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ITエンジニアの働く環境を考える

第1回 サイボウズ、「育児休業6年」の真意は

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/5/31

育児・休業制度の実際

 この制度では育児・介護休業ともに「最長6年間休業可能。休業回数は特に定めない」としている。「6年の範囲内であれば何回でも休業できるところも特徴の1つです。6年間まるまる休むことも可能ですが、より実生活に基づいた使い方として、例えば一度復帰したけれど、子どもが入院したのでちょっと休職するというようなことが何回でもできます」という。

 復帰後には短時間勤務制度が利用できる。「週3回、10〜16時のように、正社員のまま短時間働くことができます。これが一番使いやすい部分だと思っています」。短時間勤務制度には期間の上限はない。週に何日出勤で1日何時間勤務なのか、給与が時給なのか月給なのかも、会社と本人が話し合って決めるというやり方だ。「育児休業から復帰後、子育ての都合に応じて勤務時間と曜日を選べるというのは大きなメリットになると考えています」

 現在のところ、育児休業を取得後に復帰した社員は2人で、取得中を含めた利用実績は6〜7件とのことだ。男性の取得例もある。

 休業にしても短時間勤務にしても、周囲のメンバーの協力が必要になってくるだろう。その点については椋田氏は「育児休業から復帰して短時間勤務をしている社員の様子を見ても、現在のところは順調に円滑に業務が回っているので、周りの社員の協力について懸念するところはあまりないです」という。「もともと社内に、家庭とバランスを取りながら働こうという文化があります。自然に社員同士で補い合おうとする雰囲気ができていて、人事にとってはありがたいですね。既婚者も多く、男性だと以前から実施している時差出勤制度を使って、子どもを保育園に送ってから出社するという人が多いです」という。

 ITエンジニアの産休や育休に関して、この業界ではとかく過酷な話ばかりが聞こえてくる。「妊娠が分かって仕事量の調整を申し出たが聞き入れてもらえず、徹夜続きで体を壊した」「臨月になっても引き継ぎ人員が着任せず、休ませてもらえない」など。椋田氏は、「受託をしていない、自分たちのペースでものづくりをしているメーカーだからこそできる制度かもしれない」としながらも、「そういう人たちにもサイボウズに来てほしいですね。制度が整っている環境に行きたいと願っている人たちに魅力的なものを提供し、人材確保につなげていきたい」と語る。

 なお、短時間勤務制度は、今年2月のタイミングで育児・介護に限らず相応の理由があれば取得ができるようになっている。

コツコツ長く働きたい人向けの「年功重視型」

 サイボウズの「ワーク・ライフ・バランス支援制度」のもう1つの特徴、年功重視型の人事制度について、椋田氏は「イメージとしては総合職・一般職に近い」と話す。従来の成果重視型に加えて導入されたもので、「『選べる人事制度』と呼んでいます。自分に合った方を選べることによって、長く働ける会社を実現できると考えたのです」ということだ。

 個人の成果を評価する成果重視型に対し、年功重視型制度では、基本的に個人の成果は査定しない。評価は勤務年数と日々の勤怠によって行い、評価が良ければ安定して昇給する。賞与の額も勤怠評価に連動する。給与の上限は650万円。社員は1年に1回の区切りで、どちらかの人事制度を選択することができる。

 とはいえ、社員が何度も選び換えるということは想定していない。「年功重視型の給与の上限を650万円としているので、現在給与が800万円の社員が移るということはあまりないと思います。そういった社員の場合、もし何かあれば、短時間勤務制度を利用するなどほかの手段が使えると考えています。

 『育児や介護やそのほかの理由で決まった時間以外働けなくなり、コツコツと長く働くことも自分の役割を全うすることもできるが、いままでと同じ働き方はきつい』という社員が年功重視型に移ることを想定しています。それから新卒でそういう働き方を望む人です。自分の時間は確保して、決められた時間の中で長くコツコツと働いていきたいという、最近増えてきているニーズに応えるための制度です」

より多くの人がより長く働ける会社に

 「より多くの人が、より長く働き続けられる会社に」というサイボウズのメッセージは、これらの新制度によって徐々に社内に浸透してきているようだ。実際、離職率は半減しているという。「これなら育児と仕事を両立できる」という声も多いそうだ。

 「すぐには使わないにしても、何かのときに使えるという安心感があり、なおかつ実際に使っている社員の実績もあります。『自分に何かあったときにも、ここで働き続けられる』という安心感が、他社にはないところだと思いますね」

 椋田氏は、「長く、何十年も働く人がいられる会社にしたいと思っている」という。「その人たちが後輩に自分の経験を伝えることによって、後輩たちも学び、その繰り返しで会社が成長すると思っています」

 サイボウズにおける人事制度の考え方は、「1人1人と雇用契約を結ぶのが最善」というもの。しかしそれは現実的ではない。

 そのため「サイボウズに来てほしい人たちに合わせた人事制度をつくり上げていくことが目標です。今回の内容以外にも、要望があれば都度つくっていきたい」と椋田氏は今後の取り組みについて語った。

 

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