第1回 スカウトされないコツ、教えます
大内隆良(@IT自分戦略研究所)
2007/12/19
良い話があれば転職してもよい。ITエンジニアに限らず、多くの人はそう考えている。では、どんな良い話があるのか。それを@ITプレミアスカウトから探る。どんなITエンジニアが企業からスカウトされ、どんなITエンジニアが企業からスカウトされないというのか。そこから当世のITエンジニア転職事情を探る。 |
記念すべき第1回は、スカウトされないのはどんなITエンジニアなのかを明らかにすることで、逆説的にどんなITエンジニアがスカウトされやすいのかを追ってみたいと思う。こんなネガティブなところから始めていいのかとは思うが、そんなところにこそ、スカウトされやすいコツが転がっているかもしれないではないか。
まず初めに、どれぐらいの人が、良い話があれば転職してもよいと考えているのだろう。@IT自分戦略研究所とJOB@ITが今年5月に行った読者調査では、回答者の42.3%が「現在は転職を考えていないが、良い話があれば考えてみたい」という(図1)。
図1 回答者の42.3%が「現在は転職を考えていないが、良い話があれば考えたい」という。調査は@IT自分戦略研究所とJOB@ITが今年5月に行ったもの。N=742 |
これを見る限りは、積極的に転職活動はしないものの、良い話があれば、前向きに転職を考えてもいいというITエンジニアは多そうだ。そうした待ちの姿勢に合う転職手段の1つが、企業からのスカウトではないだろうか。何せ待っていれば、いつか有名な、または自分があこがれている企業から、「どうぞ当社で」なんてメールが飛び込んでくるというのだから、こんなおいしい話はない。
そこで実際にJOB@ITで企業からのスカウトサービスを行っている@ITプレミアスカウトの担当者から、サービスの実情を聞き出してみよう。
■スカウトされやすい職種はあるか
企業から良い話があれば、というこのサービス。このサービスに登録しているユーザーの職種によって、スカウトされやすさ、されにくさに差はあるのだろうか。
2007年9〜11月のスカウトされた職種ベスト5を見てみよう(表1)。スカウトされた職種とは、スカウトされたITエンジニアの、スカウトされた時点での職種である。
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表1 スカウトされたITエンジニアの現在の職種 |
このランキングを見ると、何だという感じを抱くのは筆者だけだろうか。1位はシステム開発・設計、2位はSE(ビジネスアプリケーション)、3位はプログラマで、この順位はこの3カ月変動がない。しかもこの職種は、@IT自分戦略研究所の読者層とも重なりそうだ。そうであれば、@IT自分戦略研究所の読者であれば、誰でもスカウトされる可能性があるという程度のことしかいえない。
ということでは、この記事はまとまりを欠くので、次にいってみたいと思う。
■スカウトされやすい人
具体的には、どのような人がスカウトされやすいのだろうか。
JOB@ITで、@ITプレミアスカウトのサービスを担当している平岡健氏は、「簡単にいうと、Java系のエンジニアで、データベースはOracle、という人がスカウトされやすいですね」と語る。
これは@ITプレミアスカウトのサービス開始からまだ1年たっておらず(本記事執筆時点)、スカウトする企業が、JavaとOracleが分かるITエンジニアを求める傾向があるためのようだ。
さらにデータベースでは、Oracleが1番だという。そして2番目はマイクロソフトのSQL Serverだそうだ。基本的には、スカウトする企業が商用ソフトを使って開発していることが多いことから、それを反映しているのだろう。
■スカウトされないのはどんな人
今回のテーマ、スカウトされにくい人に絞って話を進めよう。以下は、@ITプレミアスカウトのことを中心に書いているが、一部を除き他社のサービスでも同じ傾向ではないだろうか。そういう意味では、スカウトサービスを利用しているITエンジニア全般に、参考にしてほしい点だ。
平岡氏は、「サービスに登録しても、『スカウトを受けない』設定にしている人がいるのです」と話す。せっかく@ITプレミアスカウトに登録しても、「スカウトを受けない」という設定では、良い話があっても連絡がくることはない。「だから最低限でも、『スカウトを受ける』設定にしてほしい」という。
ちなみにスカウトを受けない設定では、新たにスカウトをするのがどんな企業かの連絡が登録したメールアドレスにくるのみ。その連絡から実際にスカウトされることはない。スタート台にも立っていない状態といえる。
それでは、スカウトされやすい人を探るために、その逆のスカウトされない人の特徴を見ていこう。スカウトされない人の特徴として、どんなものがあるのだろうか。
企業もスカウトするITエンジニアのスキルやキャリアは知りたいだろう。そのITエンジニアの技術力もキャリアのひと握りの情報もない段階で、「うちの会社に来ませんか?」とメールしてくれる企業は皆無というものだ。
だから、良い話にありつくためには、やはり自分のスキルやキャリアをある程度は企業に知らせる必要がある。その登録情報のポイントは、属性情報とスキル(語学)、キャリア(テンプレート)の3つだ。平岡氏はほかにも挙げてくれたのだが、その中からよくある話として、3つのポイントに絞らせていただいた。
■スカウトされない3つのポイントを解説
最初は、属性情報から解説しよう。属性情報には、自分の氏名、住所、転職希望条件など、基本的な情報を入力する個所だ。
まずは勤務地。これはスカウトのされやすさでいうと、首都圏、できれば特に東京都にチェックを入れてほしいそうだ。IT企業は東京圏に集中している。スカウトをする企業もその原則どおり東京圏に多い。だから地方に住んでいても、東京圏に引っ越して働くことが可能ならば、東京都にもチェックしておきたい。つまり、東京都以外、特に関東圏以外しかチェックしていない人は、スカウトされる可能性が低くなる(画面1)。
画面1 @ITプレミアスカウトの場合の希望勤務地の例(一番下) |
ただし、この傾向は@ITプレミアスカウトの場合だ。他社のサービスの場合もIT関係は東京が多いとは思うが、地方の比率はもう少し高い可能性もある。その辺りは自分で様子を見た方がいいだろう。サービス担当者への問い合わせなどで聞いてみたり、利用した人に聞いてみるなどしてほしい。
勤務地は必須項目だが、意外と重要な項目は、必須項目以外にある。それは、「やりたい仕事のイメージ」や「将来のビジョン」だ。「ここは記入していない人が多いのですが、企業はこういうところを見ているものです」と平岡氏はいう。そのうえで、「何でもいいから、少しでも書いておいてほしいです」とアドバイスする。何もなければ企業はスルーして見もしないが、やりたい仕事やキャリアビジョン(明確なものでなくていいそうだ)など何かしら書いてあれば、それだけやる気があると見られる傾向があるようだ。
■スキル(語学)はやっぱり重要
スキルはスキルでも、テクニカルスキルやその保有資格などはきちんと記入していても、語学となると及び腰という人が多いようだ。
語学は、基本的には英語についてだ。問われるのは英会話能力、英文読解力、英作文力。この3つが必須の記入項目だ。ITエンジニアは、技術情報や言語仕様などを確認するため、英文に当たることもあるだろう。
平岡氏は、「皆さんドキュメントを読んだ経験があっても、『自信がない』と書いてしまうんですね」と傾向を語る。しかし、その謙虚さが、企業には駄目だと判断される根拠となってしまうようだ。多少でも読めるのであれば、読解力は『技術書が読める』ぐらいのアピールをしてほしい。基本的には辞書を引き引きで構わないとのことで、あまりに謙虚になる必要はないという(画面2)。
画面2 @ITプレミアスカウトでの記入例。英語に関しては、つい「自信がない」にチェックを入れる気持ちは分かるが、辞書を引きながらでも可能なら、ほかのところにチェックすべし |
■重要なキャリア項目
企業からスカウトされるために必要な記入は、ITエンジニアの場合、スキルも重要だが、同じように重要なのがキャリア関係の記入だ。
キャリアの項目では、職務経歴の記入が大切だ。ここを適当に書いたりする人がいるそうだ。悪い例は、業務概要であれば「一般的なシステム」としか書いていないような場合だ。例えば、「システム開発」や「ERPパッケージ導入」といった記述は、悪い例の典型だ。
企業が見ることを前提に、どんなシステムなのか、多少具体性も持たせて書いてもらいたいという。つまりここがなおざりだと、スカウトされる可能性が低くなるということだ。これは、ほかのキャリアに関する項目も同じだ。
■良い話を引き寄せるのも努力
ここまでの話をまとめると、属性情報からスキル(技術スキルと語学スキル)、キャリアの項目とも、なおざりに書いたり、必須項目以外を書かないようにすると、スカウトされない可能性が高くなる。というよりも、「スカウトされることはない」(平岡氏)。
つまり、良い話にはきちんと裏(といっていいのか)があるということだ。自分自身のことをほとんど語らず、取りあえず「登録だけしておこう」では、決して良い話の女神はあなたに微笑むことはないのである。
良い話を引き寄せるには、それなりに努力して自分自身の将来のビジョン、自分のこれまでの経歴、スキルなどをうまく披露しないことには駄目だということだ。
この原理は、どの会社のスカウトサービスでも同様だろう。良い話を引き寄せるのは、結局登録するときに努力して記入し、記入のコツが必要だということだ。ある意味、当たり前のオチが付いたところで、第1回を終了したい。
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