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第69回 不況期の転職者91%が「転職成功」と答えた理由

Tech総研
2009/10/22

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  転職時期によって、
年収増減に変化あり

 転職前後で給与はどう変わるのか──これが転職希望者にとっては最も関心の高い事柄だろう。今回の調査では、年収ベースで「増えた」人が52%と、かろうじて過半数を占めた。それ以外は「減った」人が30%、「変わらない」人が18%という内訳だ。

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 これを2006年調査と比べてみると、「増えた」人の割合は67%から52%にダウン、逆に「減った」人の割合が17%から30%と増加傾向にあり、転職による年収増が難しくなっていることが分かる。

 さらに今回の調査を転職時期との関係で詳しく見ると、1つ気になるデータを発見した。2008年10月の転職者では年収が「増えた」人が64%、「減った」人が14%だったのに対して、2009年5月の転職者ではその数値が逆転し、「増えた」人が25%、「減った」人が75%になっているのだ。

図5 転職時期別の年収増減変化

 転職時期によって年収の増減が変わっているということだ。不況が顕然化する前の昨年秋には転職による年収増加が例年並みに可能だった。ところが、不況の深刻度が増した今年5月には、転職によって年収が減ることを多くの人が覚悟しなければならなくなった、といえそうだ。

 ちなみに、こうした推移を金額ベースでたどってみると、図6のようになる。回答者の増減額を平均化し、それを並べたものだ。2009年1月までの転職では平均してプラスを示しているが、2月になるとそれがマイナスに転じ、さらに5月には175万円もの大幅な落ち込みを記録している。

2008年10月
74万円
2008年11月
63万円
2008年12月
23万円
2009年1月
60万円
2009年2月
-40万円
2009年3月
19万円
2009年4月
68万円
2009年5月
-175万円
2009年6月
-6万円

図6 転職時期別の年収額増減変化

 問題は、こうしたマイナス傾向が今後も続くかどうかということだ。一般的に、企業の人材採用は景気悪化の気配を真っ先に感じる一方で、景気回復については、かなり遅れて反映するものだ。企業の生産が回復したとしても、それが中途採用の増加、転職給与の増加につながるには、まだしばらく時間がかかりそうだ。

  91%が「成功」、
80%が「普通」以上の満足度

 調査分析を続けよう。今回の調査では、転職の満足度についても聞いている。ここでいう満足度には、必ずしも年収の増減だけでなく、前職で抱えていた問題、例えば「仕事量や雑務が多くなっていた」「会社の人間関係に不満を感じた」などの問題が、転職によって解消されたかどうか、という判断も含まれている。

 「今回の転職は成功したと思うか」という設問には、91%もの人が「成功」と答えている。また、「転職前に感じていた不満は転職後に解消されたか」という設問にも、64%が「解消した」と答えている。転職後の年収が減った人も少なくない中で、年収の満足度についても、「満足している」が43%、「普通」が37%だった。おしなべて転職の満足度は高いと見るべきだろう。ただし、年収の増減でその満足度は変わってくる。

図7 今回の転職は成功したと思う?

 先にも述べたように、満足度の度合いは、個々人による総合的な判断だ。なぜこのような満足感を持ったのかについては、個別のケースを紹介しよう。中には、派遣社員から正社員への転職を成功させた人もいる。


ナマゴエ!

【「転職は成功」と回答】

CASE1 400万円→440万円
残業減少、無理な計画なし、サービス残業なし、役職・給与上昇、意欲ある仲間が得られた
37歳/Web系アプリ開発

CASE2 600万円→1000万円
これまでは、仕事内容が自分のスキルに比べ、もの足りなさがあり給与も低かったが、転職後は自分のスキルを十分に発揮でき、満足のいく給与がもらえるようになった
37歳/オープン系アプリ開発

CASE3 420万円→420万円
正社員とは考えていなかったし、このご時世、派遣ですら厳しいだろうと思っていたが、前職の派遣元で以前の担当営業が声を掛けてくれ、たった2〜3日で話がまとまった。自分でも気持ち悪いぐらい高い評価を受けているらしい。結局ほとんど転職活動せずに落ち着いたのでよかった
33歳/運用・監視

CASE4 560万円→500万円
給与の低下については不満ありだが、企業としての安定性、また余暇の時間が増えたので、この点に関しては成功だったと思う
35歳/テクニカルサポート

【「転職は失敗」と回答】

CASE5 450万円→330万円
仕事の難易度が上がり、残業が増えたのに、給与はガタ落ちし、また職場の人間関係もしっくりきていない
39歳/運用・監視

CASE6 350万円→280万円
転職先は人間関係の良さで選んだが、中小企業なためか、売り上げに対して非常に敏感であり、仕事量もかなり多く苦労は変わらない。人間関係が良いだけまだマシだが……
24歳/汎用機系アプリ開発


  64%が「年収交渉した」。
その結果は──

 今回は年収決定前に、人事担当者などと折衝、交渉をしたかどうかについても聞いた。その結果、「面接時に年収に関する会話や交渉があった」とする人が64%を占めた。もちろん交渉すれば上がるという保証はどこにもないが、年収の話題を出すことは決して不遜(ふそん)でも、ワガママでもない。ただし、話題のもっていき方には注意が必要だ。今回の調査でも、「年収に関する交渉あり」と回答した人たちの方が、年収を増加させている。


ナマゴエ!

CASE7 560万円→500万円
いままでのキャリアをアピール、給与交渉に臨んだが、学齢テーブルで一律に決まっている、といわれ、前のキャリアの加点がなかった
24歳/汎用機系アプリ開発

550万円→650万円
転職すれば自分の評価はゼロからのスタートなので現在の年収より下がるのも当然と伝えたところ、逆にアップ提示された
38歳/汎用機系アプリ開発

CASE9 380万円→320万円
前職の金額を提示したところ、それは難しいと難色を示された。途中で会話が続かなくなってしまったのは失敗
34歳/生産管理

CASE10 500万円→600万円
いままでの年収を正直にいってしまうより、多少色を付けて交渉に臨んだ方が、希望額に近づけることができると思った
37歳/生産技術

CASE11 450万円→480万円
一番残業が多い時期の年収を基本に交渉した
27歳/Webアプリ開発

 不況下の転職は、採用選考が厳しくなり、かつ一定の年収ダウンも覚悟しなければならないなど、決して楽ではない。しかし、実際に転職にチャレンジする人は多いし、そこで満足度の高い転職を実現する人も少なくないことが、今回の調査から分かる。

 もし、本気で転職する気がある人ならば、不況だからと一様に尻込みするのではなく、絶えず転職市場の動きに目を光らせ、果敢にエントリーしてみるべきだ。これまで大企業の陰に埋もれて、存在価値を発揮できなかった中小企業やベンチャー企業が、対象として浮上してくる時期でもある。企業の知名度や給与の多寡だけにこだわらなければ、真の適職と出合うチャンスはまだまだ多いのだ。

この記事は、Tech総研/リクルートの2009年7月1日公開の記事を
再編集して掲載しています

 

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