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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第2回 プロマネにならないと生き残れない?

アデコ
高野和幸
2007/2/15

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

ITエンジニアとして働き続けるには?

 世間でまことしやかにささやかれている“転職の常識”が事実なのかどうかを考える本連載。今回は、「ITエンジニアとして働き続けるためには、プロジェクトマネージャ、いわゆる管理職にならなければならない」という常識について考察してみます。

 プログラマとしてスタートすることが多いITエンジニアとしてのキャリア。プログラム設計から詳細設計、基本設計、さらには要件定義へと、任される仕事の範囲は徐々に広がっていき、上流工程へ向かいます。

 役割もメンバーからサブリーダー、リーダーになり、スタッフ管理も求められる立場になるころに頭をよぎるのは「自分はこのままプロジェクトマネージャを目指すのか?」というテーマ。

 これまで磨いてきたスキルや知識を活用するためには、多くの先輩たちがそうしたようにプロジェクトマネージャになるのが当たり前。そう考えているITエンジニアは非常に多くいます。

 それでは、何かしらの理由でマネージャになることを望まないITエンジニアがいたとしたら、彼らのキャリアアップは不可能なのでしょうか? 彼らはどこに向かえばいいのでしょうか?

「マネージャになるしかない……」と繰り返した千原さん

 私のところに転職相談に来た千原さん(仮名)は、10年以上の経験を持つ30代半ばのITエンジニアの女性。プロジェクトリーダーとして、業務アプリケーション開発の最前線で活躍していました。

 千原さんは転職先として、プロジェクトマネージャとしてのステップアップが可能な企業を希望していました。残念ながら所属している企業の業績がイマイチで、給料も数年間据え置き、ボーナスの支給もなくなってしまったために転職を考えているとのこと。本人はスキルもあり、今後の成長も十分に見込める人で、転職活動もきっと順調だろうとの印象を受けました。

 しかし、千原さんのお話の中には、何度も繰り返される気になる言葉があったのです。

 「将来のことを考えれば、マネージャになるしかない……」

 経歴を語っているとき、身に付けた技術について語っているときの明るい表情も一変し、千原さんは絞り出すような声でいいます。その内容に違和感を持った私は、思い切って質問をしてみました。

 「千原さんは、マネージャになりたいですか?」

 すると彼女は、せきを切ったように現場への熱い思いを語り始めたのです。

 「大好きな開発現場から離れてしまうことは寂しく、できることならば一生涯、スキルを磨きながら開発業務に携わっていたい。しかし将来の生活を考えると収入アップは不可欠で、そのためにはプロジェクトマネージャとして働くしかないと考えている」とのことでした。自らのキャリアアップを真剣に考える千原さんにとっては、当然の結論だったのかもしれません。

実現した「現場で働き抜きたい」という願い

 千原さんの言葉を聞きながら、私は1つの企業を思い浮かべていました。中小企業向けのソフトウェア製品の開発・販売を行っている従業員20人ほどの小さな企業で、開発技術をこよなく愛するITエンジニアが集まった、まさに「職人集団」といった雰囲気を持っているところです。現場を統括するリーダー職はあるものの、基本的には皆が開発業務に直接かかわり、ソフトウェア開発のスペシャリストとして活躍できる環境が整っていたのです。

 もちろん、最新の開発技術についての自己研さんは欠かせず、極端にいえばいつまでも勉強を続けていかなくてはいけません。そのことも併せて説明しましたが、千原さんの表情は見違えるように輝いていました。ようやく、ご自身の理想を実現できるステージを見つけることができたのです。さっそくこの企業への応募を決め、転職活動を開始しました。

 企業側も、現場で成長したいという千原さんのひたむきな姿勢を高く評価し、とんとん拍子に内定、そして入社に至りました。現在はリーダーとして後進の指導を行いながら、「現場で一番技術レベルが高いITエンジニア」として存分に力を発揮しているそうです。

 このように、自社内でソフトウェアなどの製品開発を行っている企業では、現場での開発業務を軸とした、プロジェクトマネージャにならないキャリアプランを確立しているケースが少なくありません。また、最近ではITエンジニアを極める道として「アーキテクト」という職種を設ける企業も出てきています。

 千原さんのように仕事に求める価値を明確にし、それに向かって努力を続けることができれば、理想のキャリアプランを実現できる可能性が増すことは間違いないのです。

 続けてもう1つ、プロジェクトマネージャにならないキャリアプランを紹介します。

   

今回のインデックス
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