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基本から始めよう 初心者のための転職テクニック:実践編

第2回 人材紹介会社は強力な転職ツール

キャプラン
伊賀光映
2005/4/7

転職を決意しても、実際にはどこから手を付けていいか分からない……。そんな転職初心者のために、選考段階から内定、退職、入社に至るまで、転職の各局面の重要なポイントを解説する。ここだけは押さえて転職を成功させよう

人材紹介会社を強力なツールにせよ

 転職に際して利用できるツールはたくさんあります。どれがよいということではなく、さまざまな手段を併用することで効率よく進めていただきたいものです。

 その手段の1つが、人材紹介会社です。以前よりは転職志望者に浸透してきていますが、人材紹介会社を最大限に活用できている人はまだまだ少ないようです。そこで今回は、より実践的・具体的な人材紹介会社の活用術をお話しします。今後、人材紹介会社を利用される際の参考にしていただければ幸いです。

登録時には経歴・希望を詳細に伝える

 どの人材紹介会社に依頼すればよいのか、初めは分からないこともあると思います。広告を見たりスカウトメールの文面を読んだりして、ピンときたところに登録してみてください。正式な登録手続きをすぐ行うことが難しいときは、個人情報保護規定を確認したうえで、自分で作った履歴書、職務経歴書を電子媒体で送付してみましょう。電子媒体で送ることには、その企業のデータベースに登録してもらう、事前にコンサルタントに見てもらうという狙いがあります。

 なお、人材紹介会社を利用するうえでは、自分の希望をきちんと伝えておくと、その後の流れもスムーズになります。何度か話したら伝えようとか、ある程度段階が進んだら自分の希望を話そう、といった遠慮はまったく必要ありません。というよりも、そのような遠慮には弊害が多いのです。

 次のように、人材紹介会社の利用にもいろいろな理由があると思います。

  1. いますぐの転職を考えているわけではないが、いい求人があれば検討したい
  2. 転職すべきか迷っており、相談したい
  3. 転職意思は固まっているが、活動の仕方などについて相談したい(書類添削を希望するときはそれも伝える)
  4. 転職意思や活動方針も決まっているので、主に求人紹介をしてほしい

 まずは登録段階で伝えるべきことを伝える。それが活用の出発点です。

面談で気を付けること

 人材紹介会社は、転職をお手伝いする皆さんの味方です。そのため実際の求人企業が応募者を選考する場合と違い、できる限り同じ立場になろうとするはずです。その方がどんな長所をお持ちか、というところに重点を置いてお話しするのです。しかし、だからといってマナーをおろそかにしてもよい、ラフな対応でよい、というわけではありません。印象の良かった方ほど企業側に強く推薦するだろうということは、お分かりいただけると思います。

 だからこそ、面談には自分がどう見られるかも考えながらしっかりと臨んでください。相談をするような場合にも、「ここまでは自分では考えたけれど、この点で迷っていて……」などの話ができれば、しっかりした人物だと印象づけることができます。

「相性」を重視する

 いくつかの人材紹介会社の対応をしばらく見て、利用する会社を絞っていけばいいでしょう。以下のようなポイントに沿って利用すれば、効率がよいと思います。

  • 利用する人材紹介会社数は3、4社程度までにする
  • 自分と相性の良いコンサルタントを見つける
  • ある程度の規模の企業と、自分の希望に沿った特徴を持つ企業の2本立てにする

 この中で最も重要なのは、やはりコンサルタントとの相性ではないでしょうか。「合わないな」と感じたら、利用する会社を変えたり、同じ会社の別のコンサルタントとの交流を深めたりする方がよいでしょう。なお、専任制を取っている人材紹介会社の場合は、コンサルタントの変更を依頼するのも1つの手です。ここでも遠慮はいりません。

 その場合の「撤退戦略」も重要です。自分に合わない会社だとしても、「良い求人情報がもらえるかもしれない……」という未練があり、取りあえず登録はそのまま残しておく、という方がいらっしゃるかもしれません。しかし、あまりにも希望に添わない人材紹介会社は、すっぱりと登録を取り消してしまった方が有益ではないかと私は思います。

 登録している会社数が多いと、どの人材紹介会社からどの企業に応募したのか自分で管理できなくなる恐れがありますし、希望と違う求人が送られてくるたびにうんざりするのは精神的にも大きなマイナスです。人生の一大事なのですから、余計なことに頭を悩ますことなく、信頼できる人材紹介会社やコンサルタントとしっかりコミュニケーションを取ることをお勧めします。

面談後のコミュニケーションを積極的に

 次に、活用のうえで大事なポイントとなるコミュニケーションについてお話しします。

 面談で詳しく話をするというのはもちろん大事なのですが、その後のコミュニケーションを積極的になさらない方が多いのではないかと感じています。

 伺ったいくつかのポイントに沿って求人案件が紹介されるわけですが、客観的な言葉にはできない直感的な部分で、どうしても受ける気にならないというケースも当然あるはずです。そんなとき、皆さんはどうしていらっしゃいますか? 多くの方が「未返信」のままにしているのではないかと思います。

 これは非常にもったいないと思うのです。そのことが人材紹介会社にはどうとらえられているか、お考えになったことはあるでしょうか。われわれも「多分興味がなかったんだろうな」という推測はしますが、本当に興味がないのか、忙しくて返信ができないのか、検討してから返信しようと思っているのか、それとも実は転職活動はすでに終了しているのかなど、さまざまなことが考えられるため、実際のところは分からないのです。そうなるとその後の方向修正がまったくできません。

 ですから、やや機械的になっても構いませんので、ぜひ何らかの返事をしてください。その積み重ねでコンサルタントは皆さんの感覚を理解できるようになり、より希望に近い求人を紹介できるようになるのです。

 以下、ちょっとしたテンプレートを掲載します。

××さま

お世話になっております。○○です。このたびは新規求人をご紹介いただきありがとうございました。

今回は以下の理由により辞退させていただきます。
今後とも、どうぞよろしくお願いします。

理由)職務内容/企業イメージ/待遇条件が希望と異なる
備考) ……

 「理由」の部分は当てはまるもの以外は削除してください。また、備考としてどんなところが異なっていたのか簡単にでも書けば、コンサルタントは皆さんの希望をより深く理解できます。「では、その視点でもう一度洗い直してみよう」となるのです。

 それから、現役エンジニアの方は平日に連絡を取ることが難しく、メールでのご連絡がメインになります。すぐに結論が出せないことも多いと思いますので、そんなときは以下のテンプレートをご活用ください。大事なのはとにかく「すぐ返信する」ことです。

××さま

お世話になっております。○○です。このたびは新規求人をご紹介いただきありがとうございました。

現在多忙のため、しっかりと検討する時間が取れません。
週末にはお返事しますので、少々お待ちください。

 「週末」の部分はご自身の状況に合わせてください。

 こんな連絡をいただければ、紹介した側も「お待ちしております」とか、「急ぎの案件なのでお早めにご検討ください」とかいえるわけです。お互いに意思をしっかりと伝えあうこと、それが忙しい中で効率よく希望に沿った転職を実現するための近道です。

さらなる活用のキーワード、「返報性」

  「返報性」――この言葉を皆さんはご存じでしょうか。米国の社会心理学者によって書かれた書籍に端を発し、ビジネス上でも聞くことが増えてきました。簡単にいえば、「ほかの人から無償で受けた恩義に対し、何かお返しをしなくてはという気持ちが発生する」法則のことです。つまり、「Give&Take」の発想ですね。

 これは人材紹介会社の利用時にも生かせるポイントです。皆さんから「恩義」を受けたら、コンサルタントはその恩義に報いるため、皆さんにお返しをしようと考えるのです。

 いろいろと積極的に情報発信をしてくれる人は、コンサルタントに好かれます。「活動の状況がこんなふうに変わった」とか、「面接を受けてこんなことを質問されましたよ」と自分から教えてくださる方には、コンサルタントもつい「実はこんな情報もあって」とお話ししてしまうのです。仕事が忙しくてしばらく連絡が取れなかった場合でも、「少し落ち着きました。新しい求人の状況はいかがでしょうか」とひとこと連絡するだけで、またコミュニケーションが始まります。うまくキャッチボールをすることで、Win-Winの関係になりたいですね。

 いかがですか。ちょっとした気遣いや工夫で、コンサルタントとの関係もより良いものにすることができます。人材紹介会社を最大限活用することで、「自己実現へのステップアップ」となる転職をぜひ実現してください。

筆者プロフィール
キャプラン
伊賀光映氏

大学卒業後TISに入社。エンジニアとしてシステム開発に従事するも、事情によりSEとしてキャリアを築くことを断念。キャリアコンサルタントという職業に出合う。2003年より現職。自身のキャリアについて悩んだ経験と前職での実務経験を生かし、エンジニアやIT営業職の立場での転職支援を心がけているという。
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