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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.16<2003年4月版
2003年度求人予測、注目のキーワードは?

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/5/2

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

 IT投資抑制がいわれて久しい。2003年度になっても、株価の下落、米国や欧州などの海外市場の先行き不透明感といった経済の問題など、IT業界にとって悪材料ばかりだ。このような経済状況の中、ITエンジニアの中途採用は今年度はマイナス成長になるのだろうか? 今年度最初の求人トレンドレポートは、「2003年度求人予測」と題して、キーワードを設定し、それを大胆に予測してみよう。

いまから思うと、昨年秋が底だった

 とある人材紹介会社の幹部が現在の状況を語ってくれた。「大手の採用はひと段落した感がありますが、ここ数カ月は中堅以下の開発会社の採用が活発になっています」とのことだ。ただしこれは局所的な現象のようで「活発なのは、某大手システムインテグレータとの取引が多い開発会社です。いままで勝ち組の元請けレベルで活発だった人材採用トレンドが、その2次請け、3次請けに移行してきたということです」

 別の人材紹介会社では、「昨年度に比べて今年度の特徴は、採用できる企業(=勝ち組)と採用できない企業(=負け組)のコントラストがより鮮明になったことです」と教えてくれた。底は脱して上昇に移った採用トレンドだが、今年は企業間格差が昨年以上に激しくなりそうだ。

 ITエンジニアの中途採用で多いのは、長らく「プロジェクトマネージャ」という回答ばかりの状況が続いていたが、多少変化の兆しがあるという人材紹介会社があった。プロジェクトリーダー以下の若年層の採用が増えてきたというのだ。「やっとプロジェクトマネージャが採用できて、今度はその下の実働部隊という企業と、プロジェクトマネージャが採用できず、その素養のある人材にターゲットを移した企業との2パターンでしょう」(某人材紹介会社)

開発現場を重視する傾向

 ITバブル崩壊以降、ITエンジニアの中途採用において、テクニカルスキル以上に業務知識や、ヒューマンスキル、ビジネススキルが重視される傾向が続いている。また当のITエンジニアの転職希望としても、コンサルタントなどといった、より上流工程志向が強まっている。

 この傾向にも多少の変化が表れているそうだ。「金融系システム専門のSEで、学歴、職歴とも申し分のない方がいました。当然採用されるだろうと思っていたら、不採用とのこと。採用担当者は『欲しい人材ではあるが、現場経験がなさすぎる』と、不採用の理由を教えてくれました」(某人材紹介会社)

 似たような話を別の人材紹介会社でも聞いた。そのITエンジニアは、開発経験は3年以上あり、次のステップとして、設計にかかわれる仕事を志望していたそうだ。面接した企業にとっては求めていた人材だったにもかかわらず不採用に。その理由は「上流ばかりでなく、もっと開発現場を重視する気持ちがほしい」というもの。

 こうした傾向についてある人材紹介会社幹部は、「システム開発では、ますます“安く”と“早く”が求められています。そこでは開発経験に裏打ちされた分析設計力と現場重視志向が必要なのだと思います」と解説する。

情報システムを重視し始めたユーザー企業

 勝ち組製造業では顕著だが、従来アウトソーサーにゆだねていた情報システムの開発と運用を自社主導で行おうとする動きが活発だ(背景は、@IT自分戦略研究所とリクルートエイブリックとの共催セミナー「キャリア実現セミナー」のレポート記事を参照いただきたい)。2003年度もこの傾向は続くようで、「ある企業では現在9名体制の情報システム部門を200名にまで拡大するそうです。情報システムの外部依存からの大きな方向転換を図ろうということです」(某人材紹介会社)との話を聞いた。

 開発会社のITエンジニアからは敬遠されがちなユーザー企業の情報システム担当という職務だが、ITエンジニア転職市場では今年度も引き続き求められる職務だろう。

オフショア開発で必要なエンジニア

 ここ1〜2年、特に中国を中心とした海外開発会社や外国人エンジニアの登用が広がっている。ITバブルのころも同じような動きがあったが、今回は、そのころとは目的が異なる。ITバブル当時は国内のITエンジニア不足を補うものだったが、いまは開発コストの削減のために海外開発会社や外国人エンジニアを登用するようになっているのだ。

 現に大手システムインテグレータは、海外開発会社との提携ばかりでなく、中国に現地法人を設立している。そこでは数百〜数千名単位のITエンジニアを擁するという。さらに、海外の開発会社が日本に法人を設立するという動きも最近加速しつつあるという。

 このトレンドは、ITエンジニアに2つの影響をもたらす。1つはコーディングやテスティングを主体とする業務は海外に流れ、その必要人員が減るという影響だ。それら業務は日本人エンジニアの何分の1かの給与で働く外国人エンジニアが受け持つようになる。中国の開発会社を視察したある大手システムインテグレータの担当者は、「中国人エンジニアの仕事へのモチベーションには驚きました。ポジションが上がるたびに、生活が目に見えてよくなりますから。アパートからマンションへ、マンションから一戸建てへ、といった感じです」と語っていた。

 もう1つの影響は、この動きをプラスに利用するというものだ。前述のように海外の開発会社が日本法人を設立する動きがあり、そこでは積極的に日本人エンジニアを採用しているという。そこで求められるのは、「外国人エンジニアとのプロジェクトを経験したことのあることと、業務知識」(某人材派遣会社)だという。外国人エンジニアが身に付けにくいのが業務知識で、特に日本固有の商習慣への理解が難しいそうだ。これらの要件を満たせば、オフショア開発というトレンドは日本人エンジニアにとって新たな追い風になるだろう。

注目を集める組み込みLinux

 「2003年度の動きとして注目しているのは、情報家電の組み込みアプリケーションを開発するエンジニアです。特に組み込みOSとしてLinux上で動くアプリケーション開発が活発化しているようです」というのは、某人材派遣会社の営業マネージャだ。

 昨年来、情報システム分野では、Linuxは採用の段階から実用段階を迎えつつあり、組み込み分野でもLinuxが浸透しているようだ。「引き合いは多いのですが、組み込みLinuxでの開発を経験したエンジニアはなかなかいません」(前述の営業マネージャ)というように、人材需給バランスは完全に売り手市場。Linuxも2003年度の注目キーワードだ。

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