第1回 戦略的な転職をするための7つの法則
リーベル 石川隆夫
2008/4/15
「そのうち転職したい」とは思っていても、実際どのように行動すればいいのか分からない。そんなITエンジニアに贈る転職マニュアル。転職の心構えから実際の行動への移し方、失敗エピソードまで、事例を盛り込みながら解説する。 |
多くの企業が新年度を迎える4月になっても、採用市場におけるITエンジニアのニーズは衰えないようです。
ITエンジニア側にとっても、「転職」は以前より身近なものになってきていると思います。「売り手市場」との認識を持っている人も多いのではないでしょうか。
この連載では、転職を意識している、もしくは具体的に考えているITエンジニアを対象に、効果的な転職をするための方法をお伝えします。今回は「転職活動をする前に知っておくべき7つの法則」として心構えの部分を、次回以降は応募先企業の選定方法、転職のタイミング、応募書類の作成方法や面接など、具体的なトピックについてお話しする予定です。
転職活動をする前に知っておくべき7つの法則
「転職活動をする前に知っておくべき7つの法則」として、転職活動以前の心構えをお話しします。ここでは初めて転職する20代後半〜30代前半のITエンジニアを想定していますが、すでに転職経験のある人にとっても参考になる内容だと思います。
1.転職の目的を定める
転職を考え始めたとき、そこには必ず理由があります。転職の本当の理由、目的を明確にしましょう。
「何かの不安や不満があって、転職を考え始める」ということが多いと思います。しかし単なる不安や不満の解消という、表面的な理由で転職をすると、今度は別の不安や不満が出てきてしまい、その転職は失敗となります。
一時的な不安や不満といった、最初の動機だけで動くのではなく、自分が真に求めているものをつかむことが大事です。「なぜ?」「なぜ?」「本当か?」と、何回も掘り下げて確認しましょう。
「自分が求めているものは、会社が変われば得られるものなのか?」
「転職後も同じ状態になってしまう可能性はないのか?」
「自分は何をやりたいのか?」
「それは、本当に自分がやりたいことなのか?」
「なぜ、自分はそれをやりたいのか?」
「自分は何を求めているのか?」
このような問いを自分自身に投げ掛けて、きちんと答えられるようになっていることが大事です。心の奥で真に求めているものをしっかりと把握してから次に進むことが、転職の第1の法則です。こうすることで転職の最終的な目的が決まり、転職がポジティブなものになります。
もちろん、その不安や不満が転職で解決されることではないと分かれば、転職しないで別の方法を探すことになりますね。
転職の目的をしっかりさせておかないと、失敗する可能性が高くなります。転職すること自体が目的となってしまうこともあるかもしれません。たまたま面接官と意気投合して入社したり一時の年収に目がくらんで入社を決めたりしたが、思っていたような会社ではなかったということもあり得ます。
転職活動中は、思いどおりに進まないこともありますし、どの会社が良いのか、どの仕事が自分に合うのかと迷うこともあります。そのときに立ち戻って考えられる原点が、最初にこうして決めた転職の目的なのです。
2.プランは長期と短期で
自分のやりたいこと、目指したい方向が明確になり、それを実現するという転職の目的も確認できました。明確になった目的を実現するには、ある程度長期のキャリアプランを考えておくことが大事です。
10年後でも、7年後でもかまいません。あなたが28歳なら、30代後半の自分の姿を思い描きましょう。
次に、それに到達するための中間点の目標を決めましょう。長期プランの半分くらいがよいですね。4年後とか5年後です。
例えば、30代後半には大規模プロジェクトのマネージャになっていたいとします。中間点として、4年後の32歳のときは中規模のプロジェクトのものであってもプロジェクトリーダー、またはプロジェクトマネージャを経験できる自分の姿を描きます。
10年後の未来を100%正しく予測することは、誰にもできません。10年後には主流の技術や会社の在り方が大きく変わっているかもしれません。ですが、あいまいでも常に長期を予測しながら、中間点または短期の目標に向かって進んでいればよいのです。
環境だけでなく、自分の志向も変わる可能性があります。そのときは長期目標を変更して、4、5年後の短期目標に向かっていけばよいでしょう。常にローリングをして目標の軌道修正をしていくことが重要です。環境に適応していく能力も必要です。
キャリアプランが明確になれば、目標とする企業や仕事内容の候補が決まります。前述の例では、大規模システムをプライムで受注できる企業が対象になるでしょう。具体的に考えると大手システムインテグレータあたり、仕事は業務系システム開発分野となります。
いままで漫然と思い浮かべていた「なりたい自分」「やりたい仕事」が、具体的な会社や仕事に当てはめることでより具体的にイメージできます。
3.自分を客観的に理解する
自分を客観的に理解するのは、大変難しいことですね。でも転職に当たっては、冷静に自分を分析し、転職市場で自分の置かれた位置を把握しなければいけません。
具体的には、企業の採用担当の目で自分を見ることが必要です。
企業は、その人が過去に何をどのような立場で行ってきたかを見ます。下記のような視点で、自分への評価を整理しましょう。
「何(どのような仕事)をやってきたのか?」
「どのようなポジションでやってきたのか?」
「そのときに求められた知識、技術は何か?」
「困難をどのように克服してきたか?」
「どのような成果を挙げたか?」
これらはすべて、仕事を通じての経験、実績です。企業は本人の実績に基づいて、何ができるかを判断します。「まったくやったことはないけれど、できると思う」といっても、「できる」と客観的に判断できる何かがない限り、評価はされません。
さらに、自分の年齢も加味して考えることが必要です。年齢によって、企業の期待するレベルは異なるからです。
27歳くらいなら、リーダー経験があれば「なお可」ですが、必須ではありません。これが32歳になると、リーダー経験は前提条件になることが多いでしょう。
要件定義などの上流工程の経験も同様です。20代半ばなら、しっかりした下流の経験があれば評価されるでしょう。しかし30歳を過ぎると、上流工程の経験も重要視されるようになります。
現在の年齢を考え、自分がどういうレベルにあるかということも理解しておく必要があります。
「なりたい自分」と「なれる自分」は違う! |
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