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ITエンジニアの働く環境を考える

第4回 ITエンジニアを癒します。「癒し本部 お祭りか」

長谷川玲奈(@IT自分戦略研究所)
2007/12/11

在宅勤務、短時間勤務、休職して復帰……。多様化するITエンジニアのワークスタイル。これらを支えている企業の取り組みを紹介する。今後の働き方を考える際のヒントとしてほしい。

「癒し本部 お祭りか」の謎

 2007年10月のある日、@IT自分戦略研究所の記事についての問い合わせを受けた。ITエンジニアの趣味についての調査記事に関する内容だ。問い合わせた方の所属を見ると、「癒し本部 お祭りか」とある。見慣れない部署名に、一瞬戸惑いを覚えた。

 「癒し本部」というからには、癒しに関係する部署なのだろう。しかし、何を癒すのだろうか。「お祭りか」とは何だろうか。興味を覚え、問い合わせてみた。

 回答は以下のようなものだった。「癒し本部は、その名のとおり社員の『癒し』をミッションとしています。お祭りかは社内広報部の機能を持ち、社内報発行とイベントサポートを中心に活動しています」。記事についての問い合わせも、社内報作成に関するものだった。「ITエンジニアの癒し」をテーマとする部署の取り組みは、ITエンジニアの働く環境向上の参考になるに違いない。ますます興味を持ち、取材を申し込むと快諾してくれた。

 「癒し本部 お祭りか」を擁するユー・エス・イーは、ERPパッケージ導入のコンサルティングから開発・保守、Webシステム開発などを行うシステム開発会社だ。約540人の社員のうち、500人近くがITエンジニアだという。同社 癒し本部 お祭りか 山見容三氏と小野歩氏に、この部署の成り立ちと活動、社員の反応などを聞いた。

ITエンジニアを癒す、癒し本部 お祭りか

 癒し本部は、社員の給与や社会保険などに関する業務を行う労務部と、前述のように社内報発行とイベントの運営を行うお祭りかに分かれている。お祭りかの設立は1990年。ITエンジニアである社員を癒し、互いの交流を深め、成長を促すことがその目的だという。

ユー・エス・イー 癒し本部 お祭りか 山見容三氏

 「業種柄、お客さま先に常駐して業務を行うITエンジニアも多く、現在も全体の3〜4割に上ります」と山見氏は説明する。「1人や2人で常駐する社員もいるため、帰属意識が低下してしまう恐れがありましたし、PCと1対1で長時間仕事をしていることで人間的な視野が狭くなってしまうのではという思いも、設立の背景にはあったようです。社内イベントや社内報の発行により、社員同士の縦横のつながりを深め、かつ癒していこうということで癒し本部 お祭りかは設立されました」

 もともと社内イベントは多く、現在も毎月実施している誕生会は、お祭りかの設立以前から行っていたという。1970年の会社設立以来、管理部門が中心になって運営をサポートしていた。お祭りかの設立により、その業務は移管された。

 気になる「お祭りか」の名前について、山見氏は「社長(代表取締役社長 吉弘文平氏)の『お祭りのみこし担ぎのように社内を盛り上げ、社員に喜び、楽しみを与えたい』という思いから『お祭りか』と命名されたそうです。社長独特のインスピレーションですね」と話す。

 お祭りかの部員は現在3人。管理部門のスタッフもサポートに入り、「現場のITエンジニアを癒す」という。

「気付き」を得られる誕生会

 お祭りかのメイン業務について見ていこう。

 社内報「お祭りかNEWS」は、1〜2カ月に1回の発行。「社員の視点からの、社員のための社内報という位置付けで、企画の発案から編集、印刷、配布まですべて社内で行っています」(山見氏)

社内報「お祭りかNEWS」

 カラー12ページの冊子は、趣味を楽しむ社内のITエンジニアの紹介、外部から見たユー・エス・イーの印象など、インタビューを中心とした盛りだくさんの内容だ。これをお祭りかのメンバー3人で作成する。山見氏は「『社内情報の共有』と『やる気あふれる社内環境づくり』を主な目的として、社内のあらゆる情報を発信しています。正直、大変です」と笑う。

 もう1つのメイン業務が社内イベントの運営だ。山見氏は「イベントの豊富さは、他社とは比べものになりません。聞いた方は皆さんびっくりされます」という。

 前述した誕生会は、その月に誕生日を迎える社員を社内のイベントホールに集め、ほかの社員が祝うというもの。現在は講演会と懇親会の2部構成になっており、東京周辺で働く社員を中心に、毎月150人ほどが参加する。「100人を超える人から誕生日を祝ってもらったのは、当社に入るまでなかったですね」と小野氏は笑う。

 講演会は外部から著名人を招いて行う。落語家や浪曲師など、古典芸能のプロが多いそうだ。講演のテーマは「気付き」。「自分の知らない世界を見て、聞いて、感じて、何かに気づき、明日からの成長に生かしてほしいという、社長の強い思いから始まったものです」と山見氏は話す。「芸を披露しつつ、気付きをうながすような話をしていただいています。笑いながら、楽しみながら癒され、かつ気付きを得られるという、大変有意義な時間です」。これが、ひいては社員の成長にもつながる。「講演会後に社員にアンケートをしています。『(講演者のように)自分も夢を実現するため頑張りたい』『1人で何時間も話す技術を身に付けたい』『感謝する気持ちがどれだけ大切か知った』などのコメントを見ると、『気付きを得て今後に生かす』という目的は果たされていると感じます」(山見氏)

 懇親会では、誕生月の社員はお祝い金、お祝い品、花を贈呈される。お祭りかとスタッフ部門の手作りの料理を楽しみながら、社員同士や経営陣が親睦を深めるという。

 しかし、ITエンジニアという職種は多忙だ。イベントに参加することは可能なのだろうか。山見氏は、「忙しくて来られない社員は正直います。ですが、出たくないという社員は少ないですね」という。

 自分の誕生月に仕事が忙しくて出られなかったので、翌月参加したいという問い合わせも多いそうだ。「その場合は柔軟に対応しています」(山見氏)という。出席できなかった社員はお祝いの繰り越しができる。連絡すれば、翌月でも翌々月でもお祝い品一式が贈呈され、誕生日を祝ってもらえるのだ。

「秋の味覚パーティ」って何?   


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