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第1回 コミュニティ活動は、好きだからこそ続けられる

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/5/10

 無数にある開発コミュ二ティやユーザー会といった組織。一体どんなことをしているのか。そこではどんな人たちが活動しているのだろうか……気になっている人も多いだろう。コミュニティのメンバーに話を聞き、その実像を探る。

  今回話を聞いたのは、Linuxのディストリビューション「Gentoo Linux」の日本ユーザー会である「GentooJP」のメンバーだ。GentooJPではドキュメントの翻訳やOSC(open source conference)などのイベント参加中心に活動している。今回はメンバーの中から4人に集まってもらった。

■飴谷茂寛氏
  ハンドブックなどドキュメントの翻訳を担当している。

■木村優氏
  メーリングリストの対応やバグ報告などを行う。イベントの展示物の制作なども行う。

■櫻井知之氏
  Gentoo Weekly Newsletter(GWN)などドキュメントの翻訳(現在停滞中)。

■松鵜琢人氏
  言語系のパッケージを制作し、本家にコミット。カンファレンスなどイベントにも参加している。

雑誌の記事掲載をきっかけにスタート

――プロジェクトを開始した経緯を教えてください

松鵜 「きっかけは2002年の夏ごろ、ある雑誌にGentoo Linuxの記事が掲載されました。そこで興味を持った人たちによって、まずGentoo Linuxに関するメーリングリスト(ML)がスタートしました。その後、その雑誌に掲載された記事の執筆者が講演をする機会があり、その際に4人が集まり、GentooJPを立ち上げることになりました。あとはドキュメントの翻訳をしているうちにどんどんメンバーが増えていった感じですね」

――メンバーの皆さんはどのようなきっかけでプロジェクトに参加されたのでしょう

 

飴谷 「結婚した当初、自分と妻の仕事の時間が合わずに家に1人でいる時間があったので、これは何かをしなければと思ってました。そこにGentooJPで翻訳者の募集をしているという話を聞き、参加することに決めました。もともとGentoo Linuxのことを雑誌で知り面白そうだと思っていました」

木村 「私は高専時代、ロボットコンテストに参加するなど、ハードウェア寄りのことをやっていました。しかしあるときソフトウェアの方もやりたいと思うようになり、学校の余っていたPCにLinuxを入れることにしました。distrowatch.comのページヒットの上位にあったディストリビューションをインストールしていき、その中にGentoo Linuxがあったので使い始めたという感じです。大学編入後、GentooJPのIRCに入るようになっていました」

櫻井 「GWNの翻訳リーダーの人が忙しくなり、誰もやる人がいないなら自分がやろうと思ったのがプロジェクトに参加したきっかけです。参加してからもそれほどGentoo Linuxを使っておらず、普段はFree BSDを使っています」

――メンバーになるにはどんな方法があるのでしょう

飴谷 「翻訳の場合はMLでよく活動している人に声を掛けて了解が取れたら、メンバーに入ってもらっています」

櫻井 「GentooJPでメンバーの募集や立候補を受けるのはドキュメントくらいです。GentooJPでやらないといけない仕事は翻訳くらいなので、開発したい場合は本家で各自やってくださいという形です」

松鵜 「一応パッケージの置き場としてはGentooJPにもありますが、あくまで開発に関しては本家にコミットした方いいと思います」

櫻井 「GentooJPでやっているのは翻訳と飲み会くらいだよね」

一同 (笑)

純粋に好きだから使い続けている

――皆さんにとってプロジェクトを続けているためのモチベーションは何でしょうか

 

松鵜 「何だろう……。純粋に好きだからです。嫌いだったら続けられません」

木村 「面白くなかったらやらないですよね。Gentoo Linuxはツンデレなんていわれることもありますが(笑)。好きになったら浮気できない」

松鵜 「ほかに代替もないということもあります。もし素晴らしいものがあればそちらに移ることもあるかもしれません。しかし、いまの自分にとって魅力的だからGentoo Linuxを使い続けているだけです」

飴谷 「私は翻訳しているので、知らない技術文書も読まないといけません。その関係上、新しい技術を知ることができるので、勉強になっている部分はあります」

松鵜 「Gentooにはどうもドキュメント好きが多いようで、非常にドキュメントが整備されています。新しいソフトウェアの解説がよく書かれていて、ググるとGentooのドキュメントに行き当たるようなことがよくあります」

コミュニティ活動のメリットとは?

――プロジェクトに参加することで、自分の普段の仕事の中でプラスに働いていることはありますか

松鵜 「普段はプログラマとサーバ管理をやっています。私はGentooをきっかけに転職しました。以前はネットワーク系の仕事をしていました。GentooJP立ち上げメンバーの1人がいる会社に転職をしました。パッケージ作りをしているのですが、パッケージに詳しくなりました」

木村 「業務内容は、企業の研究部門のプロトタイプや実験機器を製作しています。いまはワイヤレス関係の分野に携わっていますが、基本的にはデバイスドライバよりも下のレイヤで作業をしています。作業環境は動作するソフトウェアや出力するデータ形式の関係でWindowsを使っていますが、さまざまな環境に慣れておくことで障害対応などの対応力が上がるなど役には立ってると思います」

飴谷 「研究部門で、新しいシステムの試作などをしてます。その過程でのサーバ構築にLinuxを利用することなどがありますが、プロジェクトが本業に役立っているかというとそれほど役立っていません。人脈面やスキル面ではよかったなと思うこともあります。ただ、いまは本業が忙しくなってきて、なかなかコミュニティ活動との両立が難しくなっています。昔、大阪にいたころは通勤途中で翻訳できたのですが、東京に引っ越してからはなかなか厳しいです」

櫻井 「普段は流しの管理者(笑)。最近はネットワーク関係の仕事が中心です。コミュニティ活動が本業で役立つことはありません。こういう活動は自分にとってアウトプットの場であって、インプットの場所ではないですね。インプットはアウトプットの後からついてくるという感じで……。スキルアップとか考えたことないですね」

松鵜 「スキルアップを理由にしてたら続かないと思います。やはりやるなら好きなことをやった方がいいと……」

櫻井 「アウトプットを増やした分、人脈とかは広がったと思いますけど。PacSec.jpに呼んでもらったり、それをきっかけにPacSec.jpの人たちと仲良くなったりしました。自分では人脈を広げようと意識していないけど」

結果を求めると続かない

木村 「スキルアップとか人脈とか、結果を先に求めて参加という形だと長続きしないと思います」

松鵜 「僕は個人的に英語に強くなったと思います。学生時代から比べたら断然向上していますね」

木村 「ただ覚えた単語の8割くらいがスラングだったりするんですよね(笑)」

松鵜 「本家にパッケージを出すとき、昔は出す前に物おじしてしまうこともありました。しかし、いまは『怒られてもまず出せばいいだろう』と思えるようになってきて、自分自身成長できたかなと思っています」


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