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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.7<2002年6月版
エンジニアに求められるヒューマンスキルとは?

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2002/6/28

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

数ではなく質重視の求人トレンド

 先月の求人トレンドレポートでは、「企業の中途採用意欲、いよいよ本格化」と題して、エンジニアの中途採用活動が活発化してきたことを報告した。その傾向はその後も続いている。コンサルタント、プロジェクトマネージャ、業務系システム開発経験者は相変わらず不足感があり、採用活動も頻繁に行われている。

 さらに今月の特徴としては、「組み込み系ソフトウェア開発のできるエンジニアへの求人が増えてきました」(某人材紹介会社)というものがあった。これは派遣エンジニアも同様のようで、「携帯電話本体のソフトウェア開発という案件がいくつかあります。おそらく次世代携帯電話の開発ではないでしょうか」(某人材派遣会社)とのことだ。

 システム開発、ネットワーク構築関連の求人も堅調なようだが、「企業側の要求レベルは依然として高いものがあります。特にヒューマンスキル重視の傾向が続いていますね」(某人材紹介会社)。書類選考時にテクニカルスキルが判断され、面接では主にヒューマンスキルが見られるという。では、最近よくいわれるエンジニアのヒューマンスキルとはいったい何を指し、そのヒューマンスキルはどうしたら身に付くのだろうか? ご自身も長年エンジニアとして活躍していたパソナテック PLACEMENT事業部長 杉山宏氏にお話を伺った。

エンジニアに求められるヒューマンスキル

 「中途採用でよくいわれる“ヒューマンスキル”とは、一般的に“コミュニケーションスキル”と“マネジメントスキル”を指すことが多いようです」(杉山氏)。以前ならば顧客と交渉する機会の多い職種やリーダークラスの採用で重視されていたスキルだが、現在では職種を問わず要求されるらしい。では、何を基にスキルを判断されるのだろうか?

 「コミュニケーションスキルはもちろん面接で、こちらの質問に的確に回答できるか、などで判断されますが、エンジニアの場合は、それ以外にもこれまでの実績で判断されることがあります。具体的にはいままで携わったプロジェクトで、顧客に対して逆提案をし、その内容が受け入れられ、かつそれによって顧客から信頼を得たことがあるかどうか、などです」(杉山氏)

 “できません”と断るのではなく、“こうやったらできます”と提案しろとはよくいわれるが、まさにそれを実践してきたかどうかが問われるわけだ。顧客へ逆提案して受け入れられた事例を面接の場で積極的にアピールすれば、コミュニケーションスキルが高いと判断される可能性は高い。そういった経験を積んできたエンジニアの市場価値は高いと思っていいという。次に、マネジメント力はどこで判断されるのだろうか。

 杉山氏は、「マネジメントスキルが高いかどうかは、プロジェクト経験の実績によります。さらにそれぞれのプロジェクトは、受注金額、メンバー数、工期、規模、内容、難易度で評価されます」という。職務経歴では、プロジェクトごとにこれらの点を列挙し、そのプロジェクトで果たした役割と得たスキルを記載すればよいという。

 加えて、杉山氏は次のようにいう。「私のエンジニア経験からすると、マネジメントスキルは同時にトラブルシューティングスキルでもあると思います。人員が足りない、工期が短い、要件が固まらないなど、トラブルを抱えたプロジェクトをいかに無事にカットオーバーさせるかには、高いマネジメントスキルが要求されます。特に今後リーダー、マネージャを目指している20歳代のエンジニアには、嫌がらずに火の噴きそうなプロジェクトに参加し、マネジメントスキルを養っていただきたいと思います」。火を噴きそうなプロジェクトばかりに投入される、いわゆる“火消し役”は、市場価値の高いエンジニアである可能性が高いというわけだ。

企業の方向性と合致した人材を

 今月のヒアリングでは、ある人材紹介会社から興味深い話を聞いた。「最近の傾向として、企業の理念や方向性と求職者のそれが合致しているかどうかを重視する企業が増えてきました。特に従業員を“人財”として重視している企業ほどその傾向があります」。実際に関西の名門国立大学を卒業したエンジニアが、なかなか転職できない例を聞いた。「その方は確かに技術レベルも高いし、ヒューマンスキルもそれなりに持っているのですが、“人の役に立ちたい”という漠然としたキャリアビジョンしか持っていないのです。人の役に立ちたいというのは究極のビジョンとして否定はしませんが、もう少しブレイクダウンしなければ企業としての判断がつきません」(前述の人材紹介会社)

 求職者のやりたい仕事と企業が任せたい業務が一致すれば、十分に能力を発揮してくれるだろうと企業側は判断する。つまり、求職者は何をやりたいかを明確にしなければ、企業側も判断できないということだ。逆にいうと、企業側が具体的に何を任せたいのかが分からなければ、求職者は自分がその企業で活躍できるかどうかの判断ができないともいえる。

派遣業界も底打ち感か

 ここ数カ月、案件の少ない状態が続いていた人材派遣業界だが、5〜6月にかけて底打ち感が出てきたようだ。「当社の顧客には、社内からの派遣エンジニア要請を、『案件表』というものにまとめているところがありますが、ここ数カ月は『案件表』を作れない、つまり要請がゼロの状態が続いていたそうです。いまも『案件表』を作成しない状態が続いているようですが、それでもじっくりと話を伺うと、数件くらいの案件はありそうな状態になっています」(某人材派遣会社)。

 ただし、案件があるといっても新規の大規模案件ではなく、既存システムの機能拡張やメンテナンス、運用管理などが中心という。前述の人材派遣会社でも「派遣市場のトレンドが上向きになったとまではいいませんが、底を打った感はありますよ」といっている。

人材派遣会社をキャリアパスの一過程に

 底打ち感が出てきたとはいえ、プログラマや初級SEの余剰感は、相変わらず続いているという。「特に“何でも屋”的なエンジニアの需要は少ないです。そのような方は、業務知識を付けるために特定の業界(金融、流通など)で経験を積んだ方がよいでしょう」(某人材派遣会社)。また、こうした場合(経験値を上げるため)に、人材派遣会社を積極的に利用してほしいという。

 某人材派遣会社では、あるエンジニアの例を教えてくれた。「小規模のソフト開発会社で、いつも同じような下流工程の案件ばかりを担当していたそうですが、このままではスキルアップできないと思い、人材派遣に登録いただいた方がいます。いまは何度か大規模プロジェクトを担当したり、ベンダ資格を取得したりと、スキルアップに励んでいます」。このエンジニアは、人材派遣会社をキャリアパスの一過程としているわけだが、このような使い方は人材派遣会社も歓迎しているという。その理由は、そうした人はスキルアップやキャリアアップが目的のため、そうでない人と比べ、スキルやキャリアを得るために、まじめに業務に取り組む傾向があるからだという。

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