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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第4回 「資格を取って転職」は可能?

アデコ
高野和幸
2007/4/12

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

何のために資格を取るのか

 今回はITエンジニアであれば一度は志す(?)IT関連資格の取得について、キャリアアップという観点から考察してみたいと思います。

 そもそもITエンジニアは、何のために資格取得を目指すのでしょうか。

 業務の現場では、参加するプロジェクトによっては使用する開発ツールなどが指定されます。その場合、局所的なスキルを一点集中型で習得していくことになり、結果としてスキルが偏ってしまうケースが考えられます。

 IT関連資格の勉強をすることによって、技術全体を俯瞰(ふかん)するイメージで、体系的な知識を得ることができます。どこでも通用する、しっかりとした基礎を固めることができるのです。

 最近では「情報処理技術者試験」資格の取得を義務付けている企業や、一部のベンダ資格について取得時に手当を支払ったり、毎月の給料に上乗せしたりするような企業も増えています。これは自社に所属する技術者のスキルレベルを分かりやすく取引先にアピールするために、資格という“ものさし”を活用する機会が多くなったことを表しています。

 このように、ITエンジニアは資格を取得することで、どんな環境にも柔軟に対応できる基礎力をアピールすることができます。それは転職という場面でも同様です。

 しかし、ただ思いつきでやみくもに資格を取得すれば必ず評価を得られるというわけではありません。資格の活用の仕方によって、キャリアアップへの効果は大きく変わってきます。

 企業はどのようにして、どんな基準に基づいて資格を評価しているのでしょうか。今回は、資格を有効に活用して大きなチャンスを得られたという成功エピソードを紹介します。

学習目標として資格の取得を設定

 信田さん(仮名)は20代後半のITエンジニア。少人数のソフトウェア開発会社から中堅のシステム開発会社に派遣され、基幹業務システムの一機能について、プログラミングやテストを繰り返す毎日を送っていました。

 もともと開発業務がとても好きで、同じような作業が続くこともそれほど苦にはしていなかったものの、機会があれば新しい技術にチャレンジしたいといつも考えていたそうです。

 しかし、現状のままではそんなチャンスが得られる可能性は低いものでした……。そこで信田さんは、業務で比較的頻繁に接し、とても興味を持っていたOracle Databaseについて、一から勉強をしてみようと思い立ちました。せっかく勉強を始めるのならば、何か目標があるとハリが出るだろうと考え、「ORACLE MASTER」の取得を目指してみようと決心したのです。

 教習本や問題集を買い込んで、さっそく勉強をスタートした信田さんは、これまで自分が使用していたものがごく一部の機能に限定されていたことを知り、ますます面白さを感じるようになりました。勉強をしながら、「こんな機能を使えば、あの業務はもっと効率化できるなぁ」と想像することも多くなったそうです。

 「好きこそ物の上手なれ」で、忙しい業務の合間を見つけては努力を続け、どんどん知識を身に付けていった信田さん。幸運なことに、資格取得を目指していることを聞いた常駐先のマネージャが、業務終了後の実機の使用を許可してくれたこともあり、実践練習も万全に行うことができました。

 当初は「ORACLE MASTER Silver」の取得を目標にしていましたが、順調にテストをパスしたことでより意欲がわき、最終的には何と最高クラスの「ORACLE MASTER Platinum」に合格することができたのです。

資格取得で気付いた、自分の強み

 私が信田さんに会ったのは、信田さんがその資格を取得して1カ月ほどが過ぎたころでした。過去にも転職を考えたことが何度もあったそうですが、常駐先で一緒に仕事をしているITエンジニアたちと自分との違いが見いだせず、セールスポイントが分からない状態で、一歩を踏み出す勇気が持てなかったとのこと。

 「それで今回は、資格をセールスポイントにしようと考えられたのですか?」

 私がそう質問すると、信田さんは首を横に振り、笑顔でこう話してくれました。

 「資格がどのような評価をされるかは分かりませんが、資格取得を通して、これから先も努力を重ねてITエンジニアとして成長し続けたいという気持ちはほかの誰にも負けないと気付きました。これは大きなセールスポイントですよね?」

 この信田さんの言葉のとおり、ITエンジニアの転職において、企業が大きな評価ポイントとして考えているのが、実は「学習意欲」なのです。

 信田さんは強い学習意欲だけではなく、それを裏付ける動かぬ証拠としての資格を持っていたので、転職活動は実にスムーズに進みました。業務内容だけの職務経歴書では声が掛からなかったかもしれない企業からも面接のオファーがあり、複数の内定を手にすることができました。そして、充実した教育研修制度が自慢のシステム開発会社へと転職することができたのです。

 ちなみにその企業では、「ORACLE MASTER Platinum」の資格保持者には毎月5万円の手当が支給されるとのことでした。

 続けてもう1つ、資格を活用したキャリアアップのエピソードを紹介します。

   

今回のインデックス
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(4) (1ページ)
 「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント(4) (2ページ)

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