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経営者から若いITエンジニアへのメッセージ

第18回 プログラマ社長が語る「60歳プログラマ」の勧め

加山恵美
2008/7/2

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企業各社にとって、人材戦略は非常に重要な課題だ。人材の育成に当たって、トップは何を思うのか。企業を担う若いITエンジニアに何を求めているのか。

 「希望する限り、50歳でも60歳でもエンジニアはできる。自分なりのキャリアの築き方を見いだして」。コンピュータの制御にほれ込んで30年あまり。制御について語るときはいまだに目を輝かせるイーソル 代表取締役社長 澤田勉氏が、若手エンジニアに組み込みの仕事やキャリアについてアドバイスする。

週末はプログラマ、イーソルの澤田氏

イーソル 代表取締役社長 澤田勉氏

 「目標は最年長のプログラマになることです」と笑顔で話す社長がいる。会社トップに君臨しながら現役のプログラマでもあり、ずっとプログラミングを続けたいと願っている。開発への並々ならぬ愛着ゆえだ。「でもね、私のプログラムは(もう現場では)使ってもらえないのですよ」と謙遜(けんそん)して笑う。

 いまはどんなプログラムを作成しているのかと問うと、照れて首を横に振る。内緒ということらしい。同席の社員がこっそりと「週末にWindowsのプログラミングをしているそうですよ」と教えてくれた。

 彼はイーソルの代表取締役社長、澤田勉氏。同社は1975年の創業以来、制御系組み込みシステムの開発に取り組んでいる。設立当初は上下水道など、社会インフラにかかわる大規模システムを制御するシステムの開発をしていた。いまでは携帯電話やカーナビ、デジタル家電なども手がける。

前提は終身雇用。文系・理系は重要ではない

 イーソルの人材戦略について質問すると、澤田氏は新人の採用方針の説明を始めた。近年の実績では新卒採用は25人ほどで、そのすべてがエンジニア採用だ。出身学部が文系か理系にはあまりこだわらないという。その理由を澤田氏はこう話す。「大学の4年間で学ぶことは人生のエントリに過ぎず、その先の業務で学ぶことに比べたらさほど重要ではありません。もちろん知らないより知っている方がいいのですが、その先のスキルアップのほうが大事です」。就職前の経験より後を重視するということだ。

 採用時に見極めるのは、本人の資質である。「その人が持つ基本能力、あるいは応用能力、努力家であるかどうかや人柄など。専攻よりこうしたことを優先します。それから興味。ものづくりが好きな人、(技術的な知識はなくても)機械に興味がある人、携帯電話を使い倒す人などはいいですね。結果的に内定者は文系と理系がおよそ半々、少し理系が多いくらいになります」

 加えて「前提は終身雇用です」と断言する。「近年では成果主義的なことも徐々に取り入れていますが、前提は終身雇用です。『ソフトウェア会社の資産は人である』『人でしかない』と考えているからです。エンジニアは育つのに時間がかかります。40年間働くことを考え、実務で徐々に技術を身に付けてもらいたいからです」

3年でCOBOLに飽き、会社を辞めた澤田氏

 開発現場にて技術を磨くことを大切に考える澤田氏。澤田氏自身が起業に至った経緯を聞くと、根っからの制御好きであることが分かる。

 「実は私も文系でした。卒業後、ITとは関係ない会社でCOBOLを覚えました。最初は興奮しました。コンピュータ室にいるとキッキッとテープが回るなど、動きがあったからです」

 コンピュータを動かしているという実感を味わえた新人時代。その感激を澤田氏は昨日のことのように話す。しかし、「面白かったのですが、3年目には飽きました」という。

 「約束事の世界だったからです。正確にプログラミングを続けるばかりで、そろばんと一緒。最初は感激しましたが、延々と計算するだけで、面白くなくなってしまったのです。それで3年後には『辞めてやる、辞めてやる』と考えていました」

 ただしコンピュータそのものには大いに興味があった。特にコンピュータの制御系にである。COBOLに飽きた澤田氏は転職し、制御系の道へと進んだ。

 「当時制御系では溶鉱炉の稼働やダムの取水制限などをしていました。まだミニコンが使われ始めたころです。高価で大きなボードを買うところから始まり、自由にプログラムをするのです」と澤田氏は熱く語る。

 制御系に強くひかれたのは「自由度の高さ」のためだそうだ。「もう、やみつきでね」と満面の笑顔でいう。「そのときの経験をもとにイーソルを立ち上げました」ということだ。

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