連載:ITエンジニア最新求人レポート No.4<2002年3月版>
転職市場、ついに回復基調へ!
小林教至(@ITジョブエージェント担当)
2002/3/29
アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。 |
■底打ちを感じた今回のヒアリング
求人トレンドレポートも今回で4回目となる。これまで、景気の悪い話が多かったが、今回いつもとは状況が異なった。毎月複数の人材紹介会社や人材派遣会社にヒアリングをしているのだが、今回は「(転職市場は)回復してきた」という会社と、「トレンドは変わらない」という会社に分かれたのだ。
この中で筆者が注目したのは、多くの取引先を持つ人材紹介会社のコメントだった。「弊社では、転職市場は完全に底を打って回復基調になったと認識しています。いまは平成15年度に向けた新卒採用活動時期のため、中途採用は不活発ですが、それは季節的な要因によるものです。中途採用市場の底打ち感は確かです」。ただし、すべての会社が中途採用に意欲的なわけではないようだ。この不況期を乗り切り、次世代に向けた先行投資のできる企業が、積極的に必要な人材の確保に乗り出し始めたというのが、事の真相のようだ。
■求められるレベルは相変わらず高い
転職市場のトレンドは回復基調とはいえ、中途採用者に求められるレベルは高いままだ。中でもコンサルティング会社の中途採用条件はかなりシビアだという。「国立の工科大学卒で大手メーカーに入社し、米国留学経験もある30歳代前半の人が、あるコンサルティング会社で不採用にされました。理由を聞くと、コンサルティング経験がない、という回答でした」とは、某人材紹介会社の話だ。では、経験があればよいのかというと、あればいいというわけでもないらしい。経験した内容を面接で根掘り葉掘り聞かれるという。それは主体的な経験だったのか、単に指示に従っただけの経験だったのかが問われるようなのだ。コンサルタント志望のエンジニアは、ぜひ参考にしてもらいたい情報だ(コンサルタントの実態は、「外資系コンサルタントのつぶやき」をどうぞ)。
■それでも続くプロジェクトマネージャ不足
転職市場のトレンドに関係なく相変わらず不足しているのは、プロジェクトマネージャだ。特にシステムインテグレータ(SI)企業で、その不足は深刻らしい。「求人企業からすると悲鳴に近いですね。プロジェクトマネージャさえいれば受注できる案件が何件もあるそうです」とは、某人材紹介会社。IT業界でプロジェクトマネージャが不足している理由は、“案件の短納期化に伴い、少人数チームで対応せざるを得なくなり、チーム数が増えた分、新たにマネージャが必要となってきた”など、いくつか理由があると思われる。
しかし、ある人材派遣会社から、いままで聞いたことがない、ある仮説を聞かされた。「IT業界でマネージャのできる人材が育っていない感じがします。特に30歳前半のバブル期に入社した世代がそうです。この世代はマネージャ志向ではなく、スペシャリスト志向のエンジニアが多い。そのため、現在はちょうど彼らがマネジメントをしなければならない世代だが、それをする、できる人材が少ないのだ」という。とにかく、中途採用でマネージャを獲得できないのであれば、自社のエンジニアを効率良くマネージャに育成するしかないのかもしれない。
■上流工程を求められる派遣エンジニア
先月は“Java経験1〜2年+他言語経験数年”のプログラマへの需要が高まっているとレポートしたが、今月は「Javaプログラマへの需要も落ち着き、時給単価も落ちています」とのこと。代わりに需要が増えているのは、「分析・設計のできるエンジニアですね。あとはリーダーやマネージャクラスでしょうか」(某人材派遣会社)。派遣エンジニアであっても、要求レベルは高くなっているということらしい。また、ソフトウェア開発系の派遣エンジニアの募集自体も、落ち着いていると指摘する人材派遣会社もある。
派遣エンジニアの需要で引き続き堅調なのは、ネットワークの運用管理ができるエンジニアだ。最近では、エンジニア以外からのキャリアチェンジを目指して入学する人も多いためか、ネットワークエンジニア育成スクールも好調とのこと。このトレンドに対し、ある人材派遣会社の営業は、「残念ながら、いまは未経験者が派遣エンジニアとして採用されるほどの売り手市場ではありません」と語っていた。ネットワークの運用管理ができるエンジニア需要は堅調とはいっても、それはソフトウェア開発系と比べた場合の相対的なもの。未経験者にとっては、いずこも厳しい情勢のようだ。
■定着してきたか、紹介予定派遣
今回、ヒアリングをしている際に、興味深い話を聞いた。紹介予定派遣(Temp to HireまたはTemp to Perm )を用いる企業が増えてきたというのだ。紹介予定派遣とは、一定期間派遣で就労し、企業と派遣社員が合意した場合に社員採用するもので、2000年12月から可能となった比較的新しい制度だ。以前より“派遣結果紹介”(優秀な派遣社員だったので、社員として改めて採用する)はあったが、紹介予定派遣の実績は少なかった。が、ここにきて求人企業側がこの制度を勉強し、積極的に活用するようになったそうだ。
「社員採用されるはずが、派遣契約のまま」といった運用上の問題はあるようだが、適材を得たい求人側、自分に合った仕事・企業かをじっくり確認したい求職側の双方にとってメリットがある。「やりたい仕事が明確で、長期のスパンで自分のキャリアプランを持っている人には向いていますね。反対に、やりたいことがなく、とにかく社員採用されたい、という人には向きません」とは、紹介予定派遣を実際に手掛けるある人材サービス会社の説明。
“まだ経験が足りないが、努力もしているし、こういう仕事がしたいというビジョンもある”人は、紹介予定派遣を行っている人材サービス会社に相談してみるのもいいかもしれない。
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