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組み込みエンジニアは何を見るか

第9回 組み込みのOS開発者は何の夢を見るか

三浦優子
2008/1/10

最近注目されている組み込みエンジニア。彼ら、彼女らは、どんな製品にかかわっているのだろうか。

 イーソルは、エンジニアリングソリューション、流通システム向けソリューション、そして組み込みシステムソリューションを手掛けている。組み込みシステムソリューションについては、OS、開発ツール、各種ミドルウェアなどの開発を自社で行い、それらにプロフェッショナルサービスを組み合わせてソフトウェアプラットフォーム「eCROS」として提供している。

 坂本裕和氏は、同社のエンベデッドプロダクツ事業部に所属し、T-Engine標準のリアルタイムOSであるT-Kernelに、イーソル独自の技術を基に改良・チューニングを施した、組み込みシステム向けのリアルタイムOS「eT-Kernel」開発に携わる、今年で入社8年目のエンジニアだ。そんな坂本氏に、組み込みエンジニアになった経緯、商用のOS開発で苦労していること、また将来手掛けたいことなどを聞いた。

 坂本氏は、大学院で主にCAD/CAMの研究に携わっていた。が、就職説明会で聞いたイーソルの事業内容に興味を持ち、入社を決めた。

 「大学院時代、研究テーマの1つだったグラフィックスよりも、プログラミングの方が楽しいと考えるようになっていました。できればものづくりに携わる仕事、それもプログラミングにかかわりたいと考えるようになっていたのですが、就職説明会で話しを聞いて初めて、現在手掛けているような仕事があると知りました」(坂本氏)

 ご存じのとおり、国内でOS作りを業務とするエンジニアの数は極めて少ない。特に商用OSはごく限られた企業しか手掛けていない。お手本も少なく、アプリケーション開発とは異なる開発の苦労が伴うOS作りと、坂本氏はどう格闘しているのか。

モットーはメンテナンスまで考えたプログラミング

イーソル エンベデッドプロダクツ事業部 技術部 eBinderグループ 坂本裕和氏

 坂本氏は、今年からeT-KernelのMulti-Core Edition開発のメインエンジニアとなった。

 「このプロジェクトにかかわる前は、シングルコアのOS開発に携わっていました。マルチコアとシングルコアとの違いはあるにせよ、去年までの仕事と現在の仕事には大きな違いはないと思っています」(坂本氏)

 任せられる仕事のレベルが上がり、背中に負う責任は重いものになったが、坂本氏の様子からは仕事の難しさに悩んでいる様子は見えない。淡々と自分の仕事をこなしているようだ。

 「学生時代も趣味でいろいろとプログラミングをしてきましたが、やはり仕事となると、『好きなものを作る』という感覚で作業を進めるだけでは不十分だと思っています。やはり、メンテナンスをどうするかという点まで考えてプログラミングを行うということが、仕事として開発作業に取り組むことだと思うんです」(坂本氏)

 メンテナンスまでを考慮してプログラミングを行うという発想は、仕事を続けていく中で強く必要性を感じるようになったものだという。入社して最初の2、3年目に手掛けたのは、先輩が途中まで作ったコードを引き継ぐ仕事だった。

 「他人が作ったものを途中で引き継ぐと、ゼロから開発するよりも、メンテナンスがしやすい、しにくいといったことを痛感することになります。また、移植作業を担当して、障害修復の大変さを実感したことも、メンテナンスを考えたプログラムが必要だと気が付く、よい経験になりました」(坂本氏)

 坂本氏の活躍ぶりについて、上司であるエンベデッドプロダクツ事業部 技術部 部長 権藤正樹氏、同部 開発課の課長 篠原順文氏に補足してもらった。

 まず、直属の上司である篠原氏が、「彼は淡々と話していますが、マルチコアOSの開発はそんなに簡単なものではありません。日本の組み込みOSというと、ITRONが有名です。坂本君は、これを補完するT-Engineの標準リアルタイムOSであるT-Kernelのイーソル拡張版であるeT-Kernelの開発のメインエンジニアとして活躍してきました。その経験を見て、彼をマルチコアエディションのメイン開発者に抜擢したのです」と説明する。淡々と話す坂本氏の仕事が、いうほどは簡単ではないという。

 そのうえで、「メンテナンスまで考えて開発をするというのも、誰もが同じことに思い至るわけではない」と篠原氏は話す。こうした発言から、坂本氏は上司に見込まれている若き開発者であることが分かる。

OS開発の肝と将来の夢  

今回のインデックス
OSの開発者として苦労する点は何か
OS開発の肝と将来の夢

 

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