第13回 セキュリティ最前線で戦うには?
三浦優子
2007/11/6
企業各社にとって、人材戦略は非常に重要な課題だ。人材の育成に当たって、トップは何を思うのか。企業を担う若いITエンジニアに何を求めているのか。 |
■たかがサポート、されどサポート
トレンドマイクロでユーザーサポートを担当するサポートサービス本部は、他社のサポート部門と異なる部分が多い。
トレンドマイクロは、セキュリティソフトウェアをはじめとするセキュリティ全般のソリューションを提供している。サポート部門は、他社と同じように「操作方法が分からない」といったユーザーからの問い合わせに対応するのは当然のこと。しかも、トレンドマイクロのサポートサービス本部は、そうした機能以外にセキュリティ被害に遭ったユーザーの元に駆けつけ、状況を打開するセキュリティレスキューチームとしての機能を有している点が、一般のソフトウェア会社のサポート部門と大きく異なる。
さらにトレンドマイクロは、セキュリティレスキューチームが力を発揮しやすいように、新しいウイルスなどのセキュリティ被害の分析と、その対策を見つけ出す「脅威対策ラボ」としての役割もサポートサービス本部に持たせている。これはセキュリティ被害に遭ったユーザーをサポートする際に、常に最新のウイルスに関する知識をサポート部門自体が持つことが必須になるからだ。
いわばトレンドマイクロのサポートサービス本部は、セキュリティ対策のプロであるエンジニアが集まる部署となっている。同社 サポートサービス本部 本部長 沓澤克郎氏は、「当社に入社するエンジニアに求める要素の1つが、会社になじむ力」だと指摘する。この会社になじむ力とは、どういうスキルを指すのだろうか。
■夜中に出社が必要でも明るく対応できること
「中途入社を希望するエンジニアの方と面接する際、私が気になるのはソフトスキルなんです」と沓澤氏は語る。
トレンドマイクロ サポートサービス本部 本部長の沓澤克郎氏 |
一般的に中途入社を希望するエンジニアと面接する際、新卒採用者の面接とは異なり、各人のプロフェッショナルスキル、コアコンピタンスといった即戦力としての技術力や知識などが問題となることが多い。
だが、沓澤氏はそうした技術スキル以上に、「その技術を身に付けた背景など、その人の人間的な部分が気になるんです」という。
これは、「エンジニアが働く職場といっても、当社のようにセキュリティビジネスを展開している企業は、ほかのITベンダとは異なる特性があります。そうした特性を受け入れ、会社になじむ力を持った人が必要だと考えているからです」と沓澤氏は説明する。
IT業界内でも極端に速い変化に対応していくことが、トレンドマイクロでは必要とされる。
「セキュリティを取り巻く環境変化は、本当に激しい。この変化に従って、会社の戦略も変わることになります。例えば、数年前はウイルスといえばマクロウイルスが主流で、世界のどこかで起こったものが日本にもやって来るという流れでした。しかし、現在の脅威は特定業種や、特定地域を狙ったものが増えています。アメリカで起こった脅威対策を日本に持ち込めば済む状況ではなくなりました。日本で即対策を考え、実行する必要が出てきました。セキュリティビジネスは、こうした環境の変化に即時に対応する必要があるため、会社の戦略も瞬時に変更を迫られます。そうした環境変化に対応していくことができる人材か否かということが、当社で仕事をしていくエンジニアには必要な資質となるのです」
もちろん、沓澤氏はエンジニアのプロフェッショナルスキルやコアコンピタンススキルが不要だといっているわけではない。同じスキルを持ったエンジニアであっても、セキュリティベンダで仕事をする向き、不向きがあるということだ。
例えば、脅威は時間や場所を選んでくれない。ごくたまにではあるが、夜中に出勤しなければならない場面も出てくる。そうした場合でも、前向きに仕事ができるメンタリティがあるかどうか。
「夜中に出勤しなければならないようなタイミングも、ごくまれですがあることはある。そういう場面でも、明るく前向きに仕事ができる人と一緒に仕事をしたいと思います。幸い、現在のスタッフにはそういう場面で明るく仕事ができるメンバーが多いです」
夜中に出動し脅威と対峙(たいじ)するというと、「まるでスーパーマンか、ウルトラマンのようですね」と、沓澤氏に冗談交じりに尋ねると、「そうですね、そういう側面もあるかもしれませんね」と笑顔で返してくれた。「地球を守っている」というと大げさだが、それくらい前向きで非常時に対応できるメンタリティが必要ということのようだ。
現在の脅威の特徴と対策とは? |
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