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人材紹介会社のコンサルタントが語る
第14回 “稼げる技術者”しか生き残れない

テクノブレーン

片岡 大道
2003/10/17

求職者は、人材紹介会社のコンサルタントに転職相談だけではなく、職場の不満、自分の夢などを語ることが多いという。そうした転職最前線に身を置くコンサルタントだからこそ知っている、ITエンジニアの“生”の転職事情や転職の成功例、失敗例などを@ITジョブエージェントの各パートナー企業のコンサルタントに語っていただく。

稼げる人材か、稼げる素養を持つ人材になる

 いま企業が求めている人材を一言でいえば、“稼げる人材”です。企業は「3の投資で10の成果を挙げられる人材」を求めています。強いキャリアを持つ人材はもちろんのこと、キャリアの浅い人材についても、短期間で成果を挙げられる可能性があるならば、“稼げる素養を持つ人材”として評価します。

 昨今、企業は中途採用を増やして新卒や未経験者の採用数を減らす傾向にあります。ただ、いままで以上に即戦力となり得る人材を求めているということは、経験者にとって絶好のチャンスが訪れているともいえます。この大きな雇用情勢の変化である「Change」を「Chance」ととらえることができるかどうかが、転職成功の大きな鍵になります。

 では、なぜ最近になって、中途採用の比率を高めている企業が増えているのでしょうか。それは企業経営にも“スピード”が求められているからです。特にIT業界はそれが顕著です。なぜならば、技術の世界は国境がない“One World”で、欧米で新しい技術、製品が開発されたら、即座に日本へ持ち込まれてきます。

 そして、企業が生き残るには、新技術、新製品を世界と同時に知り、国際基準を知ったうえで、自分たち独自のやり方、付加価値を加えて新たな商品やサービスを生み出していかなければなりません。IT業界はスピード重視の業界なので、そのような環境で活躍し、成果を挙げられる人材が必要とされるのです。

技術や人材の「国境」がなくなる時代!

 今後は技術だけでなく、人材においても国境がなくなり流動性が激しくなることは確実です。現に日本でも、多くの外国人エンジニアが活躍しています。例えば中国人、インド人、欧米人。世界の人口の4人に1人は中国人ですから、今後中国人と一緒に仕事をする機会はますます増えていくことでしょう。

 では技術や人材の国境が取り払われていくような環境の中では、どのように自分のキャリアを考えればいいのでしょうか。

 それは突き詰めれば、“自分の生き方や価値観”の問題です。どれだけの覚悟を持っていまの仕事に取り組んでいるのか、が極めて大切です。そうでなければ5年後、10年後のキャリアデザインを明確に描けないのではないでしょうか。

 学歴重視の社会ではなくなり、大企業に勤めているからといって、雇用が安定しているという時代でないことは、皆さんもご存じのとおりです。自分のスキルやキャリアに磨きをかけていかなければ、企業と同様に、生き残れない時代に変わったことを十分に認識する必要があります。

 そこで大切なのは自分のキャリアを常に磨き続けることです。自分の仕事を確実にこなし、キャリアの土台をしっかりと作ることです。そのためには一歩一歩階段を上がるように地道に進むこと。決して焦ってはいけません。エレベーターを使って上がらず、足、腰を鍛えながら、1段ずつ上がっていく姿勢が大切です。

自分が「できること」「できないこと」を確認しよう

 その姿勢を忘れずに仕事をこなしていけば、必ず自分の力になります。そして、自分の「できること」と「できないこと」を把握できるようになります。自分の弱点を理解し、いかに強みに変えていけばいいのか。得意分野を一層強固にするには、「できること」や「できないこと」を理解し、今後何をしたらよいかを知ることです。

 その考え方はキャリアを伸ばすために大切です。企業からみても頼もしい人材に見えますので、そのような人には企業も“投資”を惜しまないことでしょう。

 また、「自分がなぜこの会社で働いているのか?」と問い掛けることも必要です。生活のために働くということもあるでしょうが、それだけでは危険です。自分の生き方や価値観に基づいて仕事を選んでください。そうでなければ、どこかでキャリアが行き詰まります。自分のキャリアデザインに照らし合わせてみることが重要です。

 さらに、おびただしい情報が氾濫する中、一過性の情報に惑わされないようにすることも大切です。自分の仕事や生き方、価値観を忘れず、いかなる状況においても腰を据えて自己投資し続けていくことが、強いキャリアを考えるうえで重要なのです。

典型的な3つの転職失敗例
   
 では、ここで典型的な転職の失敗例を挙げましょう。

 (1)転職の動機が不明確なケース。いい換えれば、本気でなかった。多くの情報に惑わされ、時代に乗り遅れまいとして転職してしまった。自分のキャリアデザインに見合った動機ではないということです。

 (2)職種で選ぶのではなく、有名な会社であるとか、年収が高いという理由だけで選んでしまったケース。給料は会社に貢献した対価として受け取るものです。自分ができること、やりたいことと会社が求めていることが一致して初めて転職先で活躍でき、必要とされるわけです。それらの点が一致していなければ、いずれ壁にぶつかるものです。

 (3)Uターン人材に多く見られるケース。地元に戻ることを優先しすぎ、仕事内容を慎重に検討しなかったため、せっかく転職してもミスマッチな結果となり、東京に戻ってくる人もいます。東京に戻って再転職できるうちはいいのですが、結局あきらめてしまう人もいます。

 大切なのは自分のキャリアデザインに合った動機、仕事内容で転職先を選ぶことです。そうすれば新天地でも必ず活躍できます。

会社選びと面接時の注意点

 では次にどのような基準で会社を選べばいいのでしょうか。まず独自の技術や商品、サービス、事業戦略など、ほかの企業に対して確固たる差別化要因を持っている会社です。つまり、その会社が商品やサービスについて価格決定権を持っているかどうかが、1つの判断基準になります。そうした条件を備えた会社でなければ、将来発展することは難しいと思います。もちろん、そのような会社に転職しても受け身の姿勢で仕事をしている限りでは、同じ結果を招くと思いますが……。

 最後に面接時に注意する点を挙げましょう。まず会社訪問時(受付窓口)から面接は始まっていると思ってください。訪問前に身なりを整え、第一印象に注意を払うこと。そして面接が始まったら、なぜこの会社に面接に来たのかを、自分のキャリアデザインに沿って、自分の言葉でしっかりと説明することです。

 そうすれば明確な動機、できること、やりたいことなど、すべてが具体的に網羅され、聞き手に対しても説得力を持つはずです。自分がやってきたことに自信を持ち、落ちついて、堂々と話してください。もちろん笑顔を忘れずに!


筆者プロフィール
片岡 大道(かたおか とものり)●物流会社を経て1989年から人材業界で働く。日本国内、海外(アジア、アメリカ、ヨーロッパ)に幅広いネットワークを持ち、応募者の希望に合った情報を提供している。@ITジョブエージェントを通じて@IT読者の転職支援も行っている。

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