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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.15<2003年3月版
3分間で自分のキャリアが判断される!?

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/4/2

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

中途採用意欲は旺盛。だが……

 ITエンジニアの中途採用は、昨年12月から復調した感がある。年度末の現在も企業の中途採用への意欲は旺盛のようだ。しかし、採用基準は下がらず、依然として合格ラインは高いままという。またここ数カ月の特徴として、ある人材紹介会社では「書類審査通過率と2次面接通過率が落ちています」と教えてくれた。

書類審査の時間はたったの3分

 SI(システムインテグレータ)企業で中途採用を担当していたアールピック代表で人事コンサルタントの岩松祥典氏は、2月に@IT自分戦略研究所が開催したセミナーで、書類審査通過率が落ちていることについて次のように語った。「現在ITエンジニアの求人動向は買い手市場で、1つの求人に多くの応募が集まります。しかし採用担当者の人数は限られているので、おのずと書類審査にかける時間が減っています。私が中途採用を担当していたころの書類審査時間は、応募者1名につき平均3分でした。たった3分で応募書類を採用希望の部署に回すか、お断りするかを判断していたのです」

 このような採用側の事情をかんがみ、ある人材紹介会社は次のようにアドバイスする。「企業ごとに職務経歴書のどこに注目するのか、どんな経験を重視するのかは異なります。従って、応募企業ごとに職務経歴書を作り替えるべきです。しかし、経験してもいないことを書け、というわけではなく、ご自身の経歴の中でアピールする点を応募企業ごとに変えるのです」。採用担当者が審査する3分という短い時間で、いかに「会ってみたい」と思わせるか。ここでは事前の情報収集力とプレゼンテクニックが必要となる。

 応募したい企業が、職務経歴書のどこに注目するかは、その企業の求人情報だけでは判断がつかない。そこで人材紹介会社を活用したい。彼らは、その企業で採用された人、採用されなかった人を見ているので、そこに情報が蓄積されているはずだ。前述の人材紹介会社では、企業ごとに職務経歴書の書き方をアドバイスするという。数ある人材紹介会社のどこを選択するかの判断基準にもなるだろう。

採用現場と人事部の視点の違い

 もう1つ、2次面接通過率が落ちている原因について、前述の人材紹介会社は次のように解説してくれた。「通常面接は、1次:採用を要望している現場の責任者→2次:人事部または採用現場の部門長クラスの順番で行われます。採用を要望している現場の責任者からすると、慢性的なエンジニア不足ですから、多少のことには目をつぶっても採用したい。その視点で面接をするので、現場が行う1次面接は通過しやすいのです。しかし、人事部または採用現場の部門長クラスでは視点が違います」

 プロジェクトで足りないリソースは、そのたびに外部リソース(外部へ発注、派遣エンジニア)に頼ることができる。人事部または採用現場の部門長クラスはそのリソース不足を社員で補おうとは考えない。彼らが社員(恒常的にコストが発生するリソース)に求めるものは、利益を生み出せること、経営環境の変化に柔軟に対応できることだ。この視点の違いが、2次面接の通過率が低下する原因になっているという。

 調査会社などのレポートや一般の報道によれば、平成15年度のIT業界は、大幅な成長は期待しにくいという意見が大勢を占めているようだ。この経済環境に加え、開発の海外シフトがそれに拍車をかけ、ソフトウェア開発業界は戦略の転換を求められている。社員として採用することへのシビアな視点は、いっそう強まることが予想される。

例年なら問い合わせの増える派遣案件……

 ハードルは高いが採用意欲の高い中途採用のトレンドに対し、派遣エンジニアへのニーズはどうだろうか? 「3月になっても、その実感がありません」とため息をつきながら語ってくれたのは、ある人材派遣会社の営業担当者だ。「例年の3月は、来年度からの新規案件のため、派遣エンジニアの問い合わせが多い月ですが、今年は少ないですね。また、契約いただいている派遣エンジニアの契約更新時期でもあるのですが、派遣先からの値引き要求が厳しい状況です」

 案件数としてはそれなりにあるようだが、以前と異なる点があるという。それは、以前であれば「Webアプリケーション開発経験者」という依頼だったものが、現在は「特定のWebアプリケーションサーバの構築経験者」というようにピンポイントの依頼となり、マッチングしにくいという。派遣料金も低下傾向で「2000年ごろの最盛期に比べ、平均10〜20%くらい金額が落ちています。特に落ち込みが激しいのは、中間層のSE(システムエンジニア)クラスです。プログラマや分析設計を担当するような上級SE以上はそれほど変化していません」(前述の営業担当者)

ニーズが高いデータベーススキル

 @IT自分戦略研究所 スキル創造研究室では、2月から「データベースエンジニアを目指せ!」と題して、データベーススキルの向上方法について記事を連載している。そこで、求人市場におけるデータベーススキルの現状について、人材紹介会社、人材派遣会社へヒアリングしてみた。

 昨今のITエンジニアへの求人は、テクニカルスキルよりも、ビジネススキル、ヒューマンスキルが重視されている。しかし、データベース関連は別格のようで、データベーススキルを持つエンジニアへのニーズは高いと、ヒアリングした人材紹介会社、人材派遣会社の多くが答えた。

 人材紹介会社のリーベルの代表取締役 石川隆夫氏は、「データベーススキルを持つエンジニアへの求人ニーズは以前と変わらず旺盛です。求められるスキルとしては、やはりORACLE DBが多いようです。スキル要件として、ORACLE MASTER Gold以上を挙げる企業もあります。GOLDを取得していれば、書類審査通過率は高いですね。さらに上位の資格であるPlatinum取得者であれば、ほぼ採用されるといっても過言ではありません」と答えてくれた。一部ではベンダ資格の重要性が以前より低下しているといわれているようだが、ORACLE MASTERは転職に有利になる数少ない資格の1つといえよう。

 望まれる経験としては、「大規模システム開発におけるデータベースの導入経験とパフォーマンスチューニングの経験です。特にチューニング経験を要求されることが増えています」と石川氏はいう。この傾向は中途採用に限らず、派遣エンジニアでも同様のようだ。

 人材派遣会社のリーディング・エッジ社の加藤千尋マネージャによると、「データベーススキルを持つ派遣エンジニアの案件は多いですし、最近も増えているようです。レベル的に多いのは、設計とチューニング」だそうだ。さらに中途採用同様、ORACLE DBのスキルを要求される案件が多く、この場合にはORACLE MASTER Gold以上を取得していること、と指定されるそうだ。IBMのDB2のスキルが要求される案件も増えているようだが、その場合には資格の有無は指定されないという。

高度化するデータベーススキルへの要求

 今後求められるデータベーススキルはどう変化していくのかを予測してくれたのは、人材紹介会社のテクノブレーンの常務 能勢賢太郎氏だ。「今後増えると思われるのは、データベース導入の前段階が設計できるエンジニアだと思います。企業が保有する膨大な情報から、経営上必要な情報を瞬時にアウトプットさせるために、どう情報を整理・管理・メンテナンスすればよいかをデザインできる能力が重要になっています」

 そのようなスキルはデータベースの範疇を超え、学術的なスキルが必要なのかもしれない。しかしデータベースエンジニアのキャリア目標としては魅力がありそうだ。

■取材協力企業(50音順)
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