自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

ITエンジニアに最適な転職時期はあるのか

下玉利尚明
2005/7/14

ITエンジニアが転職する時期でよく聞くのは、プロジェクトが終了したころ、というものだ。ITエンジニアの転職に、ベストシーズンはあるのだろうか。その真相を追う。

企業の採用担当者が
本格的に動きだす

 今回、ITエンジニアにとっての「転職のベストシーズンを探る」というテーマで、人材紹介会社などへの取材を行った。その過程で、多くのキャリアコンサルタントの方々から非常に興味深いことをお聞きした。それは、現在のITエンジニアの市場は「非常に活況」だということ。景気回復が本格化しつつある、とりわけ、自動車に関連した製造業が好調であること、さらには、金融をはじめさまざまな企業のシステムがリプレース時期に当たることがその背景にはあるようだ。そのため、システムインテグレータ(SIer)を中心に多くのITエンジニアが求められているという。

テクノブレーンのキャリアコンサルト 栗原弘守氏

 それではいま、どのようなITエンジニアが求められているのだろうか。転職のシーズンについて触れる前に、まずはそこから掘り下げてみたい。テクノブレーンのキャリアコンサルタント 栗原弘守氏によれば、「大手SIerが中途で数百名規模の採用に動きだしたといった話も出るほど、ここ数年でかつてないほどの活況です。以前はプロジェクトマネージャ、プロジェクトリーダーばかりに募集が集中していたのですが、最近では下流工程の募集も増えてきました」とのことだ。さらに、「キーワードは『Java』『業務知識』『リーダー経験者』。どれかに当てはまるITエンジニアなら転職のチャンスといえます」(栗原氏)という。

 6月、7月という時期も、転職希望者にとって動きやすい時期だ。新年度から2〜3カ月が経過し、新人研修も終わりを迎える。また、来春迎え入れる新卒採用も落ち着くころでもある。

 ようやく人事担当者に時間的な余裕が生まれ、「中途採用や補充採用のために転職希望者と会ってみよう」と具体的な動きが出てくる時期だからである。転職を希望するITエンジニアの中には、「できれば夏のボーナスをもらってから次の職場に移りたい」と願う人もいるかもしれない。そんな人たちにとっても、夏本番を目前に控えたこの時期は、新しい可能性の第一歩を踏み出すために動きだすのにふさわしい時期といえるだろう。

目標のスキルを身に付けられるのか
プロジェクトの意義をしっかりと考える

 2、3カ月程度掛かるプロジェクトならば、4月にスタートすれば6月か7月にはひと段落するころである。ではそろそろ転職を考えようとすると、どうしても気になることがある。それは、「いま、自分が参画しているプロジェクト」についてである。プロジェクトがたとえ途中であっても、自分にとって条件の良い転職先が見つかった場合、さっさと転職してしまっていいものなのだろうか。そんなことをすれば「プロジェクトを途中で投げ出したITエンジニア」といったうわさが広まって、後のキャリアや転職に不利になったりはしないだろうか。

インテリジェンス アシスタントマネージャー 勝又彰氏

 それについては、インテリジェンスのアシスタントマネージャー 勝又彰氏のアドバイスを参考にしてほしい。勝又氏は「もちろん、プロジェクトを終わらせてから転職するのが理想的です」と前置きしながらも、「考えるべきことは、参画しているプロジェクトが自分にとってキャリアアップにつながっているかどうか」だと指摘する。

 「例えば、新卒で入社し3年たっても4年たってもプログラミングばかり。次のプロジェクトも同じようなことでは、いくらやってもキャリアアップは望めません。プロジェクトに参画するかどうかは、自分がそのプロジェクトで『どのようなスキルを身に付けたいのか』、シビアにいい切れば『自身の目指すべきキャリアにとってプラスとなるのかどうか』を基準に考えるべきです」(勝又氏)。その基準でプロジェクトを見れば、そのまま続けていくのか、あるいは途中でも自分のキャリアアップに結び付く転職があれば動くべきなのか、自分自身で判断ができるだろう。勝又氏は、こうも付け加えた。「季節や求人動向、プロジェクトのタイミングなどに左右されるのではなく、自分自身のITエンジニアとしての市場価値を客観的に把握し、そのうえでキャリアパスを描き、その過程で転職の時期を決める……。本当の意味で『自分にとっての転職のベストシーズン』を見つける努力が必要です」

自分にとっての転職ベストシーズンは
ITエンジニアの「市場価値」で決まる

 実は今回、取材をお願いしたキャリアコンサルタントの方々は、皆異口同音に「ITエンジニアとしての市場価値との兼ね合いで、自分にとっての転職ベストシーズンを見つけるべき」という。つまりは、転職を成功させるには、まず、自分の市場価値を正しく知ることが大切なのである。しっかりとキャリアの棚卸しをしたうえで「自分の立ち位置をしっかりと把握」し、そして、「自分がどんなキャリアパスを歩んでいきたいのか」を考えることが重要なのである。

リクルートエイブリックのコンサルタント 細井智彦氏

 だが、多くのITエンジニアは「本当に自分が何をしたいのか」「自分が何になりたいのか」に悩んでいるのが実情だろう。それで、「何になりたいのか分からない」→「取りあえず一般的なキャリアパスに沿った転職を考える」というパターンになる。リクルートエイブリックのコンサルタント 細井智彦氏は「確かに自分だけの力で『何を目指すのか』『どうなりたいのか』を決めるのは困難。そんなときは、自分以外のITエンジニアがどんな仕事をしているのか、例えば身近なプロジェクトリーダーがどんな仕事をしているのかを見てみよう」と、視野を広く持つことの重要性を訴える。「プロジェクトリーダーやプロジェクトマネージャなど、ほかの仕事の内容を理解すること」(細井氏)が大切なのだ。

 さて、自分にとっての「転職のベストシーズン」を見つけるには、まず、キャリアの棚卸しによって市場価値を正しく認識することが重要であると述べた。そのうえで、自分がどのようなキャリアパスを歩むか、その目標を定めていく。入社から数年たっても新卒時と同じ仕事を与えられ、ただこなしているだけでは、ITエンジニアとしてのキャリアアップは望めないばかりか、反対に年齢を重ねるごとに市場価値は下がっていく。ベストシーズンが過ぎ去ってしまう。そうならないためにも、しっかりと目標を定めて、ステップアップを図っていくことが大切なのである。

非常に重要なことは
顧客の視点に立つこと

 その目標を定める過程において非常に参考になるアドバイスを紹介したい。インテリジェンスの勝又氏によれば、「目標を定める過程において、自分のキャリアパスの構築・実現とともに、顧客となる企業のメリットについても考えるべき」という。例えば「Javaを身に付けたい」「プロジェクトマネージャを目指したい」といった場合、「なぜJavaを身に付けたいのか」、あるいは「なぜプロジェクトマネージャを目指すのか」についていま一度、考えてみるべきということだ。その過程で「自分がJavaを身に付けたら、こういうシステムを開発できて、それによって顧客にこういったメリットを与えられる」、あるいは「自分がプロマネになったら、よりよいシステムを低コストで構築できクライアントのあるべきシステム構築により貢献できる」など、「自分が目標を達成することで顧客にどういったメリットを与えられるのか。ITシステムを活用するユーザー側からの視点も踏まえたうえで『自分の目標』を語れる人材。そんなITエンジニアがいま、求められているのです」(勝又氏)。

 ITエンジニアにとっては、夏前のこの時期は確かに転職市場が活況を見せる時期ではあるようだ。しかし、ITエンジニアにとって大切なのは季節的な要因ではなく、自分のキャリアパス、市場価値と照らし合わせた自分にとってのベストシーズンを探すことである。その過程においては自分本位の視点だけでなく、「自分がITスキルを提供するユーザー側の視点にも立って自分の目標を語れる」ことも必要なようだ。

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。