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知らぬ間にSEの市場価値は下がっていく……

エンジニアの職種別「キャリア点検」のポイント

〜市場価値の高いSE、ITコンサル、プロマネのキャリアとは

キャリアコンサルタント
杉山 宏
2003/12/12

「転職する、しない」にかかわらず、いままでのキャリアを総点検することは大切なことだ。といっても、自分でするとなると戸惑う人も多いはず。ここではキャリアコンサルタントがITエンジニアの職種別「キャリア点検」のポイントを解説する。キャリアプランに役立ててほしい。なお、本記事は@ITラーニングデスクにおいて2002年5月10日に掲載した記事を加筆、修正したものである。

■いつの間にか市場価値が下がっていることも

  ITエンジニアにとって、常にキャリアを磨くことは必須であり、最先端技術に触れる仕事を手掛けること、その成果に対する高い評価を受けることは最大の喜びともいえます。しかし、年齢相応の技術力やマネジメント力を確認する共通の「モノサシ」がないため、個人が自分自身を正しく評価するのは、なかなか難しい状況です。

 ここでは、そうしたエンジニアの皆さんが職種別に自分自身のキャリアの定期点検ができる材料を提供します。「自分の実力を正しく認識するため」、あるいは「ウイークポイントを発見し技術の習得に努めるため」などの判断材料にしてください。

 私からのメッセージは、「転職する、しないにかかわらず、必ず定期的に自分のキャリアを冷静に見つめ直してほしい」ということです。ここでいうキャリアとは、転職だけでなく社内でスキルアップすることも含んでいます。気付いたときには人材マーケットのニーズと自分の実力との間に深いミゾができていた……などということがないようにしてください。

■求人ニーズとエンジニアのキャリアギャップ

 図1は、年齢とキャリアの関係図です。企業は、常に経験年数に比例したキャリアを求めるものです(直線)。しかしエンジニア側は「同じような仕事ばかりでチャレンジングな仕事をさせてもらえないとか」「テクニカルスキルには特化できているが、マネジメントスキルはいつまでたっても身に付かない仕事環境とか」、あるいは「1つのプロジェクトをやり遂げた後」など、キャリアの停滞期が一時的に発生しやすいものです(折れ線)。

●キャリアと年齢の関係図
図1 自分のキャリアが企業の求めるキャリアレベルと一致する、あるいは大きく上回る時期(Aの部分)であれば、有利な条件で転職できる

 これこそがキャリアギャップ(Bの部分)と呼ばれるもので、この落ち込みを最小限に抑える努力が必要な時期であり、転職する気がなくても自分の弱点を見つけ、積極的にキャリアアップに励まなければならない時期です。

 逆に、自分のキャリアが企業の求めるキャリア/スキルのレベルと一致する、あるいは大きく上回る時期(Aの部分)こそ、有利な転職が可能な状態といえます。

 自分が、Aの状態なのか、Bの状態なのか。この判断はなかなかつきにくいものです。そこで、 自分自身がどちらの状態にあるのかを知るために、ITエンジニアの職種別のチェック項目を紹介します。名付けて「職種別キャリアの定期点検」です。

■IT業界に生きる者、キャリアの定期点検を怠るな

 現在のITエンジニアの求人トレンドでは、全職種で高いヒューマンスキルを求めています。これはビジネスがスピードアップし、競争が激化しているため、ビジネスをまとめ上げる能力がどんな職種でも求められるようになっているからです。ソリューション営業職的なスタンスや活動は、どんな職種でも今後求められるようになります。「ビジネスマインドとヒューマンスキルを常に磨いておかないと生き残れない」という時代に突入しているのです。

 一番大事なことは「ITエンジニアたるもの、転職する、しないにかかわらず、自分のキャリアの定期点検をすべきである」ということです。自分自身の陳腐化を避けるため、よりよいキャリアパスを自分で探すために、ひいては幸せな人生をまっとうするために必須なことだと思います。しかし、キャリアの定期点検はなかなか自分では行いにくいもの。そんなときには、私たちのような、ITエンジニアをサポートする人材紹介会社を頼ってください。

■ネットワークエンジニアのキャリア点検

 ネットワークエンジニアといえば、インターネットの普及に伴い求人ニーズが急拡大しています。注目したいのは採用環境が大きく変わったことです。ネットワークエンジニアの転職といえば、少し前まではベンダかネットワークインテグレータ出身のエンジニアが同業他社に転職する、というのが普通でした。しかし、いまは違います。Eコマースの普及で、クライアント/サーバを含むトータルシステムの提案ができる人材へのニーズが高まり、ネットワークエンジニアとそれ以外のITエンジニアの採用領域の垣根は、限りなく低くなってきています。

 これによって仕事の幅が広がり、求められるスペックも多面的になっています。例えば、ネットワークエンジニア出身であれば、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、OS、Webシステム、ミドルウェア、データベースなどを理解できることが求められます。

 それ以外のITエンジニア出身であれば、ネットワークの設計、構築、運用、機器の選定、トラブルシューティングなどにも精通していることが求められています。自分がいまの時代に求められるネットワークエンジニアであるかどうかは、次の点検ポイントを参考にしてみてください。


1. 顧客に最適なネットワークの設計、構築、運用のすべてを提供できる
2. 1に加えて、コンピュータのハードウェア、ソフトウェア、OS、アプリケーション、ミドルウェア、データベース、周辺機器まで分かり、ネットワークをも含んだトータルシステムを設計、提案、構築できる
3. セキュリティの設計ができる
4. 機器の選定から、システムの運用・監視までの提案ができる
5. 運用に関する知識、経験があり、トラブルにも対処できる
6. これまでに大規模ネットワーク、基幹システムの構築に携わったことがある

 いま市場価値が高いのは、ネットワークを専門にしてきた人より、むしろシステム開発からネットワーク開発に移行したエンジニアです。顧客にソリューションを提供できなければビジネスにならないので、ネットワークを含むトータルシステムの提案ができるネットワークエンジニアでなければ生き残れないといっても過言ではありません。これからはシステム、ネットワークの両方の知識、経験を身に付けることがキャリアアップの絶対条件です。

■プロジェクトマネージャのキャリア点検

 インターネットの爆発的な普及により、Webを中心としたBtoB、BtoCなどの新たなビジネスモデルが出てきました。企業は新技術を組み合わせたWebシステムの構築に意欲的です。Webシステムの構築では「より良いシステムをよりスピーディ」に構築し、運用する手法が求められ、同時にこのようなプロジェクトをマネジメントしていけるプロジェクトマネージャ(PM)の採用が活発です。

1. 幅広い技術知識とプレゼンテーション力、交渉力
 PMは、常に実績で評価されます。当然のことながら仕事の質と量のバランス感覚を持つことが必要です。技術とチームメンバー、予算、情報、これらをいかに効率的に利用し、動かしていけるかがポイントとなります。プレゼンテーション・交渉相手は部長クラス以上である場合が多く、経営者の視点をいかに理解し、システム構築の提案ができるかが、腕の見せどころです。

 1つのプロジェクトを成功させれば、それが信頼となり次のプロジェクトにもつながる。もし失敗すれば、信頼回復には大変な労力がかかります。こうした厳しい環境の中でリーダーシップを発揮できる力量、そして度胸を持ち合わせることが必要です。

2. 明るさとコミュニケーション能力は違う
 IT業界は情報の流通も活発です。あるプロジェクトを成功させた人物のウワサは、あっという間に業界内に広がっていくものです。逆に失敗した場合も同じことです。顧客と信頼関係を築くのは、プロジェクトを成功させることに尽きます。

 ハツラツとしていて明るい人だから、といった評価は二の次。チームメンバーや顧客から信頼される強い意思と説得力があれば、表面的な自分のキャラクターなどはそれほど気にすることはありません。

3. いずれPMにという方へ
 遅くとも20代後半には、PMになるためのキャリアプランを持つべきです。いますぐPMになれなくても、「転職を機に知識を深めたり、技術の範囲を広げたり」とキャリアステップを積んでいけば、数年後にPMになることも決して夢ではありません。

 現在、顧客企業の業界は多岐にわたっていますが、1つの業界に特化し、業界の専門的な知識を習得しておくというのも1つの方法だと思います。ほかの誰かと違うこと、得意な分野を持つことで存在価値が高まります。

■システムコンサルタントのキャリア点検

 各企業、業種によって求められるスペックに差があったり、明確にカテゴライズされていない「システムコンサルタント」ですが、エンジニアがなりたい職種としては、PM以上の人気です。

 ここでは「上級SEクラスの人がコンサルタントを目指す」という前提で、点検のポイントをまとめました。実際には“経験値”があってこその仕事であり、個条書きの点検項目で客観的なキャリア点検ができるものではありません。最低限必要とされる要素として受けとめていただきたいと思います。

 システムコンサルタントといっても、ソフトベンダ、ハードベンダ、ソフトハウス、インテグレータ、コンサルティングファームなど、その業種によってコンサルタントの立場は微妙に違います。

 しかし、その大前提となる役割を一言でいえば、「顧客の決定権を持つ人から課題と要望を引き出し、そのソリューションに向けてビジネスを発生させる」ということです。「顧客=その業界の業務のプロ」を相手に、先方の課題をいかに共通の認識としてとらえることができるか。極端ないい方をすれば、コンサルタントに第一に求められるのは、コンピュータの知識よりも業務知識の深さです。

 システムコンサルタントは社会的なニーズに対し、まだまだ絶対数が少なく、高い専門性が求められる仕事です。よって恒常的に人材不足で、人材紹介会社に寄せられる求人の条件も、現職のシステムコンサルタントに限らず、現職は上級SE、またはPMレベルでのコンサルタント採用が増えています。以下の7つのポイントを参考に、コンサルタントへのキャリアアップの可能性を見つけてください。

1. 誰にも負けない専門分野があるか
2. 得意の業界があるか(1との関連において)
3. 課長、部長、取締役レベルの顧客とのリレーションシップがあるか
4. 新しい技術が次々と出てくる中、ハードウェア、ソフトウェア、ミドルウェア、ネットワークなど、最低限の知識を広く浅くキャッチアップできているか
5. 提案力があり、その内容にオリジナリティがあるか
6. 顧客の課題を指摘でき、かつ顧客と同じ痛みを感じられるか
7. 誰からも好かれるようなキャラクターか

 例えば、各産業で一種のブームとなっているCRM、ERP。この分野の導入コンサルタントは現在引っ張りだこですが、今後はSCMやKM(ナレッジマネジメント)など、さらに広い領域でシステムコンサルタントの存在が求められてくることになるでしょう。

 システムコンサルタントへの早道は、各業界の基幹システムに関する大きな仕事を少しでもいいから経験しておくことです。いま所属している会社でそのようなプロジェクトがあれば、積極的に参加することも必要でしょう。そのようなプロジェクトがない会社であれば、転職を視野に入れることも考慮してください。

■SEのキャリア点検

 SEの評価は、テクニカルスキル、開発経験、業務分野、コミュニケーション力、マネジメントスキルによって評価されます。

1. テクニカルスキル:最新の技術にアンテナを張り、キャッチアップしているか。技術進化のスピードに対応できているか
2. 開発経験:30歳までに上流工程のフェイズを経験しているか
3. 業務分野へのかかわり:会計・金融・流通・製造など、どの分野でもよいが、自分の得意分野、専門分野といえる業務分野があるか。その分野でユーザーとともに1年以上のプロジェクトにかかわったことがある
4. コミュニケーション力:開発に必要なヒアリング力があるか。プレゼンテーション力・交渉力があるか
5. マネジメントスキル:ユーザーや協力会社、メンバーとうまくコミュニケーションを図り、限られた条件の中で成果を挙げる努力ができるか

  ターニングポイントでもある28〜31歳の転職では、こうした実績が評価され、次のステップへとつながっていきます。得意な技術や自分の志向を伸ばすための転職として、以下のような例を挙げてみます。

テクニカル志向が強ければ……
メーカーやソフトベンダでより専門的なテクニカル技術を伸ばす

開発志向が強ければ……
コミュニケーション・マネジメント力との相乗効果で、PMへの道が開ける

専門のアプリケーション分野に自信があれば……
システムコンサルタントとしての活躍の場が用意される

 以上、SE、ITコンサルタント、プロマネなど職種別の「キャリア点検」のポイントを解説してきた。キャリアは人から与えられるものではなく、自分で切り拓くものだということを念頭に入れ、定期的に自分の市場価値をチェックしておくことをオススメしたい。

キャリアコンサルタント 杉山 宏氏
大手SI企業にて、SE、プロジェクトマネージャ、営業、事業部長を歴任後、外資系大手コンピュータメーカーにてマーケティング、プロジェクトマネージャを経験。20年にわたって培った豊富なノウハウを生かし、IT業界向けの転職カウンセラーを約8年間経験、面談者は3000名以上、通算500名以上の転職を成功させてきた
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