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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第8回 30代・下請け。上流工程に行くのは難しい?

アデコ
福間啓文
2007/8/9

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

 現在のITエンジニアの求人市場を見ると、企業の人材採用意欲は引き続き非常に高い状態です。20代の若手はもちろん、プロジェクトを任せられる30代の中堅層への採用意欲も高まっています。

 ただし30代の採用となると、企業は即戦力を求める傾向にあります。具体的には選考の過程で、マネジメント経験・業務経験・技術経験のバランスを見ます。このバランスが取れていないと判断されれば、「年齢の割には経験が浅いですね……」ということで、書類選考にすら通らないということになります。

 ……しかし、本当にそんな例ばかりなのでしょうか?

 今回は、ある1人のITエンジニアの例を基にして、「30代」で「下請けからのキャリアアップ」は可能なのか、可能ならどうすれば実現できるのか検証してみましょう。

33歳、木下さんの焦り

 木下さん(仮名)は現在33歳、新卒でソフトハウスに入社して12年目のITエンジニアです。このソフトハウスは社員100人ほどの設立30年になる独立系の会社であり、主にITエンジニアを派遣して収益を上げています。仕事形態としては、プロジェクトの2次請けの会社に派遣として参加するものが多く、場合によっては3次請けの会社に参加することもあるとのことでした。

 金融系システム構築プロジェクトに多数の実績がある木下さん。ここ最近は某大手クレジット会社の会計システム構築プロジェクトに参加して基本設計以降を担当し、サブリーダーとしてマネジメントも行っていました。ただし基本設計に関しては、2次請けの中堅システムインテグレータ(SIer)が主担当であったため、木下さんの経験は補助的な業務まで。直接携わったといえるのは詳細設計以降でした。

 人間関係に恵まれ、ある程度の規模のプロジェクトにも参加でき、木下さんはまずまず満足していました。ですがふと今後を考えたとき、「いまの会社に在籍している限りは上流工程の経験ができない」ということに気付いて限界を感じたそうです。30代という年齢を考え、将来的な不安から転職を決意しました。

突き当たった壁

 転職活動を始めた木下さんは、下記のような課題に直面しました。

  1. 上流工程の経験がほとんどない
  2. 年齢と経験(3次請け)のバランスが悪い
  3. 経験環境が汎用機系環境(COBOL)に偏っている
  4. 上記の理由から、求人数が少ない

 上流工程にかかわれる環境を切望する木下さんは、企業に直接応募したり、人材紹介会社に登録したりしていました。しかし自己応募では書類選考もなかなか通過できず、人材紹介会社からは「オープン系のご経験がないですから厳しいですね」といわれてしまったそうです。

 「こういう求人ならご紹介できますが……」といわれて資料を見てみると、現在と同じような位置付けの会社ばかり。「上流工程に携わりたい」という木下さんの希望に沿わない求人がほとんどという状況だったそうです。

 木下さんの転職へのモチベーションが下がり始めていたころ、私は木下さんにお会いしました。

木下さん、壁を乗り越えられるのか?  

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