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第77回 異業界・競合転職も不可避か? エンジニアの業種別年収

Tech総研
2010/7/9

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  低い製造業、ソフトウェア産業の給与満足度。
ほとんどが10年以内に転職を検討

 それぞれの業界にいるエンジニアたちの給与満足度や転職意向度はどんなものだろうか。給与満足度が高いのは、専門コンサルタント、医薬品・化粧品メーカー、総合商社、金融・保険系、化学・石油系、団体・連合会・官公庁系など、平均年収で高位を占める業界がやはり多い。ちなみに専門コンサルタント業の満足度がダントツで高いのは、もともと高給与であることに加え、個人の業績次第で年収が大きくジャンプする成果主義が徹底しているためと考えられる(表2)。

順位 業種 給与満足度
1位 専門コンサルタント系 67%
2位 医薬品・化粧品メーカー 47%
3位 商社系総合商社・素材・医薬品ほか 44%
3位 金融・保険系 44%
5位 化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 41%
6位 団体・連合会・官公庁 40%
7位 コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 39%
8位 教育 38%
9位 食料品メーカー 35%
10位 通信系 34%
11位 鉄鋼・金属メーカー 32%
11位 鉄鋼・金属メーカー 32%
11位 ソフトウェア・情報処理系 32%
14位 家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 31%
15位 自動車・輸送機器メーカー 30%
16位 インターネット関連系 29%
17位 精密機器・計測機器メーカー 28%
17位 総合電機メーカー 28%
17位 流通・小売系 28%
20位 医療機器メーカー 27%
20位 不動産・建設系 27%
22位 プラント・設備メーカー 26%
22位 その他メーカー 26%
24位 住宅・建材・エクステリアメーカー 25%
25位 その他IT・通信系 24%
26位 重電・産業用電気機器メーカー 23%
27位 機械関連メーカー 22%
27位 マスコミ系 22%
29位 電力・ガス・水道 20%
30位 サービス系 19%
31位 その他メーカー電気・電子・機械系 16%
32位 商社系電気・電子・機械系 13%
33位 繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 13%

表2 会社・業種別の給与満足度

 医薬品、化学など構造的に高給与の業種を除く製造業全体の満足度は、30%前後であり、金融に比べて低いことが分かる。ソフトウェア業種も同様だ。電力・ガス・水道などは実際の平均年収は高いものの、満足度は低い。これは推測だが、これら公共サービスの企業は、いまだ年功序列型の賃金形態が一般的で、そのため今回のような比較的若年層を対象にしている調査では、不満度が高まるのではないかと思われる。流通・小売り、サービス業では、平均年収も低く、同時に満足度も低いという結果になった。

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 給与の多寡は転職動機を形成する主要な要因の1つである。「現在、転職活動を行っているかは別として、2〜3年後ぐらいには転職する意思があるかどうか」を指標にした転職意向度で見ると、表3のような結果になった。安定業種と思われる、電力・ガス・水道で80%と高いのは意外だが、人材の流動化がそれほど活発ではないといわれてきた鉄鋼・金属、化学・石油なども50%台と、ソフトウェア・情報処理系の業種とほぼ同様に高い。医療機器メーカーやインターネット関連は一見、転職意向が低いように見えるが、「2〜3年後には」ではなく「現在、転職活動を行っていて、いますぐに転職する意思があるか」という設問では、医療機器メーカーが23%、インターネット関連15%と高い数字になっている。

 業界のいかんを問わず、回答者の転職意向は高い。「10年先には」という人は態度未定といえるにしても、「いますぐ」や「2〜3年後」というのは確実な未来。その割合が全体で78%に達するというのは、かなりの高率と見てよい。

業種 現在、転職活動を行っていて、2〜3年後ぐらいに転職する意思がある 現在、転職活動を行っていないが、2〜3年後ぐらいに転職する意思がある
電力・ガス・水道 0% 80%
マスコミ系 11% 56%
教育 0% 63%
食料品メーカー 13% 48%
商社系総合商社・素材・医薬品ほか 11% 44%
繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 11% 44%
鉄鋼・金属メーカー 6% 48%
化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 7% 48%
商社系電気・電子・機械系 8% 46%
コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 10% 44%
ソフトウェア・情報処理系 8% 45%
金融・保険系 20% 32%
総合電機メーカー 14% 37%
精密機器・計測機器メーカー 5% 45%
住宅・建材・エクステリアメーカー 25% 25%
専門コンサルタント系 6% 44%
その他メーカー 16% 32%
自動車・輸送機器メーカー 10% 38%
半導体・電子・電気部品メーカー 7% 41%
サービス系 6% 42%
不動産・建設系 13% 33%
家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 14% 31%
その他IT・通信系 9% 34%
通信系 14% 28%
機械関連メーカー 9% 33%
流通・小売系 7% 34%
重電・産業用電気機器メーカー 8% 33%
医療機器メーカー 0% 41%
その他メーカー電気・電子・機械系 6% 35%
団体・連合会・官公庁 20% 20%
インターネット関連系 4% 36%
医薬品・化粧品メーカー 3% 29%
プラント・設備メーカー 0% 32%
総計 9% 41%

表3 会社・業種別の転職意向度

  より高い年収を目指して、
異業種転職も視野に入れる

 将来、かなりの率の人が転職を希望しているわけだが、転職先に同業種を選ぶか、異業種を選ぶかは大きな違いだ。「同業種の方が職務内容や経験が生かせて安心だ」とはいうものの、業界全体が不況に陥っている業種では、そもそも同じ業界の転職は募集案件が少なく、チャンスが少なくなる。もし、エンジニアの専門性を生かして、ほかの業界に転職することを受け入れれば、それだけチャンスは広がることになる。

 同一業界の競合会社への転職について興味があるかどうかを聞いてみた結果が、表4だ。「興味がある」という回答率が高い(50%以上)のは、インターネット関連、医薬品・化粧品メーカー、家電・AV機器・ゲーム機器メーカー、金融・保険系、食料品メーカー、繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカーの6種。反対に「興味がない」という回答率が高い(50%以上)のは、団体・連合会・官公庁、教育、総合商社系、不動産・建設系、専門コンサルタント系など7種だった。

順位 業種 ある あるが無理だと思う ない
1位 繊維・服飾雑貨・皮革製品メーカー 67% 0% 33%
2位 食料品メーカー 57% 26% 17%
3位 金融・保険系 56% 16% 28%
4位 医薬品・化粧品メーカー 56% 26% 18%
5位 インターネット関連系 52% 11% 38%
6位 家電・AV機器・ゲーム機器メーカー 52% 19% 30%
7位 総合電機メーカー 47% 19% 33%
8位 自動車・輸送機器メーカー 47% 22% 32%
9位 その他IT・通信系 46% 21% 33%
10位 ソフトウェア・情報処理系 46% 19% 35%
11位 専門コンサルタント系 44% 6% 50%
12位 マスコミ系 44% 11% 44%
13位 通信系 43% 23% 34%
14位 鉄鋼・金属メーカー 42% 23% 35%
15位 医療機器メーカー 41% 23% 36%
16位 コンピュータ・通信機器・OA機器関連メーカー 41% 27% 32%
17位 不動産・建設系 40% 7% 53%
18位 電力・ガス・水道 40% 20% 50%
19位 半導体・電子・電気部品メーカー 38% 23% 38%
20位 その他メーカー電気・電子・機械系 38% 17% 45%
21位 化学・石油・ガラス・セラミック・セメントメーカー 36% 20% 44%
22位 流通・小売系 34% 17% 48%
23位 その他メーカー 32% 23% 45%
24位 プラント・設備メーカー 32% 42% 26%
25位 重電・産業用電気機器メーカー 31% 28% 41%
26位 機械関連メーカー 31% 21% 49%
27位 サービス系 30% 23% 47%
28位 精密機器・計測機器メーカー 26% 29% 44%
29位 教育 25% 0% 75%
30位 住宅・建材・エクステリアメーカー 25% 25% 50%
30位 商社系電気・電子・機械系 25% 25% 50%
32位 商社系総合商社・素材・医薬品ほか 22% 22% 56%
33位 団体・連合会・官公庁 0% 0% 100%

表4 「競合会社への転職について興味・関心がある」会社・業種ランキング

 たとえ、同じ業界のライバル企業への転職に興味があっても、その可能性が低い場合はどうするだろうか。転職をあきらめてしまうのだろうか。そこで浮上するのが異業種転職の可能性だ。異業種転職とは、例えば食料品メーカーの生産技術系のエンジニアが、工場での生産ライン設計の経験を生かして、別の製造業種やプラント設備会社に転職するような場合だ。まったく同じとはいえないものの、ベルトコンベアラインの配置やそれに伴う電源設備の知識などは異業界でも十分生かせる。

 あるいは金融・保険系で大規模なトランザクションを処理するインターネット・バンキングシステムを構築してきたようなエンジニアであれば、そのネットワークやデータベースの知識をSI業界やオンライン・ゲーム業界のインフラ整備に生かせる。このように、自分の専門と経験がほかの業界でどのように生かせるかを調べることで、転職のチャンスを広げるエンジニアが最近増えている。

 もちろん、特殊な領域では異業種からのエントリーに難色を示す企業がないわけではないが、エンジニアも1つの専門性を極めると、例えば財務や経理の専門家と似て、そのスキルはかなりの部分で汎用性を持つものだ。いわばどこに転職しても“つぶしが利く”汎用的な専門性を身に付けることがこれからは重要になる。

 このように異業種転職の壁が低くなれば、同じ仕事でも、いつまでも同じ業界、同じ会社ではなく、より給与の高い業界に転職して継続するという選択の可能性が高まる。業界構造や企業規模の違いで、給与格差がなかなか縮まらないのだとすれば、なおさらその壁を越える異業種転職に向けた戦略が、年収アップを考えるうえでは重要なステップになっていくだろう。その材料の1つとして、今回の会社・業種別平均年収の調査を生かしていただければうれしい限りである。

この記事は、Tech総研/リクルートの2010年5月17日公開の記事を
再編集して掲載しています

 

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