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アデコ
福間啓文
2006/8/25

「転職はしたいのだけれど……」だけでは、いい転職はできない? 筆者は、転職の「テーマ」がはっきりしないまま活動することに警告を発する。そういう状態でキャリアコンサルタントに会うことには危険もあるという。

転職はしたいのだけれど

 最近、求職者とお会いしていて気になることがあります。面談の最後に下記のような対話をすることが非常に多くなったのです。

Aさん 「本日お話をすることができて、やっと自分の方向性が見えました。ありがとうございます」

筆者 「どういたしまして。ですが、先日もほかの人材紹介会社に登録されたとおっしゃっていましたよね?」

Aさん 「そうなんですが……。実はそのときは、簡単に経歴の確認をした後は20社ほどの求人票をドサッと持ってこられ、求人内容の説明をされただけでしたので……」

 Aさんは27歳、中堅のシステム受託開発会社(主に某大手システム開発会社の2次請けを担当)で業務アプリケーション開発エンジニアとして活躍していました。漠然と今後のキャリアアップを考えて、面談にいらしたのです。

 27歳という若さの割にしっかりした経験を持っているため、確かに提案できる求人はたくさんありました。しかしAさんの中で具体的な方向が定まっていないため、あちこちの人材紹介会社を回っているにもかかわらず、これといった結論が出ない状態でした。

 これは転職テーマを見失っている人の陥る典型的なパターンです。転職の初期段階ではAさんのように、漠然としたイメージはあるものの「なぜ転職をするのか」「自分はどうなりたいのか」という方向が不明確のまま活動している人が意外に多いと思います。

 現在、転職活動の初期段階で「情報収集」をするときに人材紹介サービスを利用する人が非常に多くなりました。今回は、私たちキャリアコンサルタントとの適切な付き合い方をメインに、特に初めて人材紹介会社を利用する人にアドバイスできればと思います。

何を期待してキャリアコンサルタントに相談するのか

 キャリアコンサルタントとの面談を考えている皆さん。何を期待しているのか、何を聞きたいのかは明確になっていますか。

 面談の際には、少なくとも「転職のテーマは何なのか」「何を聞きたいのか」を明確にしておくべきだと思います。

 冒頭のAさんの問題点は下記のようなものです。

  1. 漠然とキャリアアップをしたいとの希望はあるが、方向性があいまい
  2. そのため、求人内容や給与条件などの情報でしか判断できない状態
  3. 「何を聞きたい」というテーマがなく、まったくの受け身

 まずは「方向性」を明確化すること、まったくの受け身ではなく自発的に考えて行動するという意識を持つことで、問題はクリアできます。

 求職者は、現状に何かの問題を抱えているからこそ、キャリアコンサルタントに相談します。その課題を明確化し、解決策を提案することが私たちの重要な使命だと思います。しかし相談はしたものの、問題解決の糸口が見つからないまま転職活動をし、問題が解決されないまま転職を繰り返すというケースもよく聞かれます。

 「そんなばかな」と思われるかもしれませんが、こういう事例が最近増えているように感じるのです。

 理由として上記のAさんのような問題が多いのですが、実はそのほかに、皆さんが期待する相談相手であるキャリアコンサルタントの資質の問題もあると思うのです。

キャリアコンサルタントの資質とは

 キャリアコンサルタントに重要な資質として、「経験」「情報力」「分析力」「提案力」が必要なことはいうまでもないですが、「受容性」に代表される「人間力」もあると思います。

 1人として同じ転職理由・状況の人はいませんし、それぞれ価値観や希望も違います。よってキャリアコンサルタントとしては、「なぜ転職するのか」「今後どうなりたいのか」「そうなるための課題は」など、まずは適切なヒアリングをすることが大事なのです。求職者もヒアリングの中で気付かなかった何かが顕在化し、結果ご自身で方向性を見つけることがしばしばあります。この「方向性」が転職の成功を左右するのだと思います。

 しかし耳にするところによると、キャリアコンサルタントからのヒアリングが少ない・なかったというケースが多いという現実があります。これは上記の資質に乏しいキャリアコンサルタントが多くなったことが原因ではないかと思います。

 冒頭のAさんのケースは、Aさんにもキャリアコンサルタントにも問題のある、まさに典型的なパターンです。Aさん自身の方向性はあいまいのまま、担当コンサルタントの判断で求人紹介をメインに進められてしまい、最後は「まずはチャレンジしてみましょう!」と押し切られ、流されてしまったというケースです。

 一方的に話を進められたということのほかにも、担当コンサルタントの価値観だけで説教された、情報がなさ過ぎる、頼りない、ウソをいう、約束を守らないなども耳にします。

 ここ数年の転職市場の変化から人材紹介ビジネスが盛り上がる半面、キャリアコンサルタントのレベルがついていっていないという状況はあるかと思います。ただ、皆さんの価値観・希望に合うコンサルタントは必ずいます。上で述べたように、ご自身の考えさえしっかり持っていれば、きっといい出会いがあるはずです。

キャリアコンサルタントと上手に付き合う

 キャリアコンサルタントと面談をするときには、まずははっきりとテーマ(何を聞きたいか・どうしたいか)を伝えましょう。

 そのほかにキャリアコンサルタントを活用する具体的な利点として

  • 職務経歴書の書き方のレクチャー
  • 書類選考時の推薦(自己応募と比べて通過率が高い)
  • 面接スケジュールの調整
  • 模擬面接による面接指導
  • 場合によっては内定企業との年収交渉

などがあります。特に多忙な就業中であれば、よりメリットを感じることが多いと思います。

 また、一生涯のキャリアについてのパートナーとしての活用方法もあると思います。終身雇用の保証がない現在、会社の業績不振・倒産、事業部閉鎖、転勤命令など、今後何が起きるか分かりません。

 そのときにあわてて転職活動をするより、一度会っているキャリアコンサルタントなら皆さんの考え・キャリア・強みなどを把握していますので安心ですよね。

 ぜひ、皆さんの価値観に合うキャリアコンサルタントを見つけてください。

筆者プロフィール
アデコ 福間啓文
1969年生まれ、大阪府出身。私立理系大学卒業後、精密機器メーカーにてソリューション提案営業を経験し、2000年にアデコへ入社。現在、IT系人材・ITエンジニアを専門にキャリアコンサルティングを担当。営業としての観点とキャリアコンサルタントとしての経験から、1人1人のニーズをくみ取り的確な情報提供・アドバイスをすることを念頭に転職支援を行っている。CDA取得者。
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