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経営者から若いITエンジニアへのメッセージ

第2回 社員はお客さまが育てるもの

大内隆良(@IT自分戦略研究所)
2007/2/14

企業各社にとって、人材戦略は非常に重要な課題だ。人材の育成に当たって、トップは何を思うのか。企業を担う若いITエンジニアに何を求めているのか。

コンサルティングとプロダクトソリューション

ウルシステムズ 代表取締役社長 漆原茂氏

 「3つの課題があって、我慢できなかったので会社をつくった」と述べるのは、自身もITエンジニアとして活躍した経験を持つウルシステムズの代表取締役社長 漆原茂氏だ。その3つの課題とは、「重要なITにかかわらず、役に立っていないといわれていること」「いつの間にかシステム開発は、労働集約産業になってしまったこと」、そして3つ目が「欧米発の技術を輸入・販売すれば売れるみたいな風潮」を挙げ、これらが技術屋として許しがたかったという。

 とはいえ、システム開発を手掛けるなら、他社があまりやっていないようなことをやりたかった。そこで「ビジネスとITの真ん中をやることにした」と語る。こうして、同社は戦略的なIT投資に注目、そのコンサルティングを事業の軸に据え、事業拡大を図ってきた。

 そんなウルシステムズだが、現在は転換期に差し掛かっているのかもしれない。

 なぜなら同社は、ソフトウェア事業(同社でいうプロダクトソリューション事業)に注力しようとして、これまでのコンサルティングビジネスとは違う方向にもウイングを伸ばそうとしているからだ。そのプロダクトソリューション事業だが、昨年(2006年)発表した流通業界向けの企業間取引の仕組みを提供するソフトウェア「UMLaut/J-XML」はその先駆けになりそうだ。今後もコンサルティングで得た知見・ノウハウを基に、さまざまなソフトウェアを提供していく構えだ。

 現在、同社の売り上げの1割程度を占めるにすぎないプロダクトソリューション事業だが、これを2010年にはコンサルティング事業と同規模にし、コンサルティング事業と並ぶ2本柱に育てるという。

 その中で、漆原氏は、つらいのは「コンサル屋さんでしょ」といわれることだという。

拡大するビジネス、中途採用の人数は?

 プロダクトソリューション事業を急激に拡大させるため、ここで社員の中途採用数も一挙に増やそうという戦略方針を持っているのだろうか。

 それに対して漆原氏は、「中途採用は年間10人〜20人程度で、これまで(従来)と変えない」と語り、中途採用者の採用を急ぐ考えはないとする。頭数ではなく、少数精鋭(=知恵で勝負)でいくということだ。

 コンサルティング事業からスタートしても、「開発系や運用系にも手を出してしまうと大手と同じ。それではダメ」と漆原氏は述べる。ベンチャーが大手の後追いをしても意味がないという。漆原氏は、大手と同じ土俵に乗った人月商売にならないようにすることで、大手と同じような量的な拡大、価格競争に巻き込まれないことを狙っているように見える。つまり、社員を急激に増やし、短期間で無理な戦線拡大を図っても、疲弊感と従業員のモチベーションの低下を招くだけと警戒する。

 そもそも、どうしてプロダクションソリューション事業を拡大させる必要があるのだろうか。「この業界の基本事業構造は人月商売」。いい換えると「頭数ビジネス」と語る。「もっと事業を伸ばそうとしたら、コンサルティング事業を回しながら違うことをする必要がある」という。そして見つけたのがプロダクトソリューションのようだ。ユニークなユーザー企業を顧客として抱えていることから、そのユーザー企業、業界に密接に絡むソフトウェアを出していけば、伸びるはずと考えているようだ。漆原氏は「業界を変えるぐらいの面白いソフトを出す」と力説する。もちろん、それ以外にも面白いものがあれば投資する、というスタンスではあるだろうが……。

 では、中途採用で求めているのは、どのようなITエンジニアなのだろうか。プロダクションソリューションの拡大に伴い、いままでのITエンジニアとは違う層の人材を求めているのだろうか。

 それを漆原氏は否定する。つまり、これまでと求める人材は同じ、ということ。「ビジョンを共有してくれる人」で、「お客さまの方を向いている人」というのが漆原氏が求める人材だという。そのうえで、「お客さまも含め、世の中はこれから劇的に変わります。お客さまのわくわくするビジネスを素晴らしい仲間と一緒に体感してほしい」と同社のメリットをアピールする。

社員を育てるのはお客さまの真意とは

 スキルアップについての話題になったときに漆原氏は、「各論のスキルってありますよね、JavaとかUMLとか.NETとか。でも、もっと根底の、根っこのスキルがあると思うんですよ」と語る。それが日本語、お金、ロジックのことだ。以前のITmediaとのインタビューでは、これらのスキルをJML(Japanese、Money、Logic)と答えている(関連記事)。

 そうした姿勢は、中途採用時の研修でも重視している。「入社直後に入社者トレーニングを2週間ほどびっしりと行う」と漆原氏は語る。特に日本語能力、書く能力を重視しているように見える。「ドキュメントを記述するときにきちんと分かりやすく書けるか」を重要視している。もちろんお金のこと、論理的な思考も入社時に徹底的に能力を磨く。

 そういうことをしながら最終的に配属を決める。「だって数回の面接だけで決められないじゃないですか」と漆原氏は笑いながら語る。

 あと、漆原氏の口から何度か発せられた言葉が、「社員はお客さまが育てる」というものだ。同社のコンサルタントは、基本的にユーザー企業に乗り込み、ユーザー企業側の人間、発注側としてプロジェクトを仕切ることも多い。すると「お客さまに大きく期待され、仕事を任されることで人は大きく成長」するのだという。そのために社員には「背伸びして仕事をしろ」を語っているのだという。

 漆原氏は、お客さまとコミュニケーションが取れないような職場でも、いろんな工夫をすれば、お客さまとコミュケーションが取れると語る。例えば、客先常駐でシステム開発しているなら、「あいさつでもいいからまずは話し掛けること」だという。それを実践してみるところに、自らのスキル、キャリアを伸ばすヒントがあるのかもしれない。

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