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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第9回 エンジニアが転職を考える瞬間

リーディング・エッジ社
加藤千尋
2003/05/21

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

エンジニアからのキャリアチェンジ

 エンジニアから、時々、他職種への転職相談を受けることがある。いわゆるエンジニアからのキャリアチェンジである(同職種での他社への転職は除く)。たいていは、この業界に入り1〜2年の経験者からだ。

 相談内容は「自分はエンジニアに向いていないのでは……」「(忙しすぎて)自分の時間が持てない」などである。ほかに何かやりたいことがあるから転職したいというわけではない。エンジニアが転職を考え始めるきっかけは、大別すると2つある。1つ目は「自己評価の低さにより自信喪失」した場合、2つ目は単純に「現在の仕事がイヤになった」場合だ。

 エンジニアとしてスタートした当初は、新しく覚えることばかりで楽しさを感じるようだが、この業界の常として、納期が迫り、残業の連続になったり、自分の持っている能力以上のものを求められると、そこから進めなくなり自信喪失してしまうことも多いようである。

  弊社は人材派遣会社ということで、登録いただいているエンジニアは、「客先への常駐」という勤務形態になる。その際、エンジニア本人の自己評価と客先からの評価がかなり異なるケースがある。

 明らかにエンジニアに向かない人の場合、自分からではなく、周りの人からそのような話が出るのだが、自己評価のあまり高くないエンジニアの場合、比較的周りの評価は高かったり、エンジニアとしての適性があると思われている場合も多い。

 また、上司はその人の力を伸ばすために、常にその人の持っている能力よりも少しレベルの高い仕事を与えるであろう。だからこそ、エンジニアとして成長できるのだと思う。 すぐに結果を出してもらいたい仕事もあるが、自分の力以上の仕事を担当させられた場合、それをこなすのに多少の時間がかかっても、それは「上司があなたに経験を積ませたい仕事なのだ」と思えば、少しは気が楽になるのではないだろうか。

業界内での“職種チェンジ”もある

 他職種への転職相談を受けた場合、「単なる自信喪失」ということであるなら、以前の自分を振り返ってもらっている。例えば、営業職の場合でも、半年前や1年前と比べて明らかにスキルアップしていることが大半である。

 だから、実現困難なプロジェクトであっても途中で投げ出さずに、最後まで責任を持って対応してほしい。最後までやり遂げれば必ず何かが残るものだということを、最低でも1度は経験してもらいたいと思う。

 エンジニア経験が1〜2年の場合、できればもう1年頑張り、その時点でいまの自分をもう1度振り返ってもらいたい。それでも気持ちが変わらなかったら、そのときに転職を考えても遅くないのではないだろうか。

 どうしても「やりたくない」「1年はガマンできない」と思う場合、引き留めることは難しいが、どの業界に行っても同じことが起きる可能性があることを重ねていいたい。エンジニアという職種だけでなく、どの職業に就いても、ある一定の期間で仕事上の壁が必ず訪れるはずである。1度「もうこの仕事をやりたくない」「自分には向かない仕事」と感じたのならば、完全にクリアにすることは難しい。

 それならば、同じ業界の中での“小さな転職”はどうだろうか。エンジニアといっても、仕事内容は多岐にわたり、その中のある1分野の仕事をうまくこなせなかったからといっても、すべてのIT業務に不向きという話ではない。だれでも簡単にできるわけではないが、例えば、プログラマからネットワークエンジニアに転向したり、その逆の“職種チェンジ”もあるだろう。

  また、プログラマとしてスタートした場合、ほかのエンジニアと比べてプログラムの開発能力が劣る場合でも、数年たてばSEとして成功する人もいるとよく耳にする。

やりたいことがあるから転職する

  技術スキルだけが優れていればよいという時代から、技術スキルに合わせて、コミュニケーションスキル、ヒューマンスキルが重要視されるようになってきた。時代が変化するとともに、エンジニアに求められるスキルも変わってきている。スタート時点での評価が良かった(悪かった)からといって、将来も評価が良い(悪い)とは限らないことは、どんな職種においても同じだ。

 あるエンジニアの場合、約2年間ネットワーク関連の仕事を中心にしていた。そして、ホームページの作成など簡単なプログラム開発を行った経験から、もう少し本格的にプログラマの仕事をしたくなり、開発プロジェクトに参加した。

 ところが同じプロジェクトのほかのプログラマと比べ、生産性が劣り自信喪失してしまった。特に評価が悪かったのではないのだが……。

 そのエンジニアからの相談は、「もうエンジニアの仕事を辞めたい」「この業界から離れたい」というものだった。ところが、少し「休養期間」をおいた後に、(気分一新したようで)ネットワークエンジニアの仕事に戻っている。最近では、再度プログラム開発にチャレンジしたいという話も聞いている。

 また、転職の例ではないが、ほかのあるエンジニアの場合、サポート系の仕事(約10年の経験)からプログラム開発にもかかわりたいとの相談を受けた。そして、プログラムの実務に即した研修に参加してもらった。

 その結果、(プログラマの仕事に対する適性について)自分と周りの人の評価がほとんど一致し、プログラム開発に関しては、今後も自己啓発の1つととらえて取り組んでいくようだ。現在のサポート系の仕事を見直すきっかけにもなり、いまはモチベーションも上がり、前向きに仕事に取り組んでいる。

 自分を客観的に見ることは難しいが、短期間ですべての答えを出してほしくない。時間は無限ではないが、特殊な場合を除き、時間を限定しすぎると、ある一定の位置から前に進めなくなるのではないだろうか。

 仕事はどんなに経験を積んでもこれで完全に満足できるというものではない。何かが不足していると感じるからこそ、人は進歩していくのだと思う。もちろん、転職することが悪いのではない。「やりたくない仕事」であるから転職するのではなく、「やりたいことがほかにある」から、「転職する」という考えを持ってもらいたい。


筆者プロフィール
加藤 千尋(かとう ちひろ)●某電気メーカーの教育専門会社に就職し、法人向けコンピュータのインストラクターやシステムの提案業務を担当した後、技術系の人材派遣会社に就職、現在に至る。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者への派遣案件紹介も行っている。

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