第5回 転職するたびにランクが下がるなんて
| 多くのITエンジニアにとって「転職」とは非日常のもので、そこには思いがけない事例の数々がある。転職活動におけるさまざまな危険を紹介し、回避方法を考える。 |
転職によって自分のキャリアをデザインするという考え方は、いまでは一般的なものになっています。しかし、長期的なビジョンもなく安易な転職を繰り返していては、いつか行き詰まるときがやって来ます。
今回は、転職を機にキャリアアップを実現した人、転職を繰り返しキャリアダウンしていった人の例を紹介します。同程度の転職実績を持つ2人の違いは何なのでしょうか? この事例を基に、転職をするための心構えについて考えたいと思います。
■ユーザーの近くで提案をしたい
私が住田さん(仮名)と初めて会ったのは、いまから7年前のことです。彼は当時28歳。大学院を卒業後、大手外資系ハードウェアベンダA社に入社し、システムインテグレーションを担う部門に所属していました。A社は金融や通信業界での大規模システムの導入実績を持っていましたが、住田さんが配属されたのは、主にシステム基盤のアーキテクチャ専門部隊。Webサーバの構築からWebアプリケーションの開発にわたって、先端技術を扱っていました。社内でも先進的な案件に触れることができ、とても充実しているということでした。
相談内容は、自分の市場価値を知りたい、今後のキャリアパスを考えるヒントが欲しい、現在の転職市場について知りたいという漠然としたものでした。当時はまだ入社3年目ということもあり、将来の方向性について話をするにとどまりました。
その後住田さんとは半年に1回程度会い、転職市場の状況や今後のキャリアパスに関して情報交換をしていました。
入社から4年が経過したころ、彼はリーダーとしてユーザーとの要件定義から開発、テストまでを任されるほどになり、どこに行っても恥ずかしくないスキルの持ち主になっていました。そしてこれまでの経験を生かし、もっとユーザーに近い位置でコンサルティングを行いたいと思うようになったのです。現在の会社でもコンサルティング的な業務はできるのですが、もっとユーザーのビジネスを意識した提案をしたいということでした。
そこで私は、あるITコンサルティング会社(B社)を紹介しました。すると彼もその会社には以前から注目していて、自分の理想に非常に近い、転職をするならこのような会社に行きたいというのです。しかし当時はプロジェクトの関係ですぐに転職ができない状態だったため、少し期間を置いて考えることにしました。
■早期退職プランを利用して転職
ある日、住田さんから1本の電話がありました。A社で早期退職プランが公表されたというのです。中高年の社員に限定されていたものが今回は年齢無制限であるため、このプランに応募し、転職を真剣に考えたいとのことでした。
希望の転職先は、以前の打ち合わせで紹介したB社です。住田さんとはそれまで数回インタビューの時間を持っていたので、レジュメもすでにできていました。さっそく書類を提出し、模擬面接に時間を割きました。書類審査は問題なく通過し、模擬面接の成果もあって、内定までスムーズに進むことができました。並行して数社を受験していたので、3社の中から選べる状態でしたが、迷うことなくB社への入社を決めました。
給与は年収ベースで80万円ほどアップ。さらに早期退職プランの退職金を受け取ることもできます。何よりも、数年間考え続けていたキャリアプランに合致する会社に出合えた幸福は大きく、住田さんは喜びをかみしめつつB社に入社しました。
■本当に提案したい製品を扱いたい
転職から1年、住田さんと会う機会があり、近況を聞きました。現在は、地方のある大手企業向けの大規模システムの仕事をしているとのことでした。少しハードですが学ぶことは多く、優秀な人と仕事ができる点が何よりの喜びであると話していました。
そして2年が経過したある日、住田さんから連絡が入り、再び会うことになりました。彼は社内の評価も高く、早くも約20人のメンバーを持つプロジェクトのマネージャに成長していましたが、さらなるキャリアアップを図るために相談に乗ってほしいというのです。現在の会社はコンサルティング会社でありながら自社製のWebサーバ製品を持っており、住田さんの本当に提案したい製品を扱うことができないとのこと。そのため環境を変えて経験に磨きをかけたいというのです。
急ぎの転職ではないので、1年程度の時間をかけて情報収集をしていくことになりました。結果、数社の企業を紹介しましたが、彼が最も興味を持っていたWebサーバ製品を扱う会社のシステムコンサルタントに応募することになりました。
面接の結果、得意とする基盤アーキテクチャの技術力とコンサルティング会社での経験を高く評価され、見事に内定となりました。マネージャ職として迎えたいということで提示された年収は850万円。前職よりも100万円のアップということもあり、住田さんは迷うことなく入社を決定しました。
それからさらに2年がたち、36歳になった住田さんと最近話をすることができました。自信満々に話す表情から、私も彼の転職の成功を実感しています。
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| 今回のインデックス |
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転職活動、本当にあったこんなこと バックナンバー
- 第1回 「派遣でスキルアップ」のつもりだったのに
- 第2回 「辞めてから転職先探せばいいでしょ」のリスク
- 第3回 圧迫面接にも理由がある?
- 第4回 入社3年目で転職なんて許さん!
- 第5回 転職するたびにランクが下がるなんて
- 第6回 遅刻しそうなので、面接受けるのやめます
- 第7回 社内SEならラクそうだから
- 第8回 だって、忙しいんだもん
- 第9回 「ウチに来てくれ」といったじゃない
- 第10回 よく考えたら、いまの会社でいいみたい
- 第11回 したかったのは、こんな仕事じゃない!
- 第12回 次の面接、行くのやめようかな
- 第13回 どうせタダでしょ? 人材紹介会社10社利用します
- 第14回 あこがれのITコンサルになれたはいいけれど
- 第15回 取りあえず、希望年収700万円でお願いします
- 第16回 ボクほどのスキルがあれば、転職できるでしょ?
- 第17回 売り手市場だし、きっと「大手」に入れるさ
- 第18回 面接の最後には「逆質問」すべし
- 第19回 転職活動のために退職。なのに次が見つからない!
- 第20回 滋賀限定、残業なし、社内SE。そりゃ苦戦するでしょう
- 第21回 妻の仕事の都合上、転勤はできません!
- 第22回 面接に進める職務経歴書の書き方
- 第23回 「話上手」なだけでは、面接には受からない
- 第24回 「現実逃避」で転職をしてはいけない
- 第25回 「内定」の2文字に舞い上がり、転職に失敗
- 第26回 大好きな北海道で、楽しく働くつもりだったのに
- 第27回 「自分を過大評価しない」が転職成功の道
- 第28回 転職の鉄則は「最初は勢いよく、最後は慎重に」
- 第29回 「あのとき転職していれば」――転職しないリスク
- 第30回 転職時に重視すべきは「仕事」か「会社」か
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