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第2回 1冊の本の下に集まった「自作OS」の開発者たち

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/7/17

 無数にある開発コミュ二ティやユーザー会といった組織。一体どんなことをしているのか。そこではどんな人たちが活動しているのだろうか……気になっている人も多いだろう。コミュニティのメンバーに話を聞き、その実像を探る。

 今回、自作のOS開発を行う開発者コミュニティ「はりぼて友の会」のメンバーに話を聞いた。はりぼて友の会は、「30日でできる! OS自作入門」(川合秀実氏著、毎日コミュニケーションズ刊)を参考にしながら、メンバーそれぞれが自作のOSを開発している。現在、メンバーは8名。今回は集まってもらったメンバーの中から次の5人を中心に話を聞いた。

■ひよひよ氏(28歳)
  はりぼて友の会会長。HiyOS開発者

■rapper氏(37歳)
  rapuOS開発者。

■bayside氏(29歳)
  BayOS開発者。イベント準備など担当。

■あっきぃ氏(19歳)
  OSAkkie開発者。OSC(open source conference)などイベント参加準備やグッズ製作を担当。

■uchan氏(18歳)
  BitNOS開発

ある日のぞいた書店で運命の出会いが

――プロジェクトを立ち上げたきっかけを教えてください。

ひよひよ 「それまでWindows環境での開発しかしていなかったので、何かほかの環境でプログラムをしようかなと思っていたころに、『30日でできる! OS自作入門』に出会いました。その後参加したオープンソースカンファレンス(OSC)2006 北海道の懇親会で、川合さんやOSCスタッフの方々と『これはもっと楽しくなるかも』と熱く語り合っている中で、はりぼて友の会の立ち上げを決意しました」

――メンバーの皆さんはどのようなきっかけでプロジェクトに参加されたのでしょう

 

ひよひよ 「この本についてブログなどで言及する人がたくさんいたのですが、そういった方に声を掛けることを基点にプロジェクトが進んでいきました」

あっきぃ 「もともとOSASK計画に参加していて、北海道のOSCに参加したときにはりぼて友の会が設立されるという話を聞いてやってみようかなと思ったのがきっかけです」

rapper 「ひよひよさんから、北海道OSCのライトニングトークの資料として自分の作っていたOSのスクリーンショットを載せたいという連絡があり、その後はりぼて友の会を作るときに『参加しませんか』というお話をもらいました」

uchan 「東京OSCに参加したときにひよひよさんと会う機会があり、『実ははりぼて友の会というのがある』という話を聞いて、僕も『30日でできる! OS自作入門』を持っていたので、面白そうだなと思いました」

bayside 「私も『30日でできる! OS自作入門』を見ながら勉強していて、ちょうど自作のOSが完成しかけたくらいにはりぼて友の会を知りました。せっかくなので自分もここに入ってみようかなと思ったのがきっかけです。1人で開発するよりはそういうコミュニティに入った方が自分の作ったものを知ってもらえるかなと思い参加しました」

――お互いの連絡はどんな方法で取っているのでしょうか

ひよひよ 「主にメーリングリストとIRC、また各自のWebサイトやはりぼて友の会のwikiで進ちょくの状況や情報の共有を行っています」

――幅広い年齢層のメンバーが集まっていますが、互いにコミュニケーションをする中でギャップを感じることはあるのでしょうか

bayside 「現役高校生のuchanと先日社会人になったばかりのあっきぃさんは、謙虚で礼儀正しい方なのでコミュニケーションに困ることはないですね」

(ここで実は取材に同席していた名誉会員の川合秀実氏からコメントが)

川合 「僕の場合、雑談が続くと会話を止めてしまうので結果として技術系の話題が多いです。あと僕が若い人と接するときに『お金を使わせないこと』に気を付けています」

ひよひよ 「あっきぃさんもuchanさんも、高校生の時点でこういうコミュニティに参加していることがすごいと思いますね。これからも、若い人が入ってきやすい雰囲気を大切にしたいなと思います」

開発の連鎖を起こす

――プロジェクトに参加する中でやりがいはどこにあるのでしょう

 

あっきぃ 「OSCで自分の成果を発表しているときだと思いますね」

bayside 「OSは実際に作って、それが動いたときの喜びや充実感、例えば実機にCD-ROMを入れて実際に動いたときの感動やうれしいさは、ほかのアプリケーションに比べて大きいと思います」

――普段の生活の中で開発に掛ける時間はどのくらいでしょうか

bayside 「やはり社会人になると開発に当てられる時間は少なくなってしまいますね」

あっきぃ 「僕も生活環境が変わったので、いまはあまり時間が取れません」

uchan 「僕は学生なんですけど、いまは全然時間を掛けていません」

一同 (笑)

uchan 「前はコンスタントに開発をしていたのですが、今年は受験があるのでいまは時間が取れません」

――開発を続けていくうえでのモチベーションはどこにあるのでしょうか

川合 「実際にプロジェクトを見ていると、誰かが何か作ってリリースすると『俺も続きをつくろう』という連鎖反応が起きるんですね。その連鎖が素晴らしいんですよ。それは1人でやっている場合にはできないですから」

bayside 「あっきぃさんがいったように発表の場があるとモチベーションになります。そこで頒布するCD-ROMを作るときに『去年と一緒でいいのか?』と(笑)」

rapper 「1つのきっかけを隆起させるような感じだと思います。みんなプログラムが好きだと思うんですね。ちょっと疲れても『OSCがあるから』ということでやる気を起こすという」

――では、プロジェクトに限らず皆さんがモノづくりをするうえでのモチベーションはどこにあるのでしょうか

あっきぃ 「自分の場合は『あったらいいなぁ』と思ったものがあったら『今度作ってみよう』という感じです」

uchan 「できたら父親に見せようとか、OSCに出してみようとか。普段の勉強は30分で飽きるけど、プログラミングをしていると時間を忘れます」

bayside 「私はプログラミングが好きで、中学生くらいの時にはプログラマになろうと決めていました。やはり作ることが好きなんだろうと思います。自分がコントロールしている感覚が気持ちいいかな」

次のステップに進みたい人が集う場所に

――プロジェクトに参加していることが普段の生活で役立っていることはありますか

 

あっきぃ 「OSASKやはりぼてといったOSの開発や、イベント時のグッズ製作の経験を買われて就職がきまりました」

uchan 「『30日でできる! OS自作入門』を学校に持って行って、自分の名前が載っている部分を見せて自慢になったのがよかったです」

bayside 「私はセミナーのASPの開発や保守を担当しています。普段はWeb系のサービスを担当しているので、直接OSは関係ないのですが、それでもOSの知識があるとトラブル解決の足がかりをつかめるのではと思います。また、こういった開発プロジェクトやOSCに参加すると、普段なかなか知り会えない人に会うことができたり、人脈が広がることがよかった点だと思います」

rapper 「普段は金融系のシステム開発をしています。そこでサーバの周りの設定や運用を行っています。社内の人と担当業務以外のことで話す機会がありますが、担当業務じゃなくても実はほかの技術に詳しい人もいるんですね。そういう人と話題ができたり、仲良くなったりします」

――はりぼて友の会が目指す今後の方向性はどのようなものでしょう

ひよひよ 「どうなるんでしょうね(笑)。『30日でできる! OS自作入門』を参考にOS開発を楽しんでいる人がどんどん集まってもらえたらなと思います」

bayside 「人はもっと増えてもいいかもしれない。あとはもっといろいろな人にこの会の存在を知ってもらいたいです」

あっきぃ 「もうちょっと表向きでも動きが活発に見えるといいですね」

uchan 「もうちょっと技術が集積しているといいと思います。いまもいくつかは公開されているけどまだ足りない気がします」

rapper 「アプリケーションが作れてしまうくらい情報が公開されているといいよね」

川合 「はりぼて友の会はこの本の読者の同窓会的な存在ですよね。一緒に苦労したわけじゃないけど、同じくらいの苦労はしているという。名誉会員からいわせてもらうと、私の本から独立してこういう会ができることは光栄です。ただ、これを自前でコントロールすると面白くないので、私の手を煩わせない存在であってほしいなと思います」


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