに追いつくことに専念した。
K・Hさんの不安解消法(3)
「派遣会社の教育制度を利用」

K・Hさんはまた、派遣会社特有の各種制度を最大限に利用した。1週間に1回程度訪れる派遣会社のサポートスタッフからスキルを吸収しようとしたのである。そのスタッフはネットワークのエキスパートで、教育指導も担当していたからだ。K・Hさんはできるだけ時間をつくって、サポートスタッフを質問攻めにし、自分のスキルを磨いていった。

 

その2
エンジニア100人の転職不安解消術とは?

 2人のエンジニアの転職に対する不安の背景とその解消例を紹介したが、そのほかのエンジニアはどのように不安を解消して転職を成功させたのだろうか。アンケートを分析してみると、大きく2つの解消法が浮上した(図2)。

図2 「自分のスキルが通用するのか」不安の解消・軽減ポイント(複数回答)

 まずは採用面接の中で不安が薄れていったという意見。半数を超えている。不安を抱いたまま面接に臨んだが、採用担当者や上司となる可能性がある人と話し込むうちに「ここならやっていけそうだ」「自分を必要としてくれている」といった認識が生まれ、不安よりも期待感が上回るというケースである。次に多かったのは、ネットや雑誌で情報収集して不安を解消したという意見である。転職活動に限らず、相手のことを知らないというだけで不安は強まるものである。自分の市場価値や転職先での働き方を知ることで、対策も立てやすい。

 少数派だが、エンジニアらしい不安解消法も散見できた。自分が制作したソフトウェアを面接に持ち込んで評価してもらうなどは、応募企業で自分が通用するかどうかを判断する格好の方法といえるだろう。また、エンジニアとしてのポテンシャルに自信があり、それを認めてもらうことで当初のスキル不足が解消できるのではないかというような意見も多かった。

エンジニアの主な不安解消術   エンジニアならではの不安解消術
・ネットや雑誌などの情報収集で、自身の市場価値や転職先が求めるスキルや働き方を知る

・面接で自分のスキルと期待値をすり合わせ、転職後の仕事イメージを固める

・人材紹介会社のエージェントなどの客観的なアドバイスから、転職先としての選択の妥当性や、合否の可能性を吟味する

・スカウトメールの内容で、自分への期待値やどこが評価されているかを把握する
  ・最初は得意な技術フィールドで自分を売り込む

・技術的バックグラウンドを紹介し、視野狭窄(きょうさく)に陥っていないことをアピール

・自分が過去に制作したプログラムやコンテンツを面接に持ち込む

・分野が違っても技術的な共通基盤を見いだす

・情報技術系の資格を取得

 

まとめ
自分の“どんな”技術が“どこ”で通用するか、
まずは不安がらずに行動あるのみ

 T・Mさんは入社前から抱いていた異業種転職の不安を、転職後に努力と工夫で解消していったタイプ。K・Hさんは転職前に万全の準備を行うことで転職に臨む不安を解消したタイプといえるだろう。

 一方で、採用側である企業は異業種・異職種転職をどう見ているのだろうか。リクルートエージェントでIT業界を担当している村山雅哉マネジャーに語ってもらった。

 「ITとまったく関係しない業界・職種からのキャリア採用は難しいのですが、IT業界内での異職種転職……つまりスキルチェンジ、キャリアアップは以前よりハードルが低くなっています。開発会社から社内SEとなるケースや、2次請けの開発会社から元請けの開発会社へ移るケースなども、事業形態が異なるので異業種転職といえるかと思います。この場合も、必要とされる基本的なスキルが共通しているため、転職を成功させるケースが増えています」

 村山氏のコメントを強引に要約すれば、スキルの一部が評価されれば環境をガラッと変えられる転職が可能ということになるが、企業側はどのようなスキルを評価するのだろうか。

 「募集企業は、技術・ヒューマンスキル・業務知識・ポジションの4つの評価ポイントで求職者を評価しますが、どのポイントを重要視するかは企業の採用背景によって大きく異なりますね」

 このことは、エンジニアが4つのポイントのどこかに自信がなく、不安を抱いていたとしても、別の部分で企業側が評価するかもしれないということを示唆している。不安解消のためのスキルアップの努力が必要なのはいうまでもないが、自分のどこが評価され、どこが評価されないかを客観的な目で評価することが重要といえそうだ。

 異業種・異職種の転職だからこそ自己評価をアテにせず、人材紹介会社のアドバイザーの意見を聞いたり、面接で評価ポイントを質問したりするなど、1人で不安がらずに行動してみることが好結果を生み出すようである。

☆未知の世界を知ることが鍵

 転職を前に不安を感じるのはむしろ当然であり、無理もないことだ。誰でも転職先でうまくいくかどうか分からない。もともと不安とは、自分がコントロールできないことや分からないことを前にして感じるものだ。とはいえ、不安に押しつぶされてしまうことは避けたい。

 一般的に不安の解消法はいろいろあるが、それが有効かどうかは本人次第。不安になる話題を避けて忘れる人もいれば、きちんと向き合って克服する人もいる。今回紹介した克服法は主に後者型だ。

 不安を克服しようとするなら、今回の体験談のように「知ること」が鍵になる。技術的な知識を増やすというだけではない。不安がどこにあるのか明確に知ること、自分のスキルを客観的に知ること、ほかの人の意見や考えを知ることなどが必要だ。

 実際にアンケートで挙げられた不安解消法にも、「知ること」が多い。ネットからの情報収集は一般的な事実、面接は具体的な事実、つまり転職先を知ることとなる。未知の部分が多いと不安になるので、未知の部分を減らすようにすればいいということだ。ある程度現実味を持って未知の世界を把握できれば、不安は減る。実際にそれで将来が万全かというと別問題だが、少なくとも何とかなるという気になれる。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


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