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材紹介会社のコンサルタントが語る
第2回 業務経験を補い、転職の武器となるもの

リーベル
代表取締役
石川隆夫
2002/10/9

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを、@IT ジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

最初の転機

 今回は1つ1つの転機を確実にキャリアアップにつなげた井上氏(仮名30歳)と、語学留学後海外からの転職活動に成功した高山氏(仮名27歳)の事例を紹介しましょう。

 井上氏は、大学の理工系学部を卒業後、某大手電気メーカーに入社、そこで電力制御システム部門のソフトウェア開発に携わったのですが、翌年には米国へ留学するために退社しました。米国のコンピュータ・サイエンスの修士課程を修了した後、某外資系のコンピュータベンダに採用されて帰国し、SCMのコンサルタントとしての道を歩みました。このころにコンピュータ関連の各種資格も取得したそうです。井上氏は今年、これまでの実績を踏まえ、大手コンサルティングファームに転職したばかりです。

 ここまで紹介した井上氏の経歴ですが、転機は大きく2度あります。1つは大手電気メーカーを退職し、米国に留学したこと。彼は大手電気メーカーに就職しましたが、その仕事をしながらも、どうしても自分の将来が浮かばなかったというのです。そのとき、米国の大学院で学びたいという希望があったことから、思い切って会社を退社して渡米したのです。

 米国の大学院を簡単に卒業できたわけではないと、井上氏は当時のことを説明してくれました。当初は語学学校へ通ったそうですが、それでもヒアリングには随分と苦労したとのこと。そのかいもあり、英語力はアップし、無事大学院の修士課程を終了。そして、米国のジョブフェアで外資系のコンピュータハードウェアベンダに採用され、日本に帰国したそうです。

 もし、井上氏が最初の退職時に米国留学しなくても同じような転職ができたかどうかといえば、もともとの経験(電力制御システム)が特殊な分野だったため、需要は少なく、ほかの業務知識がないために難しかったであろうと思います。しかし、米国の大学院でコンピュータ・サイエンスの修士を取得することで、経験以上のポテンシャルを得、それを武器に次の就職先が決まったようなものです。なお、当時はIT業界の景気が良かった点も幸いしたと思います。

2度目の転機

 井上氏が外資系のコンピュータベンダに入社して幸運だったのは、現在脚光を浴びているSCMの仕事に携われたことでしょう。これは、前職がメーカーで、物作りの現場を知っていると判断されたからのようです。ERPパッケージの導入支援にかかわり、それに関連する認定資格も取得しました。そうして、SCMのコンサルタントとして実力を付けることができたのでした。

 そして次は、この分野で最も強いコンサルティングファームで自分の力をさらに伸ばしたいと考えていたところ、人材紹介会社を紹介され、私どもの会社に相談に来られたのです。しかし、当時井上氏が希望していたコンサルティングファームは、会社合併などのため採用を事実上凍結していました。とはいえ、井上氏はこの分野で経験をかなり積んでいたので、こちらで人事の担当者にぜひレジュメを見てほしいと強く依頼しました。その結果、人事面接を行うことになり、面接で高い評価を得て、採用枠を凍結していたにもかかわらず、特別枠で採用されたのです。

思いを実行に移す決断力が重要

 井上氏が大学卒業後、同じ会社で同じ仕事をしていたら、現在の市場価値はどうだったでしょうか? 優秀な方なので、その会社で一定の評価は得ている可能性はあるでしょう。特定のソフトウェア開発一筋で30歳というと、一般にはまじめにやってきて、市場価値が高いと思われるかもしれませんが、しかし、転職市場での価値という点では、転職市場での価値は低く、条件によっては転職は難しいだろうと思います。少なくとも、世界的な大手コンサルティングファームへの転職の可能性はゼロだったことは間違いありません。

 これまでの井上氏の経歴でキャリアアップにつながり、高い転職市場価値を得られるようになった理由は何でしょうか? それは、その時々でキャリアアップの「思い」を実行に移す強い決断力・実行力とそのタイミングがあったからだと思います。

 1年半で会社を辞めて留学する決断。2回目の転職の決断と実行。今回の転職でも転職活動を最優先させる意志を持っていました。その結果、それに促され、私も企業への働き掛けを強く行い、極めて狭い可能性をモノにすることができたのです。強い意志があれば、チャンスも自分に向いてくる好例だと思います。

語学留学からの転職

 高山氏は大学院卒業後、大手通信系キャリア会社に就職しましたが、入社前に想像していた実力主義といった社風とは異なり、年功序列の社風に合わずに転職を考えるようになったそうです。しかし、転職を考えるうちに、1年間の語学留学も検討しました。それは、1年間自分が海外で語学を勉強しても、1年間のブランクでは業務知識にそれほど差は出ないが、今後20年は使うであろう英語力を高めることは、今後の人生にとって有効であろうと考えたからです。結局高山氏は、オーストラリアへの語学留学を選びました。

 そして1年の語学留学を終えて帰国に備え、3社の人材紹介会社に登録しようとして、オーストラリアから私どもの人材会社に連絡があったのです。

 通常であれば、人材紹介会社で実際に面談を行ってから紹介しますが、海外在住ということと、できるだけ早く就職できるようにとの配慮で、面談の代わりを電話や電子メールで行った結果、自信を持って紹介できる方と確信し、帰国前に企業への応募をすべて行っておきました。

 結果は、1カ月で3社の内定を得ることができ、大手シンクタンクの希望職に就くことができたのです。高山氏が素晴らしいのは、語学留学を20年ものスパンで考えて実行したことです。しかし、今回の就職では特に英語力を武器にしませんでした。語学はいずれ役に立つとの考えで、今回の転職は、自分のやりたい仕事内容から会社を選んだのです。さらに、海外から日本に就職する際に、人材紹介会社をうまく活用した好例のような気がします。



筆者プロフィール
石川 隆夫(いしかわ たかお)●株式会社リーベル 代表取締役 石川 隆夫 1949年福島県生まれ。東芝入社後、コンピュータおよびその関連機器の設計・開発を経て、本社のコンピュータ・ネットワークの商品企画、海外事業の立ち上げ、マーケティング、広告、広報などを担当。幅広い業務経験と業界各社・動向の深い知識が強み。2000年にリーベルを設立、現在に至る。@ITジョブエージェトを通じて@IT読者の転職支援も行っている。

 

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