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第49回 もう通わない心……部下から上司へ7通の手紙

Tech総研
2007/8/27

「上司はなぜ、いつもいつも……」。部下が心に秘めている疑問を7つ、200人の上司にぶつけてみた。さすが上司、ぴしゃりと回答!(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

  部下の質問:
平社員エンジニア100人に調査! 上司の“ここが分からない”


部下から上司へ送った7通の手紙
1.なぜ納期ギリギリで、残業すると分かっている仕事をさせるのですか?
2.なぜ突発的な仕事が入ってくるのですか?
3.なぜいうことがコロコロ変わるのですか?
4.なぜいつもお客のいいなりなのですか?
5.評価の基準が分かりません。どう評価しているのですか?
6.スキルを磨く時間がないのですが、部下のスキルアップはどう考えていますか?
7.本音では部下のことをどう考えていますか?

 「あなたは上司に対してどんな疑問や不満を持っていますか?」。ソフトウェア系とハードウェア系のほぼすべての職種のエンジニア合計100人(20〜30歳)に、こんな質問を投げ掛けてみた。幅広い意見を得るため、「仕事について」「人間関係について」「評価について」などと項目を分け、すべてフリーアンサー(選択肢でない)で尋ねた。その中で最も回答の多かったのが、上の7つだ。

 回答の中には「特になし」「満足している」などもあったが、逆に上記に含まれないもので「あいさつしても顔も上げない」「人の好き嫌いが激しい」「うちの社内設備ではできないのにどう検討しろというのか」「昔の武勇伝を語り過ぎ」「上とは飲みに行くが部下とは行ったことがない」など、実に多方面からの意見が寄せられた。

 そして、これらの疑問への率直な回答を、200人の「上司」にアンケート調査した。

  上司の返事:
主任・係長・課長クラスの上司200人が「おれだってツライよ」

 上記の「部下からの7通の手紙」に対し、30〜45歳の上司200人に返答してもらった。役職は「主任・係長(下記では係長と表示)クラス」と「課長クラス」で、「実際に部下から質問されたと思って」返事を書いてもらった。最後の7通目を除いてフリーアンサー形式でお願いし、各回答の項目分け(各グラフ参照)はTech総研編集部が行った。

1.なぜ納期ギリギリで、残業すると分かっている仕事をさせるのですか?

もちろん仕事は前倒しではやるんやけど、
すぐに優先順位高い仕事がどんどんくるから、
ケツが決まるところからやるからこうなるんですよ。
後回しの仕事のツケでこうなっているのではないですよ。

(回路設計:36歳:係長)



・納期ギリギリの仕事も請け負えるということは、それだけお客さまに頼られている証拠。厳しい条件の仕事もキッチリ仕上げてくれると期待されているのです。(制御系SE:34歳:課長)

・仕事がなくてボーナスが出ない状況とどちらがいいですか? 残業だと分かっていても、自分のスキルアップだと思って頑張ってほしい。(運用・監視・保守:42歳:係長)

・仕事を選んでいる状況ではない。(オープン系SE:30歳:係長)

・それでもやる価値があるからだよ。(生産技術:33歳:係長)

・そういう会社だ! 嫌ならやめろ!(機械・機構設計:31歳:係長)

・君なら最短納期でやってくれると信じている。(ミドルウェア開発:34歳:係長)

・納期ギリギリなので、どうしても必要な仕事です。よろしくお願いします。(汎用機系SE:44歳:課長)

・安定した受注がない状況で、努力でカバーできるのであれば、受注する機会があれば仕事を取る。(制御設計:36歳:係長)


これも会社のためなんだ、分かってくれ!
 グラフにある「そういう仕事なので仕方がない」は少し厳しいいい方かもしれない。この中には、「いっぱいいっぱいの状態だから」「残業も含めて単価が決まっている」「必然性があるから」「ほかに回せないから」などが含まれ、そっけない言葉の中にも中間管理職の苦渋が見て取れるからだ。

 一方で目立つのは利益や収益に対する強い意識で、「お客さま」「次の仕事」「売り上げ」「企業の存続」などの言葉が並んだ。また、「君ならできる」「皆で頑張ろう!」といった励ましのフレーズも少なくない。その総意は「やむを得ないんだ」(社内SE:44歳:課長)なのだろう。


2.なぜ突発的な仕事が入ってくるのですか?

いままでの実績をお客さまに買われて、
突発的な仕事でもこなせると、
信用されているからだよ。

(オープン系SE:32歳:係長)



・会社は生き物なんだ。数カ月前の予定どおりに進むことは珍しいことだ。ルーチンワークではなく、こういった仕事をどうやって効率的に行えるか、そこに技術者の質が見えてくるんだよ。(回路設計:43歳:係長)

・システムは常に安定稼働するものではない。また、業務も平均的に発生するものではない。(汎用機系SE:40歳:課長)

・障害対応は予想が難しい。君たちがこの仕事を選んだ以上、少なからず突発的な業務は仕方がないものと覚悟してほしい。(ネットワーク:43歳:課長)

・仕事には必ず相手があります。突発の業務は問題もありますが、相手の立場も考慮しましょう。(ミドルウェア開発:36歳:係長)

・仕事の整理整頓ができていないことも大きな理由の1つだと思うが、われわれの担当がほかから頼られていることも事実だと思う。(運用・監視・保守:42歳:係長)

・私も同感である。組織的に改善していく。(制御設計:41歳:係長)

・未来が予測できたらそれは神。(半導体設計:40歳:課長)


おれたちの仕事って、そんなものじゃないのか?
 上司の回答から聞こえてくるのは、「好んで突発的な仕事を入れているわけではない」という声。しかも、「自社システムの開発じゃないのだからしょうがないでしょ?」(制御系SE:36歳:係長)という一方で、「仕様変更や現状の設計(設定)では運用不可能なことが判明」(社内SE:32歳:課長)との回答もあるから、職種に限らずエンジニア全般の問題のようだ。

 「仕事ってそんなもんだよ」(オープン系SE:36歳:係長)など、会社や社会の宿命であるという意見も多かったが、こうした人たちがほかの部署や業種の実態をどこまで知っているかは不明なので、「突発的な変更」は技術職特有の傾向かもしれない。


3.なぜいうことがコロコロ変わるのですか?

何が矛盾しているのかハッキリといいなさい!

(汎用機系SE:44歳:課長)



・いや、そんなことはないだろ。(制御系SE:34歳:係長)

・状況がコロコロ変わるから。(オープン系SE:43歳:係長)

・状況は毎日変化するからです。考えてないのとはまったく違います。(回路設計:36歳:係長)

・ごめんな。おれも上司に同じことをいったが、トップが意見を変えたのでどうしようもないらしい。(ミドルウェア開発:31歳:係長)

・本音で文句ばかりいっていては仕事にならないから。(ネットワーク:35歳:係長)

・おれもまだまだ修業中の身なんだよ。設計は奥深いんだ!(機械設計:31歳:係長)

・状況の変化に応じて業務指示が変わってしまうこともあります。目先の業務指示がコロコロ変わってやりにくいかもしれませんが、業務は「会社の目的を達成するための手段」と割り切って対応してほしいと考えています。(制御系SE:34歳:係長)


おい、いつ「コロコロと」変えたっていうんだ
 「状況や顧客の要望が変わるのだから仕方ない」という率直な回答が多く、「その変化に従って最善の努力をしている」などのコメントが続く。少なくとも上司にとって、「コロコロ(質問の書き方が悪かったのかもしれない)と変える」とは、非常に失礼な聞き方のようだ。

 そのため、「おれは意見を変えていない」という怒りを含んだ回答が多く、それ以外にも「根本は変えていない。ただし、業務では臨機応変に対応しなければならないシーンも多い」(ミドルウェア開発:36歳:係長)などの、「考え方自体は変えていない」と主張する人が目立った。日常生活でもポリシーのない人間と思われることを歓迎する人は少ない。間違っても口にしないように。


4.なぜいつもお客のいいなりなのですか?

いいなりのように見えるか?
それなら自分で打ち合わせをしてみなさい。
どれだけお客さまにも妥協をしてもらって
いるかが分かるはずです。

(ミドルウェア開発:31歳:係長)



・例えば、君がどこかの会社に仕事を依頼する場合、急にこうしたいとかああしたいだとかって考えが出たときに、それに対応してくれない会社に仕事を頼みたいと思うかな?(オープン系SE:32歳:係長)

・そんなことはない! 必要なことはきちんといっている。 (オープン系SE:37歳:係長)

・不当な要求には反論しています。しかし、目先の不利も先々の有利になるという長期的な視点に立って、お客さまのワガママも聞くことが必要です。これは、どんな商売であっても変わりません。(制御系SE:34歳:課長)

・Give and Takeで貸しをつくることは重要。(汎用機系SE:41歳:課長)

・お客さまの望むものを作るのがわれわれのミッションじゃないですか。(運用・監視・保守:42歳:係長)

・お客さまがいなければ会社は成り立たない、自分たちの自己満足で成り立つ会社はつぶれるからだ。(機械・機構設計:32歳:係長)


お金はもらっても心までは売らないぜ
 否定する回答が最も多かった質問。「いいなりになっていない」と書いた82人中、44人の上司がコメントも添えている。「当社に正当性があれば押し通す」「会社のアピールになる」「お客のためになるアドバイスをするのがプロだ」「一定レベル以上であれば意をくむ」「後工程に迷惑をかけないため」などで、最終的には顧客や自社のためになるという自負が感じられた。

 一方では、「顧客第一主義」「お客さまは神様」などの回答が同数の82人を占めた。しかし、その全員が本気でそう思っているかどうかは、彼らのみぞ知る。


まだまだ続く、上司の反撃!  

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