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「転職でキャリアアップ」のウソ・ホント

第10回 せっかくの大手なのに。転職するなら離婚する!

アデコ
福間啓文

2007/10/24

数年前と比較すれば、転職は身近なものになってきている。だからこそ気を付けたい「転職でキャリアアップ」の思い込みについて、「ウソ・ホント」の視点で考えてみたい。

 転職を志すITエンジニアにアドバイスをするとき、「なぜ転職を考えたのですか。希望は何ですか」ということは必ず聞きます。その問いに対し、特に今年は「大手に行けるチャンスがあるので、大手に行きたい」という返答をする人が多いと感じます。

 確かに、大手企業には魅力が多いと思います。大手に転職すれば、一般的には「キャリアアップ転職」であると見なされるでしょう。

 しかし、キャリアについての考え方、価値観は人それぞれです。漠然とした“大手神話”だけで転職活動をしてしまっては、失敗する可能性もあるでしょう。今回は2人のITエンジニアのケースから、「大手なら安心」という「常識」を考えてみます。

適正な評価をしてほしい

 32歳の立川さん(仮名)は大学卒業後、大手独立系システムインテグレータ(SIer)に入社。生保業界の情報系システムのアプリケーション開発プロジェクトの経験が豊富です。要件定義・基本設計と上流工程の経験をし、約30人月のプロジェクトマネージャとして活躍していました。

 順調にキャリアアップを積み、顧客からも厚い信頼を得ていた立川さんは、業務内容や働く環境についての不満はありませんでした。しかし30歳になったころ、会社の自分に対する評価と、その結果ともいえる収入面に疑問を感じるようになったようです。さらに時がたつにつれ、その疑問が不満に変わり、立川さんは転職を考えるようになりました。

 立川さんの会社では最近、個人の業績に対する評価制度を導入しましたが、年功序列的な社風がまだ多分に残っています。実際の評価について、少なくとも立川さんは納得をしていませんでした。また、年功序列の環境における昇進を考えたとき、果たして自分の年齢と実力に見合ったポジションが得られるだろうかという不安も感じました。

 そこで立川さんは、自分のキャリアと成果に見合った報酬が得られる会社に転職しようと決意しました。外資系企業であれば適正な評価体制があり、努力と成果次第で年収を上げることが可能であると考えた立川さんは、さっそく外資系を中心に転職活動をスタート。複数の外資系企業の面接を受けた結果、中でも評価基準が明確で、インセンティブも魅力的であった外資系ソフトウェアベンダの内定を得ることができました。

 面接時の会社の印象が非常に良く、年収についても想定していた金額より100万円近く多いオファーを受けられたため、立川さんは入社の決意をほぼ固めていたようでした。

想定外……妻からの猛反対

 結婚していた立川さんは、このとき初めて転職の意思を奥さまに話したそうです。ここで立川さんの想定外のことが起きました。そう、奥さまから猛反対されたのです。

 「大手の会社にいるのに、どうして転職をしなければいけないの? 外資系の会社は安心できないんでしょ。業績が悪くなったらクビになるんじゃないの? 将来的なことを考えれば、安定しているいまの会社の方が絶対いいのに。そんな会社に行くのなら、離婚します!」とまでいわれ、立川さんはすっかりひるんでしまったのです。

本当に外資は不安? 国内大手なら安心?

 ここで、立川さんの転職活動のポイントをおさらいしてみましょう。

1.なぜ転職を決断したのか

 立川さんは、現職の年功序列的な社風から、自分が適切な評価をされていないと感じ、不満がありました。また、社風と社員の年齢構成から、将来的な社内での昇進に不安を感じていました。

2.本当に外資系企業は不安定なのか。国内大手企業なら安心なのか

 外資系だから不安定だとは限りませんが、逆に不安がまったくないともいえません。しかし、立川さんの転職動機を考えると、現在の会社に残る方がリスクが高いのではと思います。また奥さまの発言についてですが、漠然としたイメージから「大手は安心」「外資系は不安」と考えているようでした。

3.奥さまのひと言で考えてしまうくらいの転職動機なのか

 これでひるむくらいの動機ならば、逆に転職はやめた方がいいかもしれません。強い動機と意志がなければ、転職は成功しないと思うからです。本当に自分で考え、納得しているのなら、ひるむことなく「自分はこう思っているので応援してくれ!」と説得することができるでしょう。

 また、奥さまに転職の話をするタイミングも悪かったのではと思います。事前に話をし、行動することが必要ではないでしょうか。

 立川さん自身もこの3つのポイントについて、しばらく冷静に考えました。いまの会社に残ることと新天地で頑張ることを比較し、やはりいまの会社では不安が大きいこと、転職したいという強い意欲があることをあらためて感じました。

 そこで、奥さまの説得を始め、「大手は安心」「外資系は不安」というイメージを払しょくすることに努めました。次第に奥さまも冷静になって、理解を示してくれるようになりました。

 やはりきちんと説明されたこと、また立川さんの転職に対する熱意を知ったことが大きかったのでしょう。結果として、立川さんは内定を受諾し、気持ち良く転職することができたのでした。

もともとの希望は「顧客に近いところでの開発」。しかし……?  

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