積極採用が続くWeb業界。若手から30代後半もIT業界 転職市場最前線(49)

不況で冷え込んでいたIT業界の転職市場に、回復の兆しが見え始めている。だが、業種や職種によって採用数や条件に大きな差異が生まれている。転職市場の動向を追い、自身のキャリア戦略立案に生かしてほしい。

» 2013年05月27日 00時00分 公開

2013年4月のIT業界転職市場まとめ

 Eコマースやソーシャルメディアアプリをキーワードに、活発な採用活動が行われている。海外に進出する企業も多く、ビッグデータの活用やO2Oを意識したマーケティングといった新たな展開にも期待ができそうだ。また、4月はIT企業などで形成される新しい経済団体「新経済連盟」の初のシンポジウムも開催された。規制緩和や税制見直し等、国を挙げてのIT、インターネットビジネス活性化に注目したい。

Webエンジニア

 4月までにポテンシャル層の採用が予定通り進んだこと、新卒採用が好調だったことを背景として、ターゲットの変更を図る企業が多い。依然として未経験者や第二新卒など若手、ポテンシャル層の求人は目立つが、直近では30代後半以降のニーズの高まりが感じられた。

スマートフォン事業を軸に規模を拡大する企業が市場をけん引

 スマホ事業を軸にここ1〜2年で急速に規模を拡大してきた複数の企業が、スマホ向け開発や社内SEなどの求人増加をけん引している。社内SEはサーバやネットワークを構築し運用を担当するポジションや業務ツールを開発し運用するポジション、ヘルプデスクやキッティング、テクニカルサポートを担当するポジションなど多岐にわたり、「自宅で少しずつ勉強をしているが実務経験はない」といったITエンジニア志望の求職者にもチャンスがある。


ネットワークエンジニア

 ネットワークエンジニア、サーバエンジニアは、3月に続きシステムインテグレータ、ネットワークインテグレータの採用が活発だった。キャリアパスに沿ってアサインする案件を決めてくれるなど、個々人の描いたキャリアプランの実現が期待できることから、求職者の人気も高まりつつある。教育制度を強化して社員の育成に力を入れている企業も多い。


社内SE

 社内SEの求人が増加に転じた。サーバやネットワークの構築、運用の経験が生かせる求人、ヘルプデスクの経験が生かせる求人など、内容も幅広い。求職者は「自社サービスに携わりたい」「身近なお客さまのサポートがしたい」「一からインフラ環境を構築したい」といったそれぞれ原点に立ち返り、仕事内容を吟味してみるとよいだろう。


Webデザイナー

 Webデザイナーはあらゆる業界で需要があるが、特に増加しているのが大手制作会社や広告代理店の求人だ。スマートフォン向けアプリやゲームの制作を手がける事業会社もあり、ユーザー目線でデザインできる人材は特にニーズが高い。企画からデザイン、運用まで一貫して担える企業も多く、自由な提案をしたい、アイデアを形にしたいという求職者は狙い目だろう。

人員不足から積極採用が続くWeb業界

 Web業界では、人員不足から積極採用が続いており、制作会社、ソーシャルアプリプロバイダ、Webサービス会社などさまざまな企業の求人が見られた。「安定している」「PDCAサイクルを意識した仕事ができる」といった理由で求職者の人気が高いのはEC業界だが、選考ハードルは高く、求人数が増加している割に採用数は伸びていない。必須要件としては「コーディング経験」や「HTML、CSSに関する基本的な知識」を求める企業が目立ち、Webデザインの実務経験自体は浅くても、コーディングの知識が評価されて採用に至るケースも散見された。


Web系その他職種

 システム、デザイン、運用までオールインワンでの提供を強みとしているシステムインテグレータの求人が増加している。特にWebサイト制作を任せられる20代後半〜30代後半の経験者はニーズが高く、顧客との折衝経験があるディレクターは引く手あまたの状況だ。

コンテンツ企画職は人気があるが採用ハードルも高い

 サイトのコンテンツ企画職は志望者が多いが、採用ハードルは高い。採用要件としては「IT業界の開発ディレクション業務経験2年以上」「SEOの基本的知識」「Web・モバイルやスマートフォン向けのコンテンツの制作経験」「商用Webサイトの企画・運営・ディレクションなどの経験1年以上」などが主に挙げられている。求職者は、電子書籍、ECサイト、広告、自社メディア、スマホゲームなど、対象となるコンテンツに対して自身の強みを的確にアピールしていくことが肝要だろう。


ゲーム関連職種

 積極採用中の企業は、選考期間を短縮化する傾向にある。中には、書類選考通過当日に面接を実施する企業もあった。求職者もスピードを意識してスケジュールを組み、転職活動を有利に進めたいところだ。

クリエイティブ職種はキャリアチェンジも歓迎されている

 ゲーム業界におけるクリエイティブ求人では、関連スキルがあればキャリアチェンジを歓迎する企業が多い。実際、3Dデザイナーから2Dデザイナーへ、WebデザイナーからCGデザイナーへといった転身を成功させる求職者も増加した。過去の経験を生かしつつ、キャリアの幅を広く捉えて新たな可能性を探っていくことが転職成功への近道になるだろう。


営業

 大手自社メディア運営企業からの求人が多くを占めた。そのほとんどが2〜3年の営業経験を求めているが、一部企業では若手の第二新卒をターゲットとして、営業経験よりも事業や会社に対する興味の度合いを重視したハードルの低い採用を行っている。

ミドル層からシニア層をターゲットにした求人は微増

 ミドル層からシニア層をターゲットにした求人は全体の20%を占め、3月からわずかに増加している。しかしながら採用ハードルは高く、特定の業界における業務経験が10年以上など、スペシャリストを求めるものがほとんどだ。

ビジネスプロセスアウトソーシング、人材派遣系は幅広い層がターゲット

 ビジネスプロセスアウトソーシング、人材派遣系では、若手からミドル、シニアまで幅広い層が求められている。人材サービス系の経験がなく、これまでの業界経験や知識を生かして異業種転職をする人も多く見られた。


バックオフィス

 バックオフィス関連職はあらゆる業界の求人があるため全体数は多いが、募集枠は1〜2人がほとんどだ。そのため、募集を開始するや否や応募者が殺到し、あっという間に母集団が形成されてエントリーを締め切ってしまうというケースも少なくない。新規求人にいかに早くエントリーできるか、また、その後の日程調整をいかにスムーズに進められるかという2点が転職成功の鍵を握るといえる。

経理職を中心に採用意欲は高め

 4月のバックオフィス関連職のニーズは、経理職を中心として標準よりやや高めで推移した。次いで人事や営業アシスタントが多く、いずれもメインターゲットは未経験者を含む若手ポテンシャル層となっている。一方で、3職種ともにマネージャポジションも募集され、組織体制の変更などを見越した採用活動が行われていることがうかがえる。


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