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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.20<2003年8月版
若手プロジェクトリーダー募集、急増中

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2003/9/5

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

求人数は横ばい、だが企業間格差が鮮明に

 先月は、ITエンジニアの求人動向が上昇に転じたとレポートしたが(「第19回 エンジニアの求人が回復、注目の業界は?」)、8月の動向は横ばいといった状況のようだ。「夏休みの影響もあり、この時期は求職者の動きが鈍ります。それに応じて企業の採用担当の活動も小休止といった状態なので、先月のトレンドと大きな変化はありません」(某人材紹介会社)

 長期的なトレンドについては、某人材紹介会社のマーケティング担当者が次のように解説してくれた。「昨年秋が底で、今年の6月にやっと増加に転じたところ。2000年当時のITエンジニア採用バブルとは比べものになりませんが、当時が異常だっただけです。景気に大きな落ち込みがなければ、今年後半もこの動向が続くと予測しています」

 全体としてはなだらかな上昇が続くようだが、今回ヒアリングした人材紹介会社各社が口をそろえていったのが、企業間格差が鮮明になった、ということ。最も採用に積極的なのは、外資の某大手ハード系SI(システムインテグレータ)を頂点とする取引企業群(2次請け、3次請け)だ。コンサルティングファームとその子会社の開発専業企業およびシンクタンク系も積極的に採用活動を展開している。それに対して、国内の大手ハード系SIとその取引企業群はどこも採用が不活発という。業績の好不調がそのまま採用動向に表れているようだ。

落とすのが前提の選考ではなく、採用前提の選考

 採用数のトレンドに大きな変化はないが、採用活動を行っている企業のスタンスに変化が起きているようだ。「この春までは、中途募集をしていても、よほどいい人材でないと採用しない企業が多くありました。そういう企業は“落とすことを前提とした選考”をしていました。つまり、少しでも採用基準に満たない点があれば不採用にしていたのです。それが7月以降は、“採用を前提とした選考”に変わってきています」(某人材紹介会社)。その証拠に書類通過率が上がっているという。この人材紹介会社の場合、春までの書類通過率は3割程度だったが、7月以降は5割くらいまで上昇しているそうだ。

 もう1つの変化が、若手エンジニアの採用を増やしていること。先月のレポートでも若手の採用が増えていると紹介したが、今回も同様のコメントを得た。「プロジェクトマネージャの採用ニーズは相変わらず高いのですが、その予備軍として、リーダークラスの募集が増えています」(某人材紹介会社)

 筆者も複数の求人企業から、マネージャではなく、リーダークラスを募集しているという話を直接聞いた。企業によって理由は異なるが、大別すると3つに分かれる。

(1)マネージャクラスは採用できたので、次にリーダーを採用したい
(2)マネージャクラスが採用できないので、仕方なくリーダーを採用する
(3)現職マネージャは採用しない方針で、リーダーを採用し、マネージャに育てる

 (1)と(2)の理由は明白だが、注目したいのは(3)である。ある求人企業はその理由を次のように教えてくれた。「プロジェクトマネージャは、まさに事業の中核をなす人材で、将来の事業部長候補です。そのような重要なポジションに、すでに完成された人材を外から登用してもうまくいかないケースがあるのです。そこでマネージャの一歩手前にいるリーダークラスを採用し、自社内で育成していく、という方針を立てています」(中堅システム開発会社の採用担当者)

勤務先の将来不安から転職希望者が急増

 今回のヒアリングで最も気になったのは、転職希望者が口にする転職動機の変化だ。「いままでITエンジニアが挙げる転職の動機は、スキルアップやキャリアアップといった前向きのものが多かったのですが、8月になってからは、いまの会社の先行き不透明感や閉塞(へいそく)感を転職動機に挙げる方が増えてきました」(某人材紹介会社)。また「プロジェクトがなく暇な状態が続き、不安になった」といって人材紹介会社に相談に来るエンジニアもいるという。

 さらに「今年度入社の新人エンジニアをアサインできるプロジェクトがないという企業もあるようで、そうなると若手は現場に行けないまま。そこで不安になるエンジニアもいるようです」(某人材派遣会社)。このような転職動機の変化は、まさに情報サービス業の不況感(冒頭で述べたとおり、企業間格差がある)を反映している。

 転職する場合、「スキルアップしたい」「キャリアアップしたい」「新しいことに挑戦したい」など、前向きな志望動機は求人企業から評価されることが多い。それに対して、「いまの会社の方針が気に入らない」「いまの会社では自分の実力を発揮できない」「会社の将来が不安」といった動機(ここでは後ろ向きの動機と呼ぶ)は、マイナスの評価をする求人企業が多い。

 この点を先の某人材紹介会社に尋ねたところ、次のように教えてくれた。「もちろん、後ろ向きな理由だけが転職動機ではなく、それプラスやりたいことが明確であることが前提ですが、いまの会社の先行き不透明感などといった転職動機について、求人企業によってはマイナス評価としないところもあります」

 また、転職したばかりの若手エンジニアが、何らかの理由ですぐに次の転職先を探す場合でも、求人企業によってはマイナス評価をしないところもあるようだ。それは、26歳前後までならば、企業選定能力が未熟で、転職に失敗したとしても致し方ないと判断されるからだという。

 ただし、このような後ろ向きな転職動機がマイナス評価されないのは、27歳くらいまでだという。それ以上の年齢では、いまの会社の批判を面接で行ったり、転職したばかりで転職活動をするのはNGだ。さらに30歳以上になると、批判するのではなく、自らの力でいまいる企業に変化を起こすくらいの姿勢を求められている。

「コンサルタント所見」という書類の存在

 しかし、27歳くらいまでの若手エンジニアであっても、履歴書や職務経歴書だけでは、短期間で転職したという事実だけが目立ってしまう。この情報だけならば、明らかにマイナス評価をされ、書類選考の段階で落とされてしまいそうだ。この点も人材紹介会社に尋ねたところ、意外な書類の存在を教えてくれた。

 「人材紹介会社が、求人企業に人材を紹介するときには、履歴書や職務経歴書のほかに『コンサルタント所見』という書類を添付することが多いのです。これには、履歴書などでは表現し切れない人物評価などのコメントを記載します。例えば会社都合により短期間での転職を余儀なくされたような事情がある場合には、その旨を記載します」(某人材紹介会社)

 このように、コンサルタント所見は転職希望者にとって強力な支援材料になる。ただし、人材紹介会社も事実に反することは書けない。前述の人材紹介会社は「その求人企業と求職者双方にメリットがあるだろうと考え、ご紹介するわけですから、基本的にはその方のよい面を強調して記載します。ただし、あくまで書類選考時の資料であって、その後には面接が控えているわけですから、ウソや誇張は書きません」と補足した。

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